なごやのチカラ/障害のある方の暮らしを支えるヘルパーのお仕事をクローズアップ 広報なごや10月号
広報課の畠山です。今回、広報なごやシリーズ「なごやのチカラ」で取り上げたのは、障害のある方の暮らしを支えるヘルパーのお仕事をしている今治さん。行政と共に名古屋を支える人、行政で働く人をクローズアップし、名古屋のチカラの源を紹介します。
1.ライフサポートゆたかの今治さん
今回お話を伺ったのは、障害福祉サービス事業所であるライフサポートゆたかで、所長をなさっている今治 信一郎(いまじ しんいちろう)さんです。
(―は以下畠山が発言、回答は全て今治さん)
2.自己実現を支援する、という嬉しさ
―さっそくですが、今治さんがヘルパーのお仕事に就いたきっかけは何だったのでしょうか?
大学時代、障害児のキャンプサークルで出会った障害のある子どもさんとの出会いが障害分野の仕事に興味を持ったきっかけとなりました。初めて担当したのが自閉症の男の子だったのですが、キャンプ中はその子のことをよく理解してあげられなかったんです。キャンプが終わった後、「(担当した男児は)楽しくなかったかもしれないなあ・・」と自分なりに反省をして、もっと学びたいと、さまざまな福祉施設にボランティアに行くようになりました。ボランティアを通して障害のある方一人一人が成長し、個々の自己実現を支援する仕事に魅力を感じ、この仕事に就きました。
―個々の自己実現を支援する、素敵なお仕事だと感じたんですね。
実際にこのお仕事に就いて、やりがいを感じたことや、嬉しかったことはありますか?
5年ほど前のことですが、施設に通う途中のある出来事がきっかけで、通えなくなってしまった利用者の方がいたんです。外に出る事も拒否されるようになってしまいました。そこで、まずは短時間の外出支援から始めました。元々、休日にバスや地下鉄に乗るのが好きな利用者の方でしたので、まずは本人のペースに合わせて、家の中でバスの写真や動画をみたりする事から初めて、徐々に外出に気持ちが向くのを待ちながら短時間の支援を繰り返したんです。徐々に外出する時間が増えていき、大好きなバスや地下鉄も楽しめるようになりました。少しずつ利用者の方と楽しい経験を積み重ね、3か月ほど時間を掛けてまた通えるようになった時は嬉しかったです。通えたことをご家族が手を叩いて喜ばれている姿を見て、この仕事の意義を改めて認識しました。
―それは本当に嬉しいですね。お出かけできるようになったことはもちろん、ご家族の喜びを近くで感じられたことも素敵ですね。
3.利用者の方や他の職員と話して価値観・考え方の幅広さを知る
―このお仕事をしていて難しいと感じることはありますか?
利用者の方の中には、自分の思いを言葉でうまく伝えられない、表現できない方がたくさんいます。時には自分の思いが支援者にうまく伝わらず、苦しまれている姿を目にする事もあります。私たちも「何が伝えたいのかな?」と考えながら支援するのですが、なかなか利用者の方の思いに気付けない事もあります。
―今治さんは、そんな時はどうしているのですか?
一人で抱えこまず、他の職員に相談しています。そうすると、自分が知らなかった利用者の方の一面や、新たな視点に気付かされることがあり、その結果、利用者の方の思いに近づけることがあります。また、利用者の方や他の職員の価値観や考え方を知ることは、自分自身の考えや視野を広げてくれるきっかけにもなります。一人で悩み続けているのではなく、なるべく利用者の方の情報や支援の様子を職員間で共有する事を大切にしています。
―ヘルパーの皆さんで協力して、視野を広く持って利用者の方の思いに寄り添っているのですね。そのような経験を活かして、今治さんがライフサポートゆたかの所長として心掛けていることは何ですか?
はい。日頃の心がけとして、一人一人のヘルパーと積極的にコミュニケーションをすることを大切にしています。
ヘルパーの仕事は基本的に利用者とヘルパーの一対一の個別支援の現場です。ヘルパーも支援するにあたって、時には問題にぶつかり、悩みを抱え込んでしまう場合もあるため、短時間でもコミュニケーションをとるようにしています。ヘルパーとの何気ない会話の中から、利用者の方やその家族の状況の理解にも繋がります。気になる利用者の方やご家族には、直接話をお聞きするなどして、ヘルパーをバックアップしています。
4.「自分らしく暮らし続けたい」という誰もが持つ願い
―利用者の方だけでなく、ご家族やヘルパーの思いにも目を向けながら、よりよい暮らしにつながる支援を意識されているのですね。今治さんは、障害のある方がどのように暮らせる世の中になってほしいですか?
やっぱり、「住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けたい」。これは障害の有無に関わらず、誰もが持つ当たり前の願いじゃないかと思っています。そんな当たり前の願いが、普通に実現できる社会になってほしいなと思います。
5.さまざまな価値観や生き方に出会うことができる仕事
―最後に、市民の方に対してメッセージをお願いします。
私の好きな言葉で金子みすゞさんの、「みんな違ってみんないい」という言葉があります。障害福祉の仕事は、一人一人の人生に寄り添いながら、さまざまな価値観や生き方に出会うことができるのが仕事の魅力だと思っています。より多くの方にこの仕事の魅力を知っていただきたいと思います。
―お話しいただきありがとうございました。
福祉の分野は幅広く、多種多様です。障害福祉は、障害のある人もない人も共に暮らしていこうという思いに応えます。ぜひあなたの仕事の選択肢の一つに考えてみてください。
■障害福祉の仕事の魅力を他にも紹介しています。ぜひHPをご覧ください。
支える人も支えられる人も笑顔になれる!Smile Story(スマイル ストーリー)
就労移行支援事業所やグループホームなどで働く人々のお仕事の魅力も紹介しています。
■障害福祉の仕事に興味が沸いた方へ、一緒にやろまい!ガイドヘルパー
まずは、障害があっても自由に外出したいという思いを持つ方の移動を支援する、ガイドヘルパーとなってサポートするところから始めてみませんか?
・約3日間の研修(有料)で資格取得が可能です。
・研修修了者は、名古屋市移動支援事業の従事者(知的障害者ガイドヘルパー)として従事することができます。
・短時間や週末だけなど、あなたに合った働き方を選べます。
【おわりに】
今回、今治さんにお話を伺うため事業所にお邪魔したのですが、今治さんとヘルパーのみなさんが、利用者の方一人一人にしっかりと耳を傾け優しくサポートをしている姿と、利用者の方が楽しそうに過ごしている姿が印象的でした。ヘルパーさんには、一部の人だけではなく誰もが自己実現をできるようにという気持ちでお仕事に臨む、今治さんのような方がきっとたくさんいるのでしょう。そんなヘルパーさんたちに、大切な「なごやのチカラ」を感じました。