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~区役所で行っている子育て支援ってどんなことをしているの?~ 「中川区ブックスタート事業」について

中川区民生子ども課民生子ども係の石黒です。「民生子ども係?何それ??」と思われる方もいると思いますが、民生子ども係は主に子どもに関する業務を取り扱っており、子育て支援も民生子ども係の仕事です。

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区役所が企画する子育て支援事業は「区民の方」を対象に、区それぞれの特性を活かした事業を行っています。そんな子育て支援事業の1つとして、中川区では健診の際に絵本をプレゼントする「中川区ブックスタート事業」を行っています。

担当者の熱い思いで始まったこの取組みは、これまで1万人以上の赤ちゃんに絵本を届けてきました。 
今回はそんな「中川区ブックスタート事業」の舞台裏をご紹介します。

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【中川区ブックスタート事業って何? どうしてスタートしたの?】

平成27年に「子どものために役立ててほしい」という寄付の申出が中川区在住の方から中川区社会福祉協議会にあり、区内の関係機関が相談した結果、天白区に続き名古屋市で2例目となるブックスタート事業が平成28年6月から中川区で始まりました。

ブックスタート事業とは:自治体が行う健診等の機会に「地域に暮らす赤ちゃんと保護者」を対象に絵本をひらく機会と絵本をセットでプレゼントをする活動です。
(参考)NPOブックスタートホームページ↓


ブックスタート事業が選ばれた理由は、ブックスタート事業の理念(赤ちゃんと保護者が、絵本を介して心ふれあうひとときを持つきっかけをつくる)を知った当時の担当者の「是非とも区民の方に提供したい!!!」という熱い思いがあったと聞いています。

ちなみに、中川区は3歳未満人口1,000人あたりの書店数が名古屋市16区で一番少ないので、絵本を使った子育て支援を取り組みたかったのかな?と6年後の担当の私は推測します。

そして現在も、中川保健センターと同センター富田分室での3(4)か月児健診を受診された区内すべてのお子さんと保護者の方を対象に、絵本の読み聞かせを行い、絵本を1冊プレゼントし、絵本の紹介冊子等を配布しています(注:現在は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、絵本の読み聞かせは中止しています)。

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9月現在、中川保健センターでプレゼントしている絵本は、「じゃあじゃあびりびり」(偕成社、作・絵 まついのりこ)「ぴょーん」(ポプラ社、作・絵 まつおかたかひで)、「いないいないばあ」(童心社、松谷みよ子 ぶん/瀬川康男)の3冊です。

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皆さんにお渡しするエコバッグの中には、中川図書館でのおはなし会のチラシや絵本の紹介冊子等が入っています。

通常、区で行う事業は区役所だけで行っているということはあまりありません。例えば、中川区ブックスタート事業の場合だと、
・最初に寄付金を受け入れた中川区社会福祉協議会
・3(4)か月児健診の場を借りて行うので中川保健センター
・絵本の読み聞かせやプレゼントをするという内容から中川図書館と富田図書館
・中川区の子育て支援を担当する中川区役所
という中川区をベースに活動している機関が一緒になってこの事業を考え、役割を分担しながら行っています。


【半日密着してみた。】

では、一体どんな風に行われているのでしょう?9月28日に中川保健センターで3(4)か月児健診時に行われた中川区ブックスタート事業に密着してみました!

①12:55~13:10 準備
中川図書館司書の大島さんとボランティアの伊藤さん・草薙さんの3名が、当日の準備をします(なお、富田分室で行われている3(4)か月児健診では、中川図書館ではなく富田図書館が担当しています)。

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当日使用する絵本やグッズは中川保健センターと民生子ども係の倉庫にこのように保管されています。

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②13:10~ 開始です
健診の時間になったので今からスタートです。それでは皆さん、よろしくお願いします!

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健診が終わった方に中川区ブックスタート事業の案内を行い、絵本を1冊選んでもらいます。

③14:15頃 前半ボランティアさんと後半ボランティアさんが交替します
ここで前半のボランティアの伊藤さん・草薙さんと、後半のボランティアの桜木さん・三田村さんが交替です。

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絵本を受け取った方の母子健康手帳の最後のページに中川区マスコットキャラクター「ナッピー」のスタンプを押しています。

④15:50~ 片付け
71人の方が健診にお越しになり、今日の一番人気の絵本は「ぴょーん」でした。終了後、大島さんと後半のボランティアさんで後片付けと次回の準備をして、今日はこれでおしまいです。お疲れさまでした!

 
中川区では毎年2,000人弱の赤ちゃんが生まれているので、開始以降10,000人以上の赤ちゃんに絵本を渡していることになります。昨年行ったアンケートでは、

・母子・父子で絵本を読むきっかけになりました。
・親としてもはじめはどんな本を与えたらいいのか分からないので、絵本や紹介の冊子をいただけたのはとてもありがたかったです。
・破れるまで読み込みました。

というご意見を頂きました。また当日絵本を貰った保護者の方からは、

・(絵本を貰えて)嬉しいです!
・子どもに体験させる前に、まずは動物が描かれている「ぴょーん」で自然や動物に触れさせたい。
・お姉ちゃん(2歳9か月)の時に貰った絵本は今も(自宅に)あり、すごく使わせてもらっている。

というお話を聞くことができました。
現在は中止していますが、以前絵本の読み聞かせを行っていたときは、早く自宅に帰りたくて泣いている赤ちゃんと、とても困っているお母さんが何人もいました。その時、ボランティアさんが読み聞かせにお誘いし、赤ちゃんに絵本を向け読み始めたら、赤ちゃんは泣き止んで集中して聞いてくれました。読み聞かせをしている間、赤ちゃんも、その姿を見ているお母さんもにっこり嬉しそうで、最後は二人とも笑顔で帰宅されました。この体験を通し、保護者の方にも「読み聞かせの力」「絵本の力」が伝わったのではないでしょうか?


【司書さんとボランティアさんにインタビューしてみた。】


終了後にお時間をいただいてインタビューをしました。

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写真は左から、中川図書館司書の大島さん、ボランティアの桜木さん、三田村さんです。

(―は石黒が発言)

―中川区ブックスタート事業に参加されていかがですか?

大島:楽しくて、やりがいがあります。お母さんたちの反応や、絵本の読み聞かせを聞いて、お子さんが笑っているのを見ると嬉しくなります。

桜木:私も楽しいです。今はできないけれど、読み聞かせをしていたときに、赤ちゃんが泣き止んで、ニコっと笑ってくれたときは嬉しかったです。読み聞かせは専門的にはできないですが、自分が読んだもので(赤ちゃんの)反応があると嬉しいです。

三田村:ママも赤ちゃんも(健診が終わり)お疲れですが、最後に絵本をお渡しすると喜ばれます。親子の笑顔やその姿を見ると嬉しいですし、上の子の健診の時に貰った絵本を今も読んでいると聞くと嬉しいです。

大島:(絵本を今も使っているという話を聞くのは)結構ありますよね。

三田村:上の子のときの本をちゃんと活用していただいているのは嬉しいです。

桜木:(そのような方は)結構いらっしゃいますね。もうボロボロだから、(下の子の健診のときに)同じ絵本を選ばれた方もいましたよ。

大島:きょうだい全員同じ絵本という方もいらっしゃいますよね。みんな同じ絵本で、一人一冊「いないいないばあ」にしている方がいましたし、こうやって繋がっていくのは嬉しいです。


―大島さんに質問ですが、中川区ブックスタート事業は、中川図書館・富田図書館だけでなく、区役所・保健センター・社会福祉協議会と関係機関が多いです。その辺りはどうですか?(良かった点、良くなかった点等)
 
大島:いろいろな機関が役割分担をしているようなことはあまりないです。良かった点としては、社会福祉協議会や区役所、保健センターといった他の機関の視点を聞くことができたことです。

桜木:ボランティアから見ると、他の機関があるから連絡が大変そうです。

大島:図書館だけでは中川区ブックスタート事業はできません。『みんなで地域を支えていく』ということですよね。(保健センターのように)みんなが来るところでできるから、広がっていく。図書館だと来る人が限られますから。難しい点としては…図書館だけではないので、いろいろ決めるのに時間がかかることですね。


 もう少しお話を伺いたかったのですが、終了予定時刻をかなり超えており…大島さん、桜木さん、三田村さん、お話を聞かせていただきありがとうございました!


【そして、これから】

当初は令和2年度で終了する予定でしたが、昨年度に予算を見直した結果、もう1年延長できることが分かったため、令和3年度まで中川区ブックスタート事業を行うことが決まりました。

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令和4年度からスタートする「中川区シェアブックス事業」では、学区の子育てサロンが行われているコミュニティセンター等に、おすすめの0~1歳児向けの絵本を置きます。そこで、みんなでシェアして絵本を読むことや、ボランティアさんによる子育てサロンでの読み聞かせを体験できるようになります。また、3(4)か月児健診で絵本の紹介冊子をお渡しし、今後も親子が絵本に親しむ機会を提供します。


【最後に】

昨年は事業の転換期を迎えているということもあり、打ち合わせを何回も行いました。そこで私が気付いたのは、自分が思っている以上に多くの人々が関わっているということでした。区民の方がいろんな立場の人の思いの詰まったこの事業を喜んでいただけるのはとても嬉しいです。

約6年間続いた中川区ブックスタート事業は一旦ここで終了しますが、今後も中川区内のお子さんが絵本を楽しみ、親子のふれあいの時間が増えるといいなと思います。