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こんにちは。ぼくトビハゼだよ!~藤前干潟は生き物の宝庫~

広報課の小川です。今回は、テレビ番組「おもてなし隊なごや」の撮影で、藤前干潟に入ってきました!私の子どもが小学校の授業で藤前干潟について学んでいるのを知ってから、子どもと一緒になって泥んこの中に入りたい!とずっと思っていました。
 
藤前干潟には、干潟体験のイベントなどがあり、広報なごやを見て申し込んでいましたが、天候の影響などでなかなか行けていませんでした。
 
藤前干潟に入れるチャンスは少ない?!
潮の引く時間帯や干潮時の高さは日によって異なるため、藤前干潟に入れるチャンスは、大潮の前後に限られています。しかも、一日の中で最も潮が引く前後の1時間程度しか入ることができません。また、そのチャンスの前日などに大雨が降ったりすると、干潟が現れない可能性もあるので、入ることが難しくなります。
 
庄内川の河口付近、名古屋市民に身近な場所
ところで、皆さん、“藤前干潟“という場所の名前は聞いたことはあっても、どこか自分の住んでいる地域からは遠い特別な場所だと思っていませんか?実はアナタの町の近くを流れているかもしれない庄内川の河口付近、新川や日光川がひとつになるところ一帯が藤前干潟なんです。それぞれの川沿いの道を下流へたどっていくと藤前干潟に行きつくわけです。
 
こちらは環境省藤前活動センター
干潟の生き物に直接触れ合う体感学習や、命のつながりと働きを学ぶことができます。

藤前活動センター

 藤前活動センターのホームページはこちら
 
藤前干潟ではどんな生き物に出会えるの?
今回は、干潟を紹介するガタレンジャーのかにくん、ことNPO法人藤前干潟を守る会の梅村幸稔さんにご紹介いただきました。


ガタレンジャーのかにくん

 藤前干潟センターに入って一番に目に入るのはこちら。
かにくん:アナジャコの巣穴に樹脂を流し込み、型どったものです。
アナジャコは干潟の泥の中にいる生き物で、3~4メートルの巣穴を掘ります。一匹でこの巣穴を掘るんです。しかも、ほぼ一日で。一生のうちほとんどを泥の中で暮らしています。
ちょうどこのケースの一番上が干潟の泥の表面。ずっと深く掘って、下もこれより1mくらいあったんですが、実は掘り出すときに折れてしまったんです。


アナジャコの巣穴

 
こちらがアナジャコ。のちほど干潟で会えるだろうか?!
名前から、シャコと勘違いされるけど、全く違う生き物です。シャコはダンゴムシの仲間だけど、アナジャコはエビの仲間。十脚類といって、十本の足を持つ仲間なんです。見た目はエビ。よく見ると手の先がハサミになっています。

アナジャコ


かにくん:こちらは藤前干潟の有名人。トビハゼです。目がハート形をしているかわいいハゼです。驚きなのは、瞬(まばた)きをするところ。魚は瞼(まぶた)がないので、瞬きができないはずですが、眼球を下げて瞬きをするんです。

トビハゼ

 
ウロハゼも展示されていました。

ウロハゼ

 
ほかにも、干潟の中の生き物がどんな穴を掘って生きているかがわかる「穴掘り生物の巣穴くらべ」など、面白いものがいっぱいありました。


さて、これから干潟に入っていくわけですが、干潟に入るにはいったいどんな格好が適するでしょうか?
私の格好は、下は水着とスポーツスパッツ、上は日よけのためのパーカー、そして帽子をかぶってスタンバイばっちりです!

ちょっと反射して見づらいですが、干潟体験に参加してみたいと思う皆さんの参考になるものがあったので、紹介させていただきます。
 
いざ、干潟へ!!
藤前活動センターの目の前の横断歩道を渡って堤防を上ると…

 
干潟が広がっています。見渡す限り右も左も干潟です。
晴れていたら、きっと名古屋のウユニ塩湖でしょうか…?!と聞いてみたら、砂地が黒いので、よほど条件やカメラの腕がそろわなければウユニ塩湖みたいにはならないかもしれません…。と苦笑いをされてしまいました。

正面

 目の前に見える名港西大橋の長さは、なんと758m。758(なごや)に合わせて設計されたんだとか。    

日光川方面            

 

海面の色がきらきらと変わっている部分が干潟部分。

庄内川・新川方面


おもてなし隊なごやの撮影準備も整い、加藤清正公、陣笠隊の踊舞(とうま)さんにもご登場いただきました。干潟を望むお二人…かっこいいですね。


こちらを向いてください!
「本日のおもてなし隊なごやは、藤前干潟に出陣じゃ!」

 
撮影が進むうちにも、だんだんと干潟が見えてまいります。
波打っている部分が泥干潟の部分。

 
堤防からダイサギ?を発見!
藤前干潟は実は、日本の中でも有数の渡り鳥たちの休息地なんです。2002年にラムサール条約(特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約)において「国際的に重要な湿地」に登録され、今年で20周年。登録されているのは、愛知で2カ所、国内でも53カ所だけなんです。
 
春にはオーストラリア方面から藤前干潟をはじめとした日本、韓国、中国の沿岸部の干潟に飛来して休息。さらに北上します。最終的にはシベリアやアラスカまで渡って繁殖します。

秋には逆に越冬地である東南アジアやオーストラリア、ニュージーランドに向けて南下し、その途中に藤前干潟や各地の干潟に立ち寄り休息します。

今回現れたダイサギをはじめ、ハマシギ、ダイゼンなどさまざまな鳥を見ることができます。

ダイサギ

 

ハマシギ  撮影:名古屋市野鳥観察館指定管理者 東海・稲永ネットワーク


ダイゼン(夏羽)  撮影:名古屋市野鳥観察館指定管理者 東海・稲永ネットワーク


 
 
野鳥観察館
藤前干潟をはさんで稲永側にある野鳥観察館では、望遠鏡などが完備されており、さまざまな野鳥を観察することができますよ。
 
野鳥観察館のホームページはこちら
 
 
さて、いざ藤前干潟に入っていきましょう。
階段を下りていって…

いざ干潟へ。 

杭の右側はカキ殻がたまっているので、左側を通っていきます。干潟へたどり着くまでは、ガイドさんが必須です。

一旦ひざ上くらいの水深の場所を通ります。

タカノケフサイソガニ
泥干潟につく前のこの地帯には、いろいろなカニさんが住んでいます。


多く見られるのはタカノケフサイソガニ。難しい名前なので何度も聞きなおしてしまったら、タカノさんが見つけた、毛フサのついたイソガニです。と教えてくれました。ハサミの毛がフサフサしています。

オスだけ、はさみの間に毛の房があります。また、カニのオスのフンドシ(腹側の真ん中三角の部分)は小さく、メスのフンドシは大きいとのこと。

 

泥干潟に入るとこんな感じの表面です。
さて、どんな生き物に会えるでしょうか?!

 
干潟にたどり着くと足が少しつかるくらいの水深に。
足元は、はだしでも構いませんが、マリンシューズや古靴下などがおすすめです。


撮影スタート!!干潟の中へトウ!!

 


ウミナナフシ発見!
かにくん:昆虫のナナフシとは縁もゆかりもありません。見た目も似ていない。体の節が7つに分かれているように見えるからナナフシ。昆虫のナナフシはバッタなどのグループだけど、ウミナナフシはダンゴムシの仲間。干潟の生き物の半分はダンゴムシの仲間と言われているんですよ。

ウミナナフシ

 干潟の泥の表面には、そこら中にこんな穴が開いていて、その穴から干潟の泥の中に空気が取り込まれています。穴のあたりの砂がひらひらと崩れ落ちて穴に入っていきます。いったい誰が住んでいるのでしょう…


続いて発見したのはヤドカリ。
かにくん:カワザンショウガイという貝に入ったヤドカリです。ヤドカリは、自分でハサミをあてがって、中に入れるかどうかを観察して、貝を見つけるんですよ。

アナジャコ
生き物探しに夢中になっている間に、ガタレンジャーのかにくんがアナジャコを捕獲してきてくれました!これが、穴の中で一生のほとんどを過ごし、なかなかお目にかかれないアナジャコです。


こちらがシオフキ
シジミの貝殻に交じって3個体出てきました。塩分濃度が少し高めのところにいるそうで、例年に比べて多いかも、とのこと。

水の中でシュンシュン、シュンシュン、すごいスピードで動いているものを発見!!いったい何がいるのかと、目を凝らすと見えてきます…。いったいどこにいるでしょうか??見つけられますか?

 
ここにいるんです。わたしは子どものエドハゼ。
かにくん:日本ハゼ図鑑には載っていない珍しいものですが、藤前干潟では普通に見ることができます。大体の場合、アナジャコの穴の中に共生しています。お互いに捕食はせず、共生。エドハゼは穴の表面近くに生息していて、敵が来ると穴の下に引っ込むので、その水圧でアナジャコは危険を察知する。助け合って生きているんですね。

 水から出ると、透明でとっても見つけやすいですね。

エドハゼ         

  続いてウスヒラムシ。

平ぺったい泥が動いた!!なんだろう…。と思ったら、こちらウスヒラムシというそうです。
かにくん:貝の仲間。ウスヒラムシが多いのは塩分濃度が高めなんだな。

 


砂モクズガニ
最後に見つけた生き物は、砂モクズガニ。
かにくん:国が変われば高級食材!なんとシャンハイガニ。この辺りだとサワガニとかズガニと言い、つぶしてみそ汁に入れて食べたりします。
 
今の時期いるのはメス。オスはこの時期死んでしまっています。
お腹を見ると卵を持っているかも!?

腹側はこんな感じ。

もう生み終わっていましたね。産卵が終わると、このあと死んでしまいます。 背側はこんな感じ。

 
だんだん日も傾き、干潟にも潮が満ちてきましたので、このあたりで。今回出会った生き物を干潟の中へ返して、そろそろ干潟から引き上げたいと思います。

 干潟から出ると足洗い場が完備されていて、足を洗って終了です。

 
名古屋の環境の「原点」である藤前干潟
今回紹介した藤前干潟。実は1990年代、ごみの埋め立て処分場にする計画が進められていました。年々増え続けるごみに対応するための計画でしたが、
藤前干潟は渡り鳥を始め多くの生き物にとってとても大切な場所。
自然を守ろうという市民の皆さまの声などによって、1999年に埋め立て計画は中止に。

そこで、名古屋市はごみを大幅に減らすことを呼びかける「ごみ非常事態宣言」を発表し、市民の皆さまと協働して徹底的にごみを減らす取り組みを始めました。その結果、宣言当時と比較して埋め立て量は約90%も減少したのです!

宣言当時の処分場
現在の処分場


市民の皆さまなどの声により、守られてきた藤前干潟。
今回取材をさせていただき、見たことのない本当にたくさんの生き物と出会うことができました。恐らく、この何十、何百倍もの種類の生き物が住んでいるかもしれません。
そんな生き物たちの住処が、かつて市民の皆さんのチカラで守られてきたことを思うと、とても誇らしい気持ちになりました。
 
これから何年、何十年先も生き物がたくさん集う場所であることを願って締めくくりたいと思います。
 
 
干潟体験体験に興味のある方はこちら

干潟に入る際は、次のことを必ず守りましょう。

※干潟は生き物と触れ合える楽しいところですが、危険もあります。
 入る前に必ず「藤前活動センター」におたずねください。
※干潟は生き物たちの住処です。そっとお邪魔する気持ちで入りましょう。 
 野鳥に餌をあげてはいけません。釣りをするときは釣り糸などをそのまま
 にせず必ず片付けましょう。
※干潟の中では気を付けて歩きましょう。泥の深みに足をとられたり、
 カキやフジツボで足を切ったりすることがあります。
 潮が満ちてきて取り残されないようにしましょう。
 

(2022.10.28追記)

番外編 広報なごや11月号
渡り鳥が集まる藤前干潟~ラムサール条約登録20周年を迎えて~
 
ラムサール条約登録から20周年を迎え、広報なごや2022年11月号で藤前干潟が特集されました。特集に合わせ、市長からのメッセージを、取材の様子について動画を交えてご紹介いたします。


環境首都ナゴヤの原点
市民の皆様の力で守った藤前干潟。
大事にしよみゃあ!!
 
名古屋市長 河村たかし