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HPやLINEの活用で、ボランティアや若い世代を巻きこんだ上志段味学区の取り組み

守山区地域力推進課コミュニティサポーターの岡本です。

私たちコミュニティサポーターは、交通安全や防犯、町内の美化、高齢者や子育てのみまもり、防災の取り組みなど、住みやすいまちをつくるための地域活動を支援する職員です。地域活動を支援する中で出会った魅力的な活動や課題解決のコツ、地域活動の舞台裏などを名古屋市公式noteの中の「ミンナノまちづくり」マガジンとして発信しています!

町内会・自治会の方とお話をしていると、「役員が決まらない」「若い世代の参加が少ない」といった切実な声がちらほらと聞こえてきます。
そんな悩みに対して、ICT活用が注目されています。
ICT活用とは、インターネットなどを利用してコミュニケーションを促し、活動の向上を図る取り組みです。

この記事では、ホームページ(HP)やSNSを活用して、”自治会活動の見える化”や”ボランティアの確保”などに成功した守山区上志段味学区の事例を紹介します。

おしゃれなサイトで華々しく見える活動も、はじめは自治会長一人の活動から広がっていったこと、さまざまな課題が浮上しながらも一歩ずつ進めていったことが分かります。

私たちコミサポもHPの開設はじめICT導入のサポートをしています。このnote記事を読んで関心を持たれた方は、ぜひお気軽にご相談ください!


上志段味ってどんなところ?

名古屋市守山区の最北に位置する上志段味学区は、1990年代からの宅地開発で若い子育て世帯の移住が急増している地域です。
 
フルーツパークや古墳群などの自然や歴史文化を感じる地域資源に恵まれ、戸建住宅で長く住まれる予定の方が多いエリアでもあります。

学区内には13の地域自治会と1つのエリアがあり、それを束ねるかたちで上志段味自治会があります。

若い子育て世帯への対応が課題

今でこそICT化で注目される上志段味自治会ですが、数年前までは昔ながらの運営を続けており、転入してきた子育て世帯に対応できる体制ではありませんでした。
自治会加入を案内する際に、「自治会って何してるの?」と質問されても、自治会のHPやチラシもなく活動内容を紹介できない状況でした・・・
 
「こんな状況ではまずい!」と、2017年に、上志段味学区の中の1人の自治会長がその自治会のHPを立ち上げました。この動きを受け、当時の学区全体の自治会長から、学区全体のHPの作成を勧められます。公民館のネット環境を整え、サーバーや独自ドメインの契約をし、2018年には、上志段味自治会としてのHPが公開されることになりました。
 
転入する若い世代への情報発信の第一歩です!

回覧板で地域の人材を発掘

公開後、HPのスマホ対応ができていないといった課題が出てきました。
 
そこで、サイト運営ボランティアを回覧板で募集。すると、ちょうどウェブデザインに携わる2人の住民が応募してくれました。
応募した理由は、自身のスキルアップや、得意分野で地域に貢献できるといったものでした。応募者の一人は、「求められることとできることが一致したので手をあげることができました」と話してくれました。
具体的な役割やスキルを明確にすることで、うまくマッチングができたようです。

そして、最初のHPを立ち上げた地域の自治会長と上志段味自治会長、ボランティアの2人とで、IT推進チームが発足しました。一人から始まった活動に心強い仲間が増えました。

HPやSNSを活用した自治会活動の”見える化”

ボランティアの2人は、事前に整理していたリニューアル計画をもとにHPを制作。スマホにも対応させ、2021年6月に公開しました。

制作の際は、「見やすさと使いやすさ、そしておしゃれさを大切に、若い世代に受け入れやすいデザインを心がけました」とのこと。

HPにはWEB回覧板やゴミ収集カレンダー、防災・防犯情報、イベント告知などを掲載。コロナ禍における情報共有ツールとしても効果を発揮しました。

リニューアルと同時に、LINE公式アカウントやX(旧Twitter)などSNSを積極的に活用。イベントや更新情報をこまめに発信するとともに、LINEからリンクを貼り自治会のサイトへ誘導する工夫をしました。

発信のかいあって、LINE公式アカウントの登録者やイベント参加者も増えてきました。

LINEで簡単に登録できるWEB回覧板

最近多くの町内会・自治会で関心が高まっているWEB回覧板もHPに掲載しました。

上志段味自治会のWEB回覧板は、回覧用のPDFデータがHPに公開されると、LINE公式アカウントからお知らせが届く、という流れになっています。
 
LINEのほかにもEメールや他のサービスを使う方法もありますが、上志段味自治会では普及率の高さと登録の簡単さからLINEを選んだそうです。
 
一方で紙の回覧板も残し、スマホなどネットを使わない方への配慮をするとともに、その地域自治会に限定した情報は紙の回覧板でのみ知らせるなど、使い分けもしています。
 
WEB回覧板は一斉に情報発信ができ、必要なときにいつでもアクセスできるなどの利点が多くあります。
これまで紙の回覧板だけのときにあった、「まわってきたときには期日が過ぎていることがある」という問題が解消され、「家族間での情報共有がラクになった」「過去の情報が見られるので、役員の引継ぎに役立つ」といった利点が生まれました。
 

チームの情報共有も、住民からの問い合わせも

HPやLINE公式アカウントの管理運用は、自治会長とIT推進委員長が内容を確認。ボランティア参加のIT推進委員が、更新作業や問い合わせ対応をしています。

HPからの問い合わせは、IT推進委員長にも直接通知が届くため、委員長が対応することもあります。

チームでの情報共有でもICTを活用。LINE WORKSというビジネス用ツールを使い、情報や資料を効率的に共有しています。

こうしたツールを使うことで、決まった時間や場所に集まることなく、「いつでも」「どこでも」都合がよいときに、それぞれで確認や更新といった作業を進めることができます。

HPやSNSを通して住民からの問い合わせも増え、地域の方の声が自治会にも届きやすくなりました。情報発信だけでなく、相互のコミュニケーションが可能となりました。

「ゆるさぽ」で気軽にサポート

HPでの情報発信だけでなく、自治会をはじめとする地域活動に気軽に関われるお手伝いのシステムもつくりました。「できるときに、できることを。」をモットーに、地域活動をゆるーくサポートしてもらう、「ゆるさぽ」という取り組みです。

役員になるのは負担が大きくて難しくても、関心のあるイベントを都合のいいときに手伝ってもらえるだけでも助かります。

メンバー募集や呼びかけは、自治会のLINE公式アカウントとは別にゆるさぽのLINEを作成しているほか、インスタでも情報発信をしています。

ゆるさぽで試しにやってみようと最初に取り組んだのは「こども用品おゆずり会」。2022年3月に地域の公民館に地域の方から集まったおもちゃや子ども服などがずらりと並び、当日は約300人もの方が来場したそうです。5人ほどのスタッフも集まりました。

その後も、スマホ教室やふれあいハイキング、ハロウィンまちあるき、クリスマス会などのイベントを企画運営したり、自治会のイベントや夏祭りのお手伝いをしたりと、活動が続いています。

左:春のウォークラリーイベント 右:防災訓練

ゆるさぽメンバーの女性はこんなふうに話してくれました。

「子どもの多い地域で、引っ越ししてきた人も多いので、ママたちが参加できつながれるきっかけになればとおゆずり会などを企画しました。以前、ゆるさぽメンバーで座談会をしたのですが、若い人の中にも地域のことに興味がある人が一定数いることが分かりました。きっかけをつくればボランティアとして参加してくれる人はいると思います」

自治会役員への説明や高齢の方への配慮

IT推進委員会は今でこそ上志段味自治会の組織内に位置づけられていますが、当初は自治会未公認でした。

発足後に自治会の定例会議でICT活用について説明をしても、「現状でも問題ない」と慎重な意見や反発も少なくなく、一時は計画も予算も棚上げとなりました。

しかし、ICT化のメリットを丁寧に説明し、自治会役員が内容を確認する体制を整えるなどし、自治会の理解と予算を得ました。同時にLINE公式アカウントの取得といった無理なくできることから活動を進めました。

また、IT推進委員会は先ほど紹介した「ゆるさぽ」と協力しながら、自治会会員の高齢者向けに無料のスマホ教室を毎月開催。利用や交流を促進しています。

このスマホ教室の一つの目標が、上志段味自治会のLINE公式アカウントに登録してもらうことだそうです。

「そうしたつながりが、もしものときに必要な情報を地域の人に届けることにつながるから」と、防災まで見越して取り組んでいらっしゃるようです。

お金と手間は意外とかかるが、効果はそれ以上

役員の負担軽減を目的にICT化を、とはよく言われますが、HPやSNSの更新や問い合わせの対応など、ICT化によって新たにできた業務は少なくありません。WEB回覧板を導入しても紙の回覧板が必要なくなるわけでもありません。

また、上志段味自治会のLINE公式アカウントは、登録者が1900人を超えています。(2024年2月末現在)。月に2-3回は発信をするため有料プランを契約しているので、その費用負担は地域の自治会にとっては少なくない額です。

でも、情報がより多くの世代に届き、中でもこれまで関わりの少なかった若い世代を広く巻き込むことができ、地域が活性化しました。また、地域の方が気軽に問い合わせや要望を送ってくれるようになり、トラブルが大きくなる前の段階で早期に対応ができるようになったといいます。

最近では、ゆるさぽがきっかけで子育て中の女性が地域の自治会長に立候補し会長になられたそうです。

自治会役員の方は、「若い世代を巻き込んで、活動に関わる人をできるだけ多くしていくことが重要だと思う」と話してくれました。


この記事では、ICTとボランティアを活用しながら、積極的な情報発信とゆるやかに地域の人を巻き込むしくみづくりに成功した自治会活動についてご紹介しました。

コミサポでは町内会・自治会といった地域団体の活動のサポートをしています。
HP開設やLINEの利用などICT導入のサポートをふくめ、何かお困りごとや課題があれば、各区役所地域力推進課のコミュニティサポーターまでお気軽にご相談ください。

コミュニティサポーター制度について

参考資料
名古屋市公式YouTubeまるはっちゅ~ぶ @maruhachitube
ICTを活用した地域活動【上志段味自治会】2022年11月スポーツ市民局制作

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