人と自然をつなぐ東山動植物園
こんにちは。広報課の小川です。
名古屋の人にはお馴染みの東山動植物園。皆さま、東山動植物園と聞くと、なにが思い浮かびますか?
人気動物ランキングで上位のレッサーパンダやコアラ?
「イケメン」と一躍有名になったニシゴリラのシャバーニ?
それとも、紅葉・桜のライトアップや雄大な自然?
まずは遊園地!というお子さんたちもいるのではないでしょうか。
愛くるしい動物や、季節ごとの植物を楽しみに来た方に、ぜひ見て、感じて、学んでいただきたいのが、動植物の絶滅危惧についてです。
今回は、動物園副園長の今西さんにお話をお聞きしましたので、その内容をご紹介したいと思います。
東山動植物園の絶滅危惧種
「絶滅危惧種」と聞くと、とても珍しくて、アフリカのサバンナやアマゾンの熱帯雨林に行かないと、なかなか見ることができないのではないか…と思ってしまいますが、実は東山動植物園にもいるのです!
いったい何種類くらいの絶滅危惧種がいるのでしょうか。
2~3種類?
30種類くらい?
いやいや100種類くらい?
実は、東山動植物園では、動物・植物それぞれ100種類以上の絶滅危惧種を有しています。その中には皆さんお馴染みの動物もたくさんいます。
2022年東山動植物園人気動物ベストテンで5位までに入った動物はすべて絶滅危惧種
例えば、昨年の東山動植物園人気動物ベストテンで5位までに入った動物は、すべて絶滅危惧種であり、絶滅が心配されています。
シセンレッサーパンダ(人気動物1位)
IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで絶滅危惧種のEN(近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの)と評価されています。
ヒマラヤにすむレッサーパンダは、主食の竹を人間によって持ち込まれた家畜によって踏みつけられたり食べられたりしてしまい、その数を減らしています。
コアラ(人気動物2位)
IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで絶滅危惧種のVU(絶滅の危険が増大しているもの)と評価されています。
コアラを含むオーストラリアの多くの動物たちが、4年ほど前にオーストラリアで発生した大規模な山火事により犠牲となりました。
アジアゾウ(人気動物3位)
IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで絶滅危惧種のEN(近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの)と評価されています。
象牙目的の密猟により生息数が減少しています。特に牙の長いオスが狙われやすく、インドのある地域では20年間でオスメス比が1:6から1:122へと劇的に変化しました。
アミメキリン(人気動物4位)
IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで絶滅危惧種のEN(近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの)と評価されています。
肉を目的とした密猟や、生息地が農地への転用や都市開発により大幅に喪失し、野生での生息数は15,000頭ほどにまで減っています。
ニシゴリラ(人気動物5位)
IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで絶滅危惧種のCR(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの)と評価されています。
生息数減少の主要な原因の一つとして、携帯電話に使われているレアメタルなどの採掘による生息地破壊があるため、携帯電話のリサイクルはニシゴリラの棲む森を守ることにつながります。
広報なごや10月号で紹介をした、スマトラオランウータン、スマトラトラ、コサンケイも絶滅危惧種 です。
スマトラオランウータン
IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで絶滅危惧種のCR(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの)と評価されています。
野生での生息数は約13,800頭未満と言われています。アブラヤシ畑への転換による生息地の減少、ペット取引を目的とした幼獣捕獲やその際の母親殺害により、近年急速にその数が減りました。
スマトラトラ
IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで絶滅危惧種のCR(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの)と評価されています。
多くのスマトラトラが、その美しい毛皮や漢方薬の材料となる骨などを目的とした密猟の犠牲となり、現在、野生での生息数は約500頭と言われています。
コサンケイ
IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで絶滅危惧種のCR(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの)と評価されています。
ベトナム戦争中の除草剤噴霧、農業のための伐採と開墾といった複合的な要因により、生息域であった原生林の多くが消失し、ベトナムの中部に広がる低地林にわずかに生息するとされますが、2000年以降は目撃されていないと言われています。
地球上で年々早くなる絶滅のスピード
現在、1年あたり4万種類もの生き物が絶滅し、地球上からいなくなっていると言われています。
1年あたりの絶滅している種類数は、1,000年前には0.1種、100年前には1種、50年前には1,000種ほどであったと考えられており、絶滅のスピードは年々速くなっています。
人間の活動が大きな要因
人間の活動により、自然環境が失われたり、悪化したりしていることが大きな要因です。また、人間によって捕まえられたり、殺されたり、採られたりして数を減らしている動植物も数多くあります。
ツシマヤマネコの繁殖に取り組む東山動植物園
例としてツシマヤマネコを挙げると、大規模な森林伐採、里地里山環境の荒廃、交通事故や罠による錯誤捕獲などにより、生息数が減少しており、保護増殖の努力が必要な状況となっています。
東山動植物園は、環境省のツシマヤマネコ保護増殖事業に参画し、飼育下繁殖第二拠点施設としてツシマヤマネコの繁殖に取り組んでおり、令和5年4月23日には帝王切開によりメス1頭を誕生させています。
ツシマヤマネコ
環境省レッドリストで絶滅危惧IA類(CR)と評価されています。
身近な絶滅危惧種メダカを救う「名古屋メダカ里親プロジェクト」
人気のある動物だけでなく、私たちに身近な動物も絶滅危惧種となっています。例えば、メダカです。
メダカ
環境省のレッドリストで絶滅危惧種のVU(絶滅の危険が増大しているもの)と評価されています。
名古屋市内では野生のメダカをほとんど見かけなくなってしまいました。
そこで東山動植物園では、名古屋市千種区内で80年ほど前に採集されたメダカの子孫を市内の小中学生に預けて、増えたメダカを返してもらう「名古屋メダカ里親プロジェクト」という取り組みを毎年(令和2年を除く)行い、希少なメダカを市民と一緒になって守っています。
最後に…今西副園長から来園される方へのメッセージ
東山動植物園は発見や気づきの宝庫です。園に足を運んでいただくたびに、動植物を観察して新たに分かること、学習看板や職員による解説で初めて知ることがきっとあります。 そうして得られた発見や気づきをぜひご家族ご友人との間で話題にして共有してみてください。
皆さんが動植物界の広報大使として自然への関心を周りに広げていただければ、より良い地球環境を後世に残す一助になると思います。
10月7日(土)~11月19日(日) 東山動植物園秋まつり
※2023年の秋まつりは既に終了しています。
秋まつりでは、今回ご紹介したスマトラトラ、スマトラオランウータンなど生物の宝庫であるインドネシアの動植物をめぐる絶滅危惧種ウォークラリーや、飼育員・植物管理人の個性あふれるトークが楽しめるアニマルトーク・ボタニカルトークが各所で開催されます。
動植物のことを楽しく学べるイベントが盛りだくさん!!
秋の行楽シーズンのおでかけに、東山動植物園を訪れていてはいかがでしょうか?
秋まつりの詳細はこちら