コワいけど気になる!名古屋市科学館 特別展「毒」
こんにちは、広報課の近藤です。
なんとも毒々しい見た目のサムネイルを見て、怖いもの見たさにこの記事を開いてくれた方もいるのではないでしょうか。
東京・国立科学博物館で30万人を動員した大人気の特別展「毒」が、名古屋市科学館にて9/23まで開催中なんです!
「毒」と言えば、危険、怖いなどのイメージがありますよね。
しかし、毒のなかには生物に害を与えるだけでなく、薬として人々の役に立つものがあります。人体に有用でも、取りすぎると毒になることがあります。
今回の展覧会は、動物、植物、菌類、鉱物や人工毒など、あらゆる毒について各分野のスペシャリストが徹底的に掘り下げています。総展示数はなんと200点を超えるそうです!
特別展「毒」で、自然界の神秘と驚きに満ちた一面を知りに行きましょう!
特別展は科学館地下2階のイベントホールで開催しています。
会場まで床にあるマークを辿っていけるので、方向音痴の私でも迷いなく行けました。
特別展「毒」のパネルには、秘密結社 鷹の爪が、毒についてパネルと動画で紹介してくれます。
世界征服に使えそうな毒を探索するついでにナビゲーターをしてくれるんだとか!
名古屋市立大学とのクイズコラボ!
名古屋市立大学生・院生と教員が協力して作った毒クイズラリーがあります。
クイズに答えるとポストカードがもらえます!
お連れ様やお子様と一緒に挑戦してみてください。
第1章 毒の世界へようこそ
そもそも、毒とはどんなものを指すのでしょうか?
この展覧会では人を含む生物に害を与える物質を毒と定義しています。
ウイルスは毒ではないの?と思われる方もいらっしゃると思います。
ウイルスには毒性がありますが、ウイルスが毒物質を作るわけではないので
この展示会では毒として扱いません。…難しいですね。
毒とはなにか、皆さんも一緒に考えてみましょう。
日常のなかにある毒
私たちの生活のなかには毒があるものがたくさんあります。
例えば、朝食などで食べるパンも、
かびてしまったものを食べれば害がありますし
人間には影響がない玉ねぎやニンニクなどは、ペットには有害です。
アルコールも適量なら問題ありませんが、大量に摂取すれば毒と言えます。
(お酒が好きな私にとっては耳が痛いです…。)
もちろんアレルギーを持っている人には、少量でもその特定の食品や物質は毒です。
観葉植物にも、実は毒をもつものがあります。
毒の作用は多様で分類するのは難しいそうなのですが、ここでは代表的な作用によって分類されています。
神経毒:麻痺・けいれん・呼吸困難など
血液毒:出血、溶血など
細胞毒:細胞死・がんなど
それぞれの毒が体に入った場合、どうなるのかパネルと動画で解説しています。
第2章 毒の博物館
こちらでは、私たちのまわりにあるさまざまな毒と、毒をもった生物を紹介します。
生物の毒の目的の多くは明確で、狩りや攻撃をするために使う「攻めるための毒」と、自分の身を守るために使う「守るための毒」があります。
それぞれの毒を使う生物について見ていきましょう。
圧巻の拡大模型!!!
なんて大きいんでしょう!圧巻です!
正面から見ると、自分が食べられてしまいそうでドキドキします。
ハブは実物の約30倍、オオスズメバチは約40倍の大きさです!
「攻めるための毒」を使うハブの牙は、よく見ると管のようになっており、噛まれるとその管から毒が出てきます。
恐ろしい…噛まれたら大変ですね。
オオスズメバチはお尻の針から毒が出てきます。
続いて、「守るための毒」を使う生物を見てみましょう。
イラガの幼虫は実物の約100倍、セイヨウイラクサは約70倍の大きさです。
実物は小さいのに、こんなに鋭い棘がたくさんついているんですね!
自分の身を守るために工夫しているのですね。
イラクサの茎にある棘にはアレルギー反応を起こすヒスタミンや、神経伝達物質のアセチルコリンが含まれています。刺されると痛く、蕁麻疹を発症することもあります。
聞いただけでも体がチクチクしてきそうですね。
植物が多い所へお出掛けの際は、肌を守れる服装でお出かけくださいね。
知ってる!?日本の三大有毒植物
日本の三大有毒植物があるってご存知でしょうか?
トリカブト、ドクウツギ、ドクゼリです。
トリカブトは推理小説なんかにも出てきますよね、日本産とは初めて知りました。
日本列島は植物の種類が多く、有毒な植物も多く自生しているのですが
その中で最も毒性が強いことなどから日本の三大有毒植物として知られています。
それぞれ誤食すると
トリカブト:手足のしびれ、嘔吐、けいれんなど
ドクウツギ:全身麻痺(重症の場合)
ドクゼリ:めまい、呼吸困難など
の症状が出ます。いずれも死に至る場合があります。
ハチ毒は毒のカクテル!?
ハチの毒は「毒のカクテル」とも呼ばれます。
由来は、毒液が様々な作用を引き起こすものが複数含まれているからと言われています。
なんて呼び名でしょう…。お酒が好きな私も、このカクテルだけは嫌ですね。
痛みや晴れを引き起こすもの、アレルギーを引き起こすものなどが含まれます。
スズメバチ類には激痛を起こす毒が含まれ、オオスズメバチの毒は神経毒も含まれています。
ハチ毒はときにアナフィラキシーショック(命に関わるアレルギー反応)を引き起こします。
複数回刺されることでその危険性が高まるとされています。
暑いこの季節はハチが活発に活動しています、ご注意ください。
有毒な爬虫類
爬虫類にも、毒をもつものがいます。
つい最近東山動植物園にやってきたコモドオオトカゲも、強力な毒を持っています。
唾液に血液毒や血圧低下を引き起こす成分を含み、自分よりも大きな獲物も噛んで失血させ、弱らせて食べます。
有毒の両生類
両生類の多くは身を守るために毒を持っています。
ヒキガエルやイモリの仲間が有名で、神経毒を持つものがほとんどです。
ヤドクガエルの仲間は特に強力な毒を持っており、1匹のカエルの毒が10人分の致死量になる種類もいます。
この毒はエサから摂取しています。なので、毒入りのエサを食べていない動物園のヤドクガエルは、毒がないんですって!
毒といえば?きのこの毒
「毒」と聞くと、毒きのこをイメージされる方が多いのではないでしょうか。
毒があるきのこかどうか見分ける方法、なんだと思いますか?
見分ける方法は…無いんです。
しかも、地球上のきのこの大半は食べられるのか毒があるのかわかっていないんです。
きのこの毒の作用はさまざまで、死に至るものもあります。
食べられるきのことよく似ている毒きのこも多く、間違って食べてしまい中毒になってしまうことも。マツタケやシイタケなどに似ている毒きのこもあるので注意が必要です。
第3章 毒と進化
毒の存在は、生物にさまざまな影響を与えてきました。
ここでは生物が毒によってどのような進化や生き方などを変えてきたか見ていきましょう。
警告色
警告色には、自分が有毒動物であることを周囲にアピールすることで、その動物と敵がお互いを避けられるはたらきがあります。
色鮮やかな体に斑点があるヤドクガエルや、お腹の部分に斑点があるアカハライモリなどがあります。アカハライモリはおなかの部分を敵に見せて自分に毒があることをアピールします。
毒を持つ姿、持たないのに似てる姿
ある生物が有毒であることを学習した捕食者は、その特徴をもつ生物を避けるようになります。
先ほどのヤドクガエルやアカハライモリ、どちらも黒の斑点と鮮やかな色と組み合わせでしたね。
複数の有毒生物種の外見が似ている現象を「ミューラー擬態」と呼びます。
それに対して、無毒の生物が身を守るために有毒生物と似た外見を持つ現象を「ベイツ現象」と呼びます。どちらも研究者の名前にちなんだ名称です。
香りでわかる植物の工夫
熟した果実ってとてもいい香りがしますよね。ではなぜあんなにいい香りがするのでしょうか?
それは動物に果実を食べてもらい、種を運んでもらうためです。
では熟す前の果実はどうでしょうか。青臭いし、食べても渋くて美味しくないですよね。
その青臭い香りは食べられるのを防ぐためなのです。
未熟な果実は食べられないように毒性物質を高濃度で凝縮させて食害を防いでいるものがあります。
未熟果と熟果の香りを嗅いで、香りを比べてみましょう。
第4章 毒と人間
毒と人類との関係は時代とともに移り変わっています。毒と人類の歴史を見ていきましょう。
人が毒を利用した最古の証拠
人が毒を利用した最古の証拠は南アフリカのボーダー洞窟で発見された「切れ目のある棒」で、約2万4000年前のものと推定されています。
狩猟目的で使われたとされており、トウゴマの種子に由来するリシンという猛毒が使われていました。
この他にも古代、中世、近代にかけて人類は毒と関わってきました。
自害のためや暗殺、兵器など使われ方は様々でした。
近代では毒に対する研究が科学者によって発展していきました。
毒を操る
人間が初めて毒を利用したのはおそらく狩猟目的と言われています。
ここからは人間による毒の利用を見ていきましょう。
殺虫剤と忌避剤
人間は、植物が捕食者から身を守るために合成している毒を殺虫剤や忌避剤として利用してきました。
日本で発明された世界初の蚊取り線香には、殺虫成分を持つシロバナムシヨケギクの花の粉末が練りこまれています。
また、インドセンダンも天然の忌避作用を有する農薬として注目されています。
意外なものにも!?毒をもつ食べ物
実は意外な食べ物にも毒があるんです。
土用の丑の日に食べるウナギ、毒があるのはご存知ですか?
ウナギの刺身がないのは血液や粘液に毒があるからだそうです。
加熱すれば毒性を失うので、蒲焼きにして食べる分には毒はありません。
少し前にはやったタピオカの元となるキャッサバやこんにゃくの元となるこんにゃく芋にも、毒があります。
そのままでは食べず、粉にしてから新たに加工する必要があります。
普段何気なく食べているタピオカにも、そんな一面があったんですね。
最終章 毒とはうまくつきあおう
毒との関係、いかがだったでしょうか。
皆さんご存じだったこと、初めて知ったこと、いろいろあったと思います。
最後にもう一度、現在の私たちと毒との関係を見ていきましょう。
人間の活動が毒生物を招く
ヒアリやセアカゴケグモが日本に入ってきたニュースは記憶に新しいですよね。
このように人間によって行われる移動や物流に伴って本来日本にいなかった毒生物が日本に入ってきました。
抗毒素の開発
抗毒素とは、毒素に結合してその効果を中和する抗体です。毒ヘビの抗毒素(血清)がとくに有名で、ハブでは噛まれたことによる死亡者が激減しました。
ヘビ以外にも破傷風毒素や、新型コロナウイルスの治療にも抗毒素が用いられています。
毒の一部は、人間が開発した技術で無力化できるのです。
特別展「毒」オリジナルグッズもチェック!
会場には、特別展「毒」のオリジナルグッズなどが充実!
かわいいぬいぐるみやハンドタオル、「毒」まんじゅうもありますよ!
ぜひチェックしに来てくださいね。
いかがでしたでしょうか。
害がある毒から薬になっているもの、毒があると知らなかったものや生活に役立っているものなど本当にたくさんありましたね。
見どころたっぷりの特別展「毒」へぜひお越しください。
特別展「毒」
開催時期:9月23日(月・祝)まで
開催時間:9時30分~17時
※最終入場は16時30分(閉館時間の30分前)
【休館日】毎週月曜日、7月16日(火)、19日(金)、9月3日(火)、4日(水)、17日(火)、20日(金)
※ただし、7月15日(月)、8月12日(月)、9月16日(月)、23日(月)は開館
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