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なごやのチカラ 医療従事者の仕事をクローズアップ!~広報なごや12月号~

こんにちは。広報課の小川です。
今回、広報なごやシリーズ「なごやのチカラ」で取り上げたのは、みどり市民病院の鈴木師長。行政と共に名古屋を支える人、行政で働く人をクローズアップし、名古屋のチカラの源を紹介します。

みどり市民病院の鈴木師長

皆さん、これから冬を迎えますが、お元気にお過ごしでしょうか?
コロナウイルス感染症でだれもが活動を自粛していたあの頃、テレビなどで医療従事者の方々が孤軍奮闘されている姿をよく目にしたことは記憶に新しいのではないでしょうか?

今回は、みどり市民病院の鈴木師長に、コロナ禍での病院の裏側、そしてこれからの流行るかもしれない感染症の恐ろしさについて、お話をお聞きしました。(―は小川が発言)

—これまでのご経験などを教えてください。
名古屋市立大学病院で看護師25年の経験があります。主に成人・小児・循環器の集中治療室ICU・PICU・CCU病棟で10年以上勤務しました。ICU・PICU・CCU病棟※では生命の危機的状態にある人たちの急性期の看護を行っていました。

管理職になってからは、呼吸器内科・外科病棟、ICU・PICU・CCU病棟、脳神経内科・外科病棟の看護師長を経験しました。

ICU:集中治療室 
PICU:小児集中治療室 
CCU:冠状動脈疾患集中治療室

現在は、名古屋市立大学病院群として令和5年4月に開院したみどり市民病院へ転勤、教育担当師長として働いています。
 
仕事内容としては、新人教育計画、現任教育計画の立案と研修の運営を担当しています。また、スタッフのキャリア支援や、看護学生実習の受け入れ調整、中学生や高校生の職場体験の対応なども行っています。

世間ではマスクを着用する人が少なくなりましたが、
病院は厳しい状況の中での看護が続いている

―5月から新型コロナウイルス感染症が5類に変更されましたが、その後病院では落ち着いた状況となっているのでしょうか。
 
5類となっても、病院では、感染対策として、患者さんの隔離や個人防御具(マスク・エプロン・ゴーグル・手袋)を装着してのケアが必要であり、通常よりも多くの人員が必要であることに代わりありません。また、入院前の陰性確認も継続しており、新型コロナウイルス感染症患者に対する医療・看護の対応方法には違い(変更)がありません。
 
この夏は、7月以降徐々に患者数が増え始め、8月以降は毎日救急外来に発熱患者さんが来院されており、第9波の状態でした。
世間では、マスクを着用している人がほとんどいなくなり、さまざまなイベントが復活していますが、感染対策の方針転換もあり誰もがいつ罹患していてもおかしくない状況です。
 
日頃から感染対策を講じている医療機関においても例外ではなく、多くの職員が罹患しました。そのため多くの病院で以前にもまして厳しい体制の中で新型コロナウイルス患者を治療・看護する状況となりました。
 
当院でも、コロナ対応病床は常に満床状態でしたが、名市大病院群との連携はもとより、院内においても隔離期間が過ぎれば迅速に一般病床へ移って頂くなど新規入院要請に十分対応できるようにして参りました。その結果として多くのコロナ患者さんの治療をさせて頂くことができました。
 
―地域の人にとっては、大変頼もしいことですね。
続いて、新型コロナウイルス感染症の初期の流行期の頃のことについて教えてください。社会的には外出を自粛し、ニュースなどでは医療機関が疲弊していると報じられていたかと思いますが、その時はどのような業務に携わっていたのでしょうか。
 
当時は、名古屋市立大学病院で、病棟の師長(管理者)として、新型コロナウイルス感染症患者病棟への応援体制を整えるための人員調整、自部署の業務改善に取り組んでいました。また、感染対策、新型コロナウイルス感染症患者への対応の指導・教育も行っていました。

一般病棟の看護スタッフ数名をローテーションで新型コロナウイルス感染症患者専用病棟へ応援に出すことになったのですが、送り出す人員の確保、そのスタッフへの動機付けをするのに大変苦労しました。
 
普段と異なる環境の他の病棟に業務応援に行くだけでもスタッフにとってはストレスのかかることです。この時は、看護部の理念でもある「高い倫理観を持ち、看護を実践すること」「患者さんにとっての最善を尽くすこと」をもとに新興感染症に対して、看護師としての使命、プロフェッショナルとして社会に求められる使命を果たしていくことを改めて管理者として決意し、自分自身が揺るがないことが大事だと感じていました。
 

コロナ病棟スタッフの葛藤
自分が罹患してしまうのではないか、家族がどう思うか

―コロナ病棟への応援の打診をするとなると、皆さん断られたり、先延ばしされたり、と本当に大変だったのではないかと想像するのですが、実際には、皆さんからどのような反応が返ってきたのでしょうか?
 
初期のころは、まずは、看護師誰もが、新型コロナウイルス患者に対しての看護をどうすればよいか不安に思っているようでした。
 
部署の特徴により看護の内容は変わります。スタッフによっては「呼吸器系の管理はやったことがない」とか、「循環器の薬剤をいっぱい使う」とか、そういったことを聞くだけでも普段の看護と違うと不安を感じるようでした。
 
そして、「自分が罹患してしまうのではないか」、「家族がどう思うか」という悩みや、「できれば慣れた病棟から離れたくない」ということもあったかと思います。情報も日々変わりそれに応じて対策もどんどん変化する不安定な環境への不安と、看護職としての思いから多くのスタッフが悩んでいたと思います。
 

役割を考え、能力を見越し、期待を込めて送り出す

―そんな中で、どのように納得してもらったのでしょうか?
 
先に述べたような悩みや不安は、とにかくしっかりと話を聞きました。ただ全員の協力がないと患者さんのケアのための看護体制は成り立ちません。一番先に行く人は経験値があり、後輩に指導をしていくような役割を担っているリーダー的立場のスタッフにお願いしました。
 
わたしは、あえてそのスタッフに、「期待している」ということを伝えました。「ローテーションで応援に行くけれど先にあなたに行ってもらいたい」こと、「今までの役割や能力を見越した上であなたに期待している」というところを伝えて、動機付けしました。
 
もちろん、応援に行く前には、新型コロナウイルス感染症患者の看護についての研修資料を用いた教育を行い、疑問・不安点を解消するなど、事前準備が少しでもできるようにしました。
 

一番大切にしたことはリフレクション

慣れない病棟で頑張っているスタッフの経験を面接で振り返り、頑張っていることを承認し、スタッフ自身が経験から前向きに学び、次に活かし、プロフェッショナルとして成長していけるように支援していました。

 

一度病棟に入ってしまえば、対患者さんへの実践
プロ意識を持って、皆さんよく頑張ってくれた

―面接をするとどんな悩みが出てくるのでしょうか?
 
一番多かったのは、新しい病棟でのコミュニケーションなどの問題でしょうか。報告・連絡・相談など基本的なコミュニケーションに壁を感じている人が多く、「やれることがやれなかった」「誰に相談したらよいかわからなかった」といった内容でした。大学病院には数多くのスタッフが在籍しています。日頃のコミュニケーションがチーム医療にとって大切であることを改めて感じました。
 
当初スタッフが不安を感じていた「自分にできるだろうか」、「自分が罹患するのではないだろうか」、「家族がどう思うか」といった悩みを聞くことは少なかったです。一度病棟に入ってしまえば、対患者さんへの実践。それに加え、新しい職場での新しい知識や技術などを学び看護していくという点に前向きで看護師として、看護実践にプロ意識を持って頑張っていました。

 仕事で頑張っているからこそ休息も大事ですが、「休みにどこも行けない」「休みづらい」「コロナで負担がかかって辞めたい」といった否定的なことは聞かれませんでした。
 
このような思いは主任や先輩看護師が聞いて受け止めてくれていたのだと思います。病棟のスタッフ全体がお互いを支えあい、疲弊してしまわないように協力していました。「チーム力は最大のパワー」ですね。看護専門職として今自分たちに求められている最善を尽くし、本当によく頑張ってくれたと思います。そこはさすがプロ意識ですね。
 

「やって当たり前」、ではなく、常にスタッフに感謝

―今の話を聞いて、感動しました。休みがない、家族に迷惑がかかっている…といった話が出てきているのかと思いましたが、皆さん本当にプロ意識の強い方ばかりなのですね。
 
新型コロナウイルス感染症患者を診るのは医療者の義務、やらなければいけないとう一面はあると思いますが、「看護師だからやって当たり前」、ではなく、常にスタッフに感謝し、少しでも現状を改善できる取り組みを管理者として示し続けることが、この流行期には特に必要であったと感じます。
 
世間でもさまざまなことに制限を受けながら楽しむこともできず大変だったと思います。私たち医療者は医療機能の維持とともにコロナ患者さんの対応をするためさらに厳しい制限が長期にわたり続いています。正直、疲れを感じることもありました。
 
しかし使命を理解し新たな病棟に前向きに応援にいってくれる、新型コロナウイルス患者の看護を通し新しいことを覚えて成長してくれる仲間に自分自身も救われていました。

 大切にしたい看取りの場へのジレンマ

―また、罹患した患者さんや家族に対応していて、辛かったこと・大変だったこと、逆にうれしかったこと・やりがいを感じたことなどはあるでしょうか。具体的なエピソードを交えて教えてください。
 
私自身は実際にコロナの病棟担当ではなかったのですが、初期のころコロナ病棟の会議でよく出てきた話題としては、患者さんと家族が面会できず、最後の看取りの場をつくることが難しいことが大変に辛かったということです。
 
看護師は最後の看取りの場を重視するので、感染は広げたくはありませんでしたが、とてもジレンマを感じていたようです。この時は、困難ながらできる最善を検討し、制限のある中でも最期はご家族と過ごせるように配慮し、患者とご家族に寄り添う看護をコロナ病棟のスタッフが一丸となって取り組んでいました。
 
現在も継続して面会制限を設けざる得ない時もあり、限られた面会をどう有効に患者と家族がすごしていただくかは今も配慮が必要です。

季節性の感染症でも重症化することも
日ごろからの予防と何かあったらすぐに受診が大切

 ―最後に、現在、社会的には、マスクをしている人が減り、外出する人が増え、新型コロナ前に戻ったような感覚でいる方が多いような気がします。これから、冬にかけてまた感染症の流行期を迎えますが、市民の皆さんに気を付けてほしいこと、考えてほしいことはありますか。
 
例えば、インフルエンザ。季節性の感染症は治療薬もありますが、人によってはインフルエンザ脳炎になり、ICUに入院しなくてはならない、という方もいらっしゃいます。
 
それを考えると、「薬があるから治る」「通常の季節性の感染症だから大丈夫」ではなく、「どういうふうにそれが転ぶか分からない」「重症化するかもしれない」と考えなくてはなりません。
 
成人でも同じです。インフルエンザにかかった後に喘息が悪化するなど基礎疾患が悪化することもあります。「風邪は万病のもと」というのはその通りで、日ごろからの予防と、何かあったらすぐに受診することがとても重要です。

新型コロナウイルスの経験で獲得した最強のスキル

新型コロナウイルスの経験でみなさんが獲得した健康習慣は、手指衛生や必要時のマスク着用ではないでしょうか?この行動は、誰の手を借りなくても自分自身で自分を守る最強スキルです。自分自身を大切にできる行動が、日ごろの健康管理につながっていくと信じています。

そして、予防接種も自分を守る選択の一つとして注目してほしいです。季節性インフルエンザや肺炎球菌ワクチン、帯状疱疹ワクチンなど高齢の方が罹患すると重症化する恐れのある病気を防ぐワクチンはぜひ予防接種をお勧めします。
 
また、過去に予防接種を行ったかわからない、罹患し免疫があるかわからない、という感染症が再び話題になっています。風疹・麻疹などです。風疹については自治体からクーポンが届いた方は予防接種を受けにいきましょう。
 
自分の身は、まずは自分で守り、この冬も健康に過ごせることを祈っています。
 
名古屋市が助成している予防接種はこちら
 

おわりに(小川感想)

新型コロナウイルス感染症が未知の病気で、世界はこれからどうなってしまうのだろうと思っていたあの頃、毎日テレビで映し出される病院の医療従事者の皆さんの姿を見ては、いつも頭が下がる思いで見つめていました。

今回お話を伺って、きっと医療従事者の皆さまはさまざまな葛藤を抱えながら従事されていたんだと思うのですが、面談では不平不満を言わず、実際にはプロ意識で乗り切ったとお聞きして、本当に感動しました。
医療従事者の皆さまは、まさになごやのチカラの源です!

私自身も、感染症には気を付けて、できれば医療従事者の皆さんにはお世話にならずに、これからの季節を乗り越えたいと思います!
寒くなってまいりましたので、皆さまもお体に気を付けて健康にお過ごしくださいませ。



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