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なごやのチカラ/助産師の仕事をクローズアップ~広報なごや7月号~

名古屋市広報課の植木です。

今年度から広報なごやでは、「なごやのチカラ」というシリーズ企画を始めました。行政と共に名古屋を支える人、行政で働く人をクローズアップし、その仕事について広く知っていただきたいという思いで企画しました。シリーズの第一弾では、助産師の仕事を取り上げます。ご協力いただいたのは、名古屋市立大学医学部附属西部医療センターで勤務する金澤由紀子さん。金澤さんの出産に対する気持ちや想いなど、たくさんお話を伺いましたので、最後まで読んでいただけると嬉しいです。

金澤 由紀子さん
名古屋市立大学医学部附属西部医療センターで勤務する助産師。
金澤さんは年間、約30人の赤ちゃんの分娩を担当している。

西部医療センターで取り扱うお産について

名古屋市立大学医学部附属西部医療センター

(―は植木が発言)
―西部医療センターでは、どんなお産を取り扱っていますか?
 
金澤:西部医療センターでは、正常な妊娠から、さまざまな合併症を持つ妊娠・出産まで幅広く取り扱っています。分娩件数は年間約1200件です。NICU・GCU※を併設しているので、早産児やハイリスク新生児の出産にも迅速に対応できる環境が整っています。また、出産は産婦さんが体を自由に思うまま動かすことができるフリースタイル分娩を取り入れています。自由に楽だと感じる姿勢で産むことで、赤ちゃんやお母さんにかかる負担が最小限で済むよう配慮しています。

打ち合わせ中の金澤さん

※NICU…新生児のための集中治療室。予定日より早く産まれたり、健康状態に不安を抱えた赤ちゃんを、多職種チームが24時間体制でモニタリングし、高度な専門医療を提供します。

※GCU…NICUで状態が安定した赤ちゃんを、引き続きケアする治療室です。

―周産期医療※という病院の特徴上、全てが順調なお産ではないと思われますが、これまで印象に残っているエピソードがあれば教えてください。

金澤:妊娠、出産は一人一人全く違います。すべてがとても幸せなお産とは限りません。先日も当院に救急搬送されて緊急帝王切開となった産婦さんの赤ちゃんがNICUに入院したということがありました。お母さんは、赤ちゃんと離れ離れで直接おっぱいを吸ってもらえないことや、おっぱいが張りすぎて痛くて辛くて泣いていました。その方の辛い思いを受け止めながらおっぱいのケアをさせてもらったところ、おっぱいの張りが落ち着いた頃に感謝の言葉をいただき、とても嬉しかったです。

※周産期医療…「周産期」とは、妊娠22週から出生後7日未満までの期間のことを指し、合併症妊娠や分娩時の新生児仮死など、お母さんと赤ちゃんの生命に関わる事態が発生する可能性が高くなる期間です。このような突発的な緊急事態に備えてお産に関わる産婦人科・小児科などが一丸となり、医療の面からお母さんと赤ちゃんの健康をトータルサポートする体制を周産期医療といいます。

―健康状態に不安を抱えた赤ちゃんとお母さんをサポートするのは、とても大変だと思いますが、工夫されていることや心がけていることなどありますか?

金澤:健康状態に不安を抱えた赤ちゃんとお母さんに対しては、赤ちゃんの写真を一緒に眺めながらお話を聞いたり、面会できなかった場合はお母さんの代わりにNICUでの赤ちゃんの状況を確認しお伝えしたりしています。
時々、「私のせいで・・・」と自責の念を抱いてしまうお母さんがいらっしゃるので、少しでも心のサポートができるようにお母さんの想いに寄り添いながらお話しするようにしています。
当院はWHO・UNICEFから「赤ちゃんにやさしい病院(Baby Friendly Hospital:BFH)」として認定されています。「母乳育児成功のための10カ条」に沿って母乳育児を推進しています。早期に産まれた赤ちゃんに対しても、搾乳などをして、できる限り母乳栄養が与えられるよう母乳育児支援を積極的に行っています。


助産師の仕事をやっていて良かったと感じる時


―助産師のお仕事のやりがいを教えてください。

金澤:当院では助産外来/院内助産(はぐ)といって、妊娠が正常に経過している方を対象に、妊娠期から分娩・産後までの経過を一人の助産師が継続してサポートしています。「私の助産師さん」と思ってもらえるように、一人一人の妊婦さんと向き合って、妊娠・出産・産後の色々な悩みを聞き、対応するよう心がけています。
妊娠中は「なんとなく調子が悪い」「何か気になる」といったさまざまな体の症状や悩みが出てきます。そんな時は助産師として、まずは医療に頼らずできることから始めていきたいと考えています。「食事はどうしたらいいかな」「体を冷やしていないかな」など妊婦さんと話しをする中で、妊娠が正常に経過するように寄り添いながら考えることを心がけています。お母さんと共に笑ったり喜んだりお話ししたりして、笑顔で育児がスタート出来たときが一番助産師をやっていて良かったなとやりがいを感じる瞬間ですね。

―コロナ禍では立ち合いなどできず、心細い思いをされているお母さんも多いと思いますが、気を配っていることやいつも声がけしていることなどあれば教えてください。

金澤:妊娠、出産、産後すべてにおいて新型コロナウイルスによる影響は過酷です。本来ならご家族はお母さんと赤ちゃんに面会でき,幸せな時間を共有することができます。しかし現在分娩の立ち会いや帝王切開のあとから、お母さんは退院するまで、お母さんは家族に会えない中頑張っています。私たちはお母さんが思っていること、感じていることに耳を傾けるようにして、心細い思いをしないように励ましながら支援しています。
出産はとても特別な時間で、先々まで鮮明に記憶に残ります。その時間が良い思い出となるように助産師としてお手伝いをしています。
また、産科医師、小児科医師、看護師、臨床心理士などさまざまなスタッフと連携し、一丸となって支えていきたいと思っています。

最後に

―今後お産を迎える妊婦さんに一言お願いします。
 
金澤:妊娠、出産、育児に向けて「不安」「心配」「嬉しい」など、いろいろな気持ちが交錯していると思います。助産師はみなさんの想いに少しでも寄り添いたいと考えています。赤ちゃんに会える日を楽しみに、心も体も準備していきましょう。助産師は皆さんの近くにいます。気軽に相談してくださいね。


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