認知症のある人とともに暮らすまちへ 認知症フレンドリーコミュニティの継続した取り組みを取材しに北区福祉課へ
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認知症のある人とともに暮らすまちへ 認知症フレンドリーコミュニティの継続した取り組みを取材しに北区福祉課へ

名古屋市広報課の丸澤です。
実質的な1本目の記事、「認知症フレンドリーコミュニティ?高齢者の6人に1人が認知症と言われるいま、名古屋市北区の取り組みを取材」から半年が経ちました。

認知症フレンドリーコミュニティ(以下「認知症FC」)とは、「認知症のある人が、高い意欲を持ち、自信を持って意義のある活動に参加、貢献できると感じられるコミュニティ」のことです。
(※北区認知症フレンドリーコミュニティガイドより)

令和3年広報なごや2月号や市公式noteで取り上げた以降も、認知症FCの活動が新聞などで取り上げられ、継続して事業が推進されています。

インタビューから半年以上が経ち、現状がどのようになっているかを改めて北区役所の福祉課の職員や、関係者にインタビューしてきました。



【自己紹介・令和3年度の取り組み】


(-は丸澤が発言)
―それでは、簡単に自己紹介をお願いします。

岡嶌:北区福祉課の岡嶌です。異動で4月から担当しています。異動当初、認知症FCの説明を聞いたとき、医療や介護的な対応だけではなく、社会そのものを認知症フレンドリーに変えていこうという視点がとても画期的な取組だと思いました。

岩田:同じく福祉課の岩田です。福祉課は3年目です。
鬼頭:いきいき支援センターの鬼頭です。前回の記事に続き2回目です。
前回の記事で説明していなかったので改めてですが、いきいき支援センターは高齢者のなんでも相談窓口で、認知症のことはもちろん、さまざまな相談に対応しています。

001自己紹介

左から北区福祉課の岩田さん、岡嶌さん、いきいき支援センターの鬼頭さん、丸澤


【令和3年度の認知症FCの取り組み】


―認知症FC、今年度も継続して事業が進行中ですが、前回の記事からの変化は?

岡嶌:認知症フレンドリーコミュニティガイド作成において、特に、認知症当事者の方の本人ミーティングや靴下プロジェクトなど、作成のプロセスが評価され、一般社団法人日本認知症ケア学会の読売認知症ケア賞実践ケア賞を受賞しました。全国の取り組みの中からなので凄いことですし、チームの皆の励みにもなりました。

002岡嶌主査


岩田:今回の記事のサムネイルにしていただけるとのことですが、北区役所1階の展示、ぜひご覧いただきたいです。今年度8月開催の認知症FCアイデア検討委員会の様子を再現したものですが、イラストや図、文字を使って議論の内容をまとめるグラレコも目を引きますし、どんなメンバーでどんな内容を話し合っているか雰囲気が伝わるように工夫しました。


鬼頭:広報なごや2月号にインタビュー相手として出演された内田豊蔵さん、愛知県の認知症希望大使に任命されました。愛知県認知症希望大使は、「認知症の方ご本人がご自身の経験や将来の希望などを伝えていただくこと等により、多くの方々を元気づけ、認知症に対する理解を広めていただきます。」とあり、認知症FCの取り組みが広まっていると感じます。


―今年度の取り組みは?

岡嶌:9月27日(月)にオンラインイベントで「認知症フレンドリーフォーラム」という講演会を開催します。

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「認知症」の視点から、社会課題を解決するデザインについてともに考え、実践する場へとつなげるキックオフになるものです。多くの方に参加いただき、認知症FCの理念やこれまでの取組を知ってもらいたいと思います。
また、11月頃には、北区の企業と認知症当事者の方が課題を共有し、アイデアを出し合う、認知症×まちづくりアイデアミーティングの開催も予定しています。


岩田:先ほども話をした検討委員会ですが、認知症の初期段階と診断された方が最初に検討委員会に飛び入り参加されてから、本人交流会にも参加されるようになり、すごく楽しそうに話をされていました。対話の場があるって、すごく大切なんだと感じました。
検討委員会は、昨年度に引き続き北区のものづくりメーカーの後藤社長、デザインの有識者の水内先生、そして、今年度から新メンバーとして、愛知県認知症希望大使の内田さん、近藤さんに委員として参加いただいています。イベント実施前に開催し、方向性や内容などについてそれぞれの立場から議論いただいています。次回の検討委員会では、11月頃実施予定のアイデアミーティングについて議論いただきたいと思っています。
本人交流会も、認知症当事者同士で悩みや不安、課題などを語り合う場として、月1回継続的に続けています。


鬼頭:私は認知度FCの取り組みを、一般社団法人地域問題研究所が行う市町村ゼミナールで話をしました。その際に意識したのは取り組みの構造化です。こうした取り組みは北区、名古屋市だけで行えばいいものというものではなくて、各自治体、各地域、コミュニティにも広がっていくことが大切で、認知症当事者もそのご家族・関係者も、これまで同様に地域で生活し続けられる社会環境ができていくのかなと思います。

003パンフレットを手に取り


【課題感】


―認知症FC、凄く良い取り組みだと思いますが、皆さんが感じられている課題感とかあれば教えてください。

岡嶌:認知症FCは、ある意味、従来の認知症施策から発想の転換を促すもので、その理念を伝える難しさを感じています。定義を説明しようとすると堅苦しくなってしまうのですが、認知症のある人が当たり前に暮らせる社会ってどういうまちか、一緒に考えていけたらと思います。「認知症の人はこういうものだ!」とか、「家族はこうしないといけない!」とか、認知症になったことで起こる問題を、当事者や家族の課題と捉えるのではなく、社会環境の課題として捉えようというのが認知症FCの理念だと思っています。


岩田:私はある会合で認知症FCの取り組みの話をしましたが、その場に当事者の家族の方がいらっしゃいました。ご自身の経験があるため、「認知症になってもこれまでと同様に暮らす」なんて難しいと感じられていました。認知症フレンドリー「コミュニティ」の部分、当事者やその家族だけでなく、地域全体でという話をうまく説明できなかったので、今回のフォーラムで改めて取り組みを振り返り、上手く説明できるようになりたいです。

004岩田主事


鬼頭:たくさんの人に知ってもらいたいのと、積極的に参画してもらえるといいなと思っています。北区に限らず名古屋市内には地域に根付いている中小企業はたくさんあり、ご近所の方達と付き合いがあるというところもあると思います。
最近では毎年のように豪雨など自然災害が頻発しており、避難所に行くことが難しい当事者の方達もいます。例えば「日中であれば、避難のサポートするよ。」とか、避難計画を地域の人と協働してつくってみるとか、そういった形で企業など多様な主体がともにコミュニティを創っていく必要があると感じています。

005鬼頭さん


今回、日程の都合で参加いただけなかった前回インタビューをした水内さん、後藤さんからもお言葉いただいています。

―認知症FCにご参加され、ご自身の糧になったもの、課題感、今後の意気込みなどを教えてください。

水内:認知症FCはいよいよ、次のステージである実践へと移っていくいま、とてもワクワクしています。
私は従来から、デザインプロジェクトは、その場ごとの状況の変化や参加者のモチベーションなどによって柔軟に進め方を変えていくことが望ましいと考えています。
予め到達すべき目標が定まりすぎていると、周りが見えなくなり、プロセスは直線的で硬直的になってしまいます。特に、今回の認知症FCのように、プロセスの過程で、参加している人の認知症への理解が深まったり、考え方が変わったり、新たなプロジェクトが派生的に生まれたりすることを期待している場合はなおさらです。
参加する人たちと一緒に探索的なプロセスが踏めると理想的だなと思っています。とはいえ、そうした目標がぼんやりしたプロジェクトを起こすことは、実はとても難しいことなのです。予算と期間を決めなければ、プロジェクトは始められないと皆思っていますし、実際に予算が確保されないこともしばしばです。
しかし、今回の認知症FCは、結果や経緯に対してよりオープンであることが叶っています。それも北区福祉課の皆様はじめ、運営側の影の努力のおかげだと感じています。
靴下プロジェクトも後藤社長と一緒に少しずつ進んでいます。名古屋芸術大学で教える学生も数人、靴下開発に加わってくれる予定です。認知症当事者の方々を「デザイナー」としていかに同じ立場で、開発できるかも挑戦だと思っています。
北区の取り組みは注目を頂いているようですが、現在、認知症を抱える方々やそのご家族にとっては苦労が非常に多いのが現実で、認知症FCへ向けた取り組みは遠くに感じられるかもしれません。しかしそうした渦中にいらっしゃる方々の声や行動こそ、このFCの核心になるとも信じています。
少しずつ、軽い繋がりで良い(軽い繋がりの方が良い)ので、多様なFCのメンバーが増えていくよう進めていきたいですね。

006認知症FC(水内さん、後藤さん含む)

前回の記事の写真 左から2人目が後藤さん、3人目が水内さん

後藤:認知症FCに参加して、当初は、何も知識もない状態で参加しました。
参加していく中で、当事者との関わり、話をしていくこと、つまり、まず、「知ること」この「単なる知識としてではなく、体験として実感すること」で気持ちが動き、行動につながったように思います。
今、靴下プロジェクトは、「認知症の人だけに良い靴下を」という考えを超えて、全ての人(シンプルに履きやすい靴下を求めている人)にターゲットを広げて、さらなる企画を進めています。
「認知症とは、全く関係ない」と考えている企業や個人の方にこそ、参加していただきたいと思っています。(とっても、難しいことですが、)それが、このFCの今の課題だと思っています。

あと、企画を社内で進めている弊社デザイナーの首藤の感想です。

首藤:まず、知らないことばかりの段階からスタートしました。ネットや本からの情報で商品企画を考えたことと、実際に本人に会い、聞き取りをしたことの差が大きかった。(滑り止め、履き口の形状 など)この靴下を開発することが、本人にとって、めちゃくちゃ困ってはいないかもしれないけれど少しでも快適に生活できることに 私が、デザイナーとしての経験が活かせることも嬉しい。
毎日やっている、営利企業としてのデザインの視点を違うことも新鮮でした。

【最後に】


認知症FC、取り組みが継続して推進され、今回はフォーラムを開催するという「進化」が見られます。また関係者がそれぞれの役割の中での取り組みの「深化」も見られます。

市役所内で言えば人事異動があってもバトンを引き継ぎ、事業を推進していく。関係者も会議でお終いではなく、自分の役割だけでなく、つながりの中やこれからつながっていくなど、自分「たち」事として推進していく。

当たり前のことではあるんですが、組織として、またそれぞれの役割の中で「進化」「深化」していくことは難しいので、前回の記事から半年が経ちますが、改めてインタビューすることができるのは凄いことだと思います。

「知る」「繋がる」ために、広報課としても少しでもお役立ちできれば。
また半年後、それ以降にインタビューできることを楽しみにしながら、認知症FCの取り組みを見ていきます。


どえりゃーサンキュ!
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