【子育て中のサッカー選手】と【会社でも働くサッカー選手】!なでしこリーグ一部、ラブリッジの選手を取材しました
9月12日に日本初の女性プロサッカーリーグ、WEリーグが開幕しました。
NGUラブリッジ名古屋(以下ラブリッジ)の選手の皆さんは、このWEリーグを目指して日々練習し、なでしこ一部リーグで奮闘しています。
(WEリーグは、なでしこリーグの上位に位置する日本のトップリーグです。)
そんなラブリッジには、「子育てをしながら」また、「企業で働きながら」所属している選手がいるのをご存知ですか。
今回は、出産を経て選手に復帰され、今年なでしこリーグ一部の選手に登録された川尻真由 選手と、練習に励みながら地元企業で働く水野亜美 選手にお話を伺いました。
写真の中央に写っているのが、私、広報課の福井です。
今回お二人には、選手としての生活だけでなく、普段の生活、女性が働くための環境などについてもお聞きしました。ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです。
サッカーとの出会い
ーお二人が、サッカーを始めたのはいつごろですか。
川尻 選手:もともと、二つ上の兄がサッカーをやっていて。私が幼稚園の年中くらいの時、小学生だった兄についていって始めたのがきっかけです。そこから、クラブチームに入って、出産期間を除いてずっとやっています。
水野 選手:私も、年中くらいから。保育園にサッカーのコーチをしている方が教えに来ていて、保育園に行ったらボールを蹴っているような感じでした。年長から本格的にクラブに入ってから今まで、ずっとサッカーをしています。福井県の高校にいたときはクラブチームではなく、部活でやっていました。
川尻 選手:私が、新潟にいた時に対戦したよね!ライバル校だったんです。私のチームが勝ったけど!(笑)
ラブリッジの選手になるまで
水野 選手:高校卒業後、大学入学を機に愛知に戻ってきました。
ラブリッジは、今年の1月から所属しています。大学を卒業して、県外に行こうか迷っていたのですが、地元でサッカーを盛り上げたいと思って、地元で唯一の社会人サッカーチームのラブリッジに決めました。
でも、学生のときやっていたサッカーと、今はスピードもフィジカルも全く違いますね。
大学生では、体が小さくても通用していたというか、やれていたところがあるんですけど、ラブリッジではフィジカルの弱さが目立ってきていて、そこが大きな違いだなと感じます。
川尻 選手:私は中学生の時に、NGUラブリッジになる前の名古屋FCレディースに所属していたので、その頃お世話になっていた方を通して、練習生として関わっていたのがラブリッジに所属したきっかけです。子どもを産んで、県外に行くことができないですし、愛知県のチームはラブリッジしかない!と。
川尻 選手:ラブリッジは妊娠・出産などで二年半の間お休みして、再び動き出してちょうど一年くらいです。
選手であり母である大変さ
ー出産後にアスリートとして復帰するのは簡単なことではないですよね。
川尻 選手:出産後に選手として戻ってくるアスリートって、海外だと結構多くて、その中にサッカー選手もいるのですが、日本では少ないと思います。
出産後にサッカーができる環境に戻る人はいると思うんですけど、ラブリッジでは初めてなんじゃないかな。
私は、21歳の時に出産して、まだ若いしできるかなって勢いで(笑)
サッカーが楽しくて大好きだし、年齢が上がれば上がるほど復帰も難しくなるだろうし、今しかやれないかなと。
産後は、筋肉も体力もゼロだからほんとーうに、きつかったです!戻ってきてすぐは、全く体が動かなくって。でも、体は動かさないと動けるようにならないので、とにかく追いつこうと思ってがんばりました。
ー出産前と後で、練習に変化はありましたか。
川尻 選手:子育ての経験から、練習でも周りをよく見るようになりました。常に子どもの身の周りに危険がないか確認するような感覚と同じですね。先を予測して行動したり、忘れ物がないかチェックしたり。それが、普段の練習に活かされていると感じます。
それから、午前中しか練習ができない、という点も変わりました。
家で子どもが待っているので、自由にボールを蹴る時間は少なくなりました。
ただ、子どもが年の割に大きくて重たいので、抱っこしているだけでも筋トレになります。横になっていると、子どもがお腹の上に立ってきて、腹筋も鍛えられています(笑)意識しなくても、筋トレになっているかも。
子どもはまだ2歳なので、練習の時間は母親に見てもらっています。試合や遠征で長い時間家に帰れないときもあるので、家族がいなければ今の私はありません。
そうやって支え、応援してくれている家族に、サッカーをしている姿をみせることが1番のモチベーションかな。
女性を取り巻く環境
川尻 選手:とにかく、子育ては一人では絶対に無理なので、周りの手助けが必要です。協力してくれる人がいなかったら自分は動けませんでした。
会社の近くとか、会社自体に託児所などがあるのが理想ですね。急に子どもが病気になったりしても、お母さんが仕事を抜けずに働くことができる環境が必要なのではないかなと思います。
水野 選手:女性特有の体調の変化に理解がある職場だと、きっと働きやすいですよね。
水野 選手:私の働く会社は、育休・産休をとりやすい環境にあると思います。私自身も将来、結婚して子どもがほしいと思っています。でも、姉の出産を見ていて、大変だなあって。
川尻 選手:私はつわりがひどくて。出産前は、全然動けなくて、水も飲めなくて、点滴して。さらにうつ状態みたいになってしまって。一人ではどうしようもないので、周りの助けがないときつかったです。
出産や育児のときにも周りとの関わりが大切だと実感しました。
普段の生活
ー練習がある日のスケジュールを教えてください。
川尻 選手:6時に起きて、8時から11時30分まで 練習・筋トレ。
練習後は、買い物や家事などをして、子どもを寝かしつけ、家事や翌日の準備などをしています。
実は、週に2日、練習後に幼稚園児の運動あそび教室の補助をしています。バイトでも家でも、ずっと子どもと一緒です。子どもが好きなので楽しいですが、みんな元気すぎてかなりハードです(笑)疲れて帰って、息子の昼寝と一緒に寝てしまうこともあります。
水野 選手:私は、午前中にラブリッジで練習をして、午後からは秋田屋という酒類食品卸売会社で働いています。主にお酒の整理・出荷作業をしています。重たいものを運んでいるので、力を使いますね。
あと、在庫チェックなどをして、18:00ごろ終わります。
ー午前中の練習の後にお仕事に向かうのですね!
水野 選手:会社がラブリッジに所属していることに対してとても理解してくださっているので、練習の後働くことについて不安に思うことは特にありません。
一緒に働いている方が、「頑張って!」「お疲れ様!」「試合見たよ!」など、たくさん声を掛けてくれます!
サッカーが好きなので、サッカーが出来る環境にいられることがうれしいですし、秋田屋での仕事をがんばるモチベーションにもなっています。
ーお休みの日はどのように過ごされていますか。
川尻 選手:子どもと、近所の子どもたちと公園で遊んだりしています。
週に1日しか子どもと一日中向き合うことができる日がないので、疲れていても子どもと遊ぶようにしています。
水野 選手:二日間休みがあるときは走ったり筋トレしたりしますが、練習は短期集中で、休む時は休む。
最近は運転が好きで、母と出かけたり、甥っ子と遊んだりしています。
自分の時間を大切にして、とにかくストレスをためないようにしています。
ラブリッジのこと
ーこの記事をきっかけに、多くの方にラブリッジのことを知ってもらえたらうれしいですね。
川尻 選手:子どもがいる選手がいることを知ってもらえたら、興味を持ってくれる方もいるのではと思っています。こんな選手もいるんだ!って、きっかけにはなるのかな。
そして、子育てをしながら働く女性が、私がサッカーをする姿を見て、自分も頑張ろう!って思ってもらえたらうれしいです。
また、何かに挑戦しようとしている方々に勇気を与えられる存在になりたいです。
ラブリッジ自体の知名度を上げるためには、どうしたらいいんだろう。推しメン(選手)を見つけるとかかな?SNSなども使って、選手一人ひとりに親近感をもってもらって。サッカーに詳しくない方、女性ファンとかファミリーとか、そういった層にも届くといいなと思っています。
TwitterやInstagramでも試合情報の発信や選手の紹介をしているので、ぜひフォローしてください!
川尻 選手:そして、名古屋グランパスのように、女子サッカーも、名古屋市の方からもっともっと応援されるチームになりたいです。もちろん、強くなってWEリーグに行くことで知ってもらいたいですが、まずは、名古屋市の人にラブリッジを好きになってもらいたいです。
これからのこと
ー選手としての目標を教えてください。
水野 選手:ラブリッジに入ってまだ日が浅いですが、個人でも活躍して、チームの勝利に貢献したいです。
川尻 選手:子供と一緒に選手入場をすることが目標であり、夢です!達成するためにこれからも頑張ります。
30歳くらいまでやれるかな。出産を乗り越えたから、もうなんでもやれるかなって思っています。体力が続く限り、好きなことをやれたらなって。
ーさらにその後の夢はありますか。
川尻 選手:サッカー選手を引退したらフットサルもやってみたいです。現役でFリーグとかでやれたらいいな。
あと、自分自身の妊娠出産の経験を活かして、女性アスリートの妊娠出産をサポートする仕事ができたらいいなと思いました。結婚妊娠を機にスポーツから離れてしまう選手も多くいると思うので、出産してからもアスリートでいられるような環境を作りたいです。
お二人からのメッセージ
ー最後に、読者へメッセージをお願いします。
水野選手:みなさんに感動してもらえるような試合をしたいと思っているので、NGUラブリッジ名古屋の応援よろしくお願いします!
川尻選手:この記事を読んで、NGUラブリッジ名古屋にはこんな選手がいるんだなぁと知っていただけたら幸いです!
少しでも女子サッカーに興味を持っていただき、コロナが落ち着いたら是非とも会場に足を運んでいただけると嬉しいです。
子育て中の方も、大変な時期が続いていますが、息抜きをしながら共に頑張っていきましょう!
ー貴重なお話、ありがとうございました!
元選手 間明さんのお話
ー今回お話を伺った水野選手と同じ秋田屋で、ラブリッジ所属時も、引退後も働かれている間明さんにもコメントをいただきました。
間明さんは昨年ラブリッジを引退されていますので、今回はお話のみ掲載します。
間明 さん:昨年までNGUラブリッジ名古屋で1年間プレーしていました。間明理沙子です。
ラブリッジの選手の時に初めて名古屋の夏を経験しましたが、異常な湿度の中での練習が印象に残っています。
昨年選手を引退し、現在は主にお客様からの受注、商品の発注、格納梱包を行っています。重い物を持つなど、立ち仕事が主になってくるので、サッカーで培った体力を活かして働いています。
選手時代には引退後のことは全く考えていませんでしたが、引退した今では、選手の時から引退後どうしたいのかを考えておくべきだったかなと思います。
サッカーをしながら企業で働くということは、勤務時間が限られていますし、土日祝日は試合や練習があるので休日出勤はできないなど、理解ある企業でないと働けません。
私は、練習をサポートしてくれた秋田屋で力になりたいと感じたのと、周りの人達の存在もあって、引退後も、地元神奈川ではなく、愛知に残ってこの仕事を続けることを決意しました。
コロナ禍で制限されていることがたくさんあると思いますが、まだまだ色んなことを吸収して、チャレンジしていきたいと思います。
取材を終えて
WEリーグのWEとは、Women Empowermentの略称。このEmpowermentには、「権限を持たせること」「自信を与えること」といった意味があります。
WEリーグという名称には、日本に「女子プロサッカー選手」という職業が確立され、リーグを核に関わるわたしたちみんな(WE)が主人公として活躍する社会を目指す、という思いが込められているそうです。
女性が力を発揮できる職場環境や社会環境を整備するなどといった社会的な流れはありますが、私は、女性が管理職比率の目標のためのただの数合わせのようになってしまっては意味がないと思っています。
WEリーグの理念「夢や生き方の多様性にあふれ、一人ひとりが輝く社会の実現・発展」にもあるように、私自身、どのような働き方であっても活躍の場がある社会で生きていきたいです。それと同時に、環境のせいにせず、自分で決めた働き方・生き方に、より責任をもたなければならない社会になってきていると感じます。
今回の取材で、選手の皆さんが「子育てや仕事で忙しくても選手を続けられるのは、サッカーが大好きだから」とおっしゃっていたのが印象的でした。「選手」としての自分、「母」としての自分、「会社員」としての自分。選手のみなさんは、どんな場面も楽しんでいらっしゃるようで、そんな生き方がとてもすてきだと感じました。
ただ、「選手だから特別な考え方」ということはなく、同世代の女性として考えが似ていると取材の中で感じる点も多く、親近感をもちました。
今後のサッカーでの活躍はもちろん、女性がさらに活躍する社会を牽引する存在としてもラブリッジを応援していきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。(市長室広報課 福井)