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”20年後の未来の名古屋のまち”はどうなってる?~子どもたちの意見を聞いてみたら…~

 皆さま初めまして、子ども青少年局企画経理課です。
 初投稿では、子どもたちと大人が一緒になって”20年後の未来の名古屋のまち”を考えたワークショップの取り組みをご紹介します。

なぜ子どもたちの意見を聞くの?

 唐突ですが、この4月に「こども基本法」が施行されて、国の法律で、子どもの権利がしっかりと定められることをご存じでしょうか?ちなみに、名古屋市は、法律に先駆けて、平成20年に制定した「なごや子ども条例」(令和2年4月に「なごや子どもの権利条例」へと改正)の中で、子どもの権利を定めています。

 「権利」って聞くと、堅くて難しい…とお感じになる方もいらっしゃるかもしれませんが、子どもも大人も関係なく、一緒に楽しみながら進めたワークショプの様子を中心に、わかりやすくまとめましたので、最後までお読みいただけると嬉しいです。

 子どもの権利の詳しい説明を書きだすと記事が1つで足りなくなってしまうくらいですが、今回紹介するワークショップは、子どもの権利のうちの1つ「子どもが主体的に参加する権利・意見を表明する権利」を実現するための機会として実施しています。
 子どもも、大人と同じように社会の構成員の一員で、1人の市民です。選挙で投票することができなくても、意見を言い、そのために必要な情報提供などの支援を受けられるようになっていることが必要とされています。
 子どもの意見を聞くことは、子どもの権利と同時に、大人の義務と言えます。名古屋市では、毎年、このようなワークショップを開催しています。

ワークショップの全体像

 ワークショップでは、子どもたちが今の名古屋のまちのいいところを調べ、リニア開通やアジア・アジアパラ競技大会といった、これから名古屋で起こることや、DXや多文化共生、少子化高齢化などの課題を学び、子どもたちの思う「あったらいいな」をつめこんだ理想のまちを「なごっちタウン」としてレゴ®ブロックで表現し、市職員に提案します。
 ワークショップには、子ども青少年局が平成24 (2012)年度から実施している「なごっちフレンズ」(※)に登録している小学校5年生から中学2年生までの子どもたち15人で開催しました。

 (※)「なごっちフレンズ」とは子どもの社会参画を促進する取組みとして、子どもの目線で意見を言うイベントの情報提供をする仕組みです。市内在住・在学の小学校5年生から高校3年生までの子どもたち約750名が登録しています。

ワークショップ1日目!「名古屋のまちを知ろう!」(令和4年12月27日・火曜日)

 初日は、みんな緊張してる?…と思いきやたくさんのレゴ®ブロックを目の前にして開始早々から元気いっぱいでした。レゴブロックは、市と包括連携協定を結ぶレゴランド・ジャパンさんが、参加している子ども1人に1箱!お貸しくださいました。
 
 まずは、レゴブロックに慣れることと、3日間一緒にワークを進めるグループの結束を高めるための、チーム対抗ゲームからワークショップはスタートします。制限時間内で、ブロックを一番高く積めるチームはどこでしょうか?
 最初に、1位になったグループは、ブロックを立たせて高さを稼ぐ、見事な作戦でした。他のチームも2回目こそは負けられない!各グループの話し合いも白熱しました。「使えるパーツだけ分けておこう」「役割を決めておこう」グループ毎に様々な作戦ができていました。2回目に1番高く積んだグループは、ブロックを仕分けする人・積む人、と役割分担をしっかり決めたのが勝因。

 レゴ®ブロックに慣れたところで、参加した子どもひとりひとりが考える、名古屋のまちのいいところ・好きなところを「まちのいいね!」として、表現していきます。「家の近くにあるカモが池にいる公園」や「大須と栄の町並み」、「東山動植物園」などなど、みんなが思う、今の名古屋のまちのいいところがそろいました。

 1日目の最後には、名古屋のまちをもっと詳しく知るために、少子高齢化、多文化共生、防災、SDGsといった名古屋のまちの「いま」と「これから」について、市総務局企画課で総合計画を担当している職員からスライドと寸劇を交えて学びました。

 ワークショップの1回目と2回目の間はちょうど冬休みということで、最後に次回のワークショップに向けて、今は無いけど将来の名古屋のまちにあると「いいね!」と思うものと第2回以降グループでどんなまちを作りたいかを考えてきてもらう宿題を出しました。どんな意見が出るか楽しみです! 

ワークショップ2日目!!「アイデアを出そう!」(令和5年1月21日・土曜日)

 2日目からは、いよいよ、理想の「なごっちタウン」の作成に取りかかります。参加した子どもたちには冬休みの間に、名古屋のまちにあると「いいね!」と思えるもののアイデアを考えてもらいました。まずは、グループの中で、みんなのアイデアを共有します。
 将来の名古屋のまちにあると「いいね!」のアイデアには「空飛ぶ車」、「川をきれいにするカーシップ」、「QRコードを読み取れるリストバンド」、「タワーマンション群」など、みんなの興味や関心に沿ってたくさんのアイデアが。さらに、どんなまちをつくりたいか?のアイデアとして、「ごみのないまち」、「(ほぼ)完璧なまち」、「太陽光パネルをたくさん使ったまち」、「ビルの上に風力発電」、「みんなが楽しめる安全なまち」など多種多様なアイデアが集まりました。

 共有した後には、レゴ®ブロックを使いアイデアを表現していきます。同時にまちの設計書をつくっていきます。各グループ作業も議論も大盛り上がりで、大人が話し合いに入っていく余地はありませんでした。

 ワークショップ終了間際には、まちのパーツが少しずつ具体的なものになってきました。次回のワークショップまで、パーツを箱にしまって大事に保管します。

 2日目終了後に、子どもたちに感想を聞いてみました。
「いろんなものを作れて楽しかった。グループで話し合って決められた」
「いろんな意見を出しあえて、協力できて仲が深まった」と楽しんでもらったという声だけでなく、
「次回のワークショップの時間をもっと増やしてほしい」という意見もあり、3日目は当初の集合時間の1時間前から、レゴブロックの組み立てができるように予定を変更しました。

ワークショップ3日目(最終日!!!)「なごっちタウンをつくって発表しよう!」(令和5年1月27日・土曜日)

 ワークショップ最終日は「なごっちタウン」の完成と市職員へのプレゼンテーションです!完成のための心強い味方として、レゴランド・ジャパンからファシリテーターさんが参加してくれました。子どもたちが作りたいものを完成させるためのアドバイスをもらいます。

 レゴ®ブロックを固定するベースプレートに前回作った作品を配置して行く作業と並行して、まちの設計書に立ち戻って必要なものをつくりながら、発表に向けて「なごっちタウン」を完成させていきます。ときどき他のチームが気になって偵察に行っている子どもも…。まちのシンボルになる建物や施設、広い公園だけでなく、街路樹やみんなが住む家、鉄道、道路、川、工場などなど、まちに欠かせないものがどんどん充実してきました。
 最後まで、手を休めることなく、議論と作業は続きます。

 いよいよ「なごっちタウン」のプレゼンテーションです。20年後の未来のなごやのまちはどうなっていたらいいか。市役所からは総務局企画調整監と子ども青少年局長の2名が代表して提案をお聞きしました。

子どもたちの発表をグループごとにまとめてご紹介します。

1つめのグループのまちは「住みやすいまち」。

(子どもたちの発表)
 いろいろな生物がすんでいて、例えば湖には目がたくさんある生物がいます。発電所も湖の近くにあり、メロンパン工場もあります。車や遊び場もあり、だれでも楽しめるようになっています。

2番目のグループのまちは「環境と人々にやさしいまち」。

(子どもたちの発表)
 みんなが笑顔に過ごせるようにと考えてつくりました。環境に視点を向けていて、太陽光、風力、水力など二酸化炭素を出さないまちです。未来のまちなので川をきれいにする太陽光で動く車や風力発電で空を飛ぶ車があります。公園やまちの木など緑がいっぱいあります。下水処理施設もあり、環境を守っています。また、川では水力発電ができます。ビルの屋上には風力発電もあります。色んな未来の乗り物があり、戦車がまちの安全を守っています。

3番目のグループは、海外から来た「アップルさん」がまちを旅する目線でプレゼンをしてくれました。

(子どもたちの発表)
 タイから来た「アップルさん」は海からきました。アップルさんはレンタカーを借りて電波塔に到着しました。レンタカーは場所を送ると、現在混んでいる場所や通行止めなどの情報をもとに最短で目的地に到着できるように自動運転しています。
 近くの電話BOXでQRコードをスキャンして家族と電話しました。日本にいることを伝えて、せっかくだから遊んでから帰ることを伝えました。QRコードには個人情報が入っており、子どもや認知症の方が迷子になったときに使います。近くには目安箱があり、だれでも意見を投稿できます。
 次に、レジャー施設に到着しました。いろんな遊びができて、1つの施設でテレビの収録もできます。その後、喫茶店に入りました。喫茶店では言語を翻訳してくれるヘッドフォンがあり、いろんな国の人が交流しています。一日堪能したアップルさんはすべり台で海へと帰っていきました。」

最後のグループは「ALL in One」です。

(子どもたちの発表)
 すべての機能がまちにひとまとまりになっているのでこのタイトルにしました。このまちには駅直結のタワーマンション群があり、ヘリコプターがタクシー代わりに使用できます。また保育園が近くにあり、再生可能エネルギーで電力をまかなえるようになっています。また、様々な交通機関があり、主要な施設が駅周辺にあります。緑豊かな公園やきれいな川があり、近くに観光名所の名古屋のスカイタワーがあります。住民の生活としては、タワーマンションに住んでいて、直結の駅で出勤。子どもは保育園に預けます。休日は近くの公園で子どもと遊んだりゆっくりしたりします。公園の中のカフェや駅前のお店で食事もできます。名古屋市にはタワーマンションを立てやすくなるようにディベロッパーへの支援をしてほしい。また、再生エネルギーですべての電力をまかなえていて欲しいのと、交通機関が充実していて欲しいです。

子どもからの意見提案を聞いたまとめ

 環境にやさしく生物の多様性が損なわれないようなまち、住む人が安心して安全に生活できるまち、DXを活用して多文化共生が実現されているまち、緑と川と都市が見事に調和したコンパクトまち、と提案内容はどれも異なっていましたが、子どもたちが感じて、考えた「いま」の名古屋のいいところと、「これから」の名古屋にあったらいいなという内容がたくさんつまっていました。
 それと同時に、20年後の名古屋のまちでも、東山動植物園や名古屋城といった今の名古屋のシンボルは、変わらず大事にされている提案が多くありました。どの提案も大人だけでは着想できない、今を生きる子どもの視点で提案された貴重な意見として、大切に受け止めていく必要があると感じました。

【意見を聞いたあとに大切なこと】

 今回、3日間にわたって開催したワークショップでは、子どもからのご意見をたくさんいただきました。子どもから意見を聞く際に大切なことは、聞く時の対応はもちろん、意見をどう取り扱うのかという点も大切です。
 これから総合計画などを検討していく中で、職員たち大人の間で子どもからの意見が共有され、議論のテーブルにあがり、最終的には意見をどう取り扱ったのかというフィードバックがされていくことが望ましいです。
 意見を聞くことと、意見を採用することは決してイコールではありませんが、子どもたちの意見を大人がどう議論したのか、また、その結果はどうだったのかをしっかりとフィードバックすることが必要なのは、大人も子どもの場合も同じではないでしょうか。
 
 また、こういったワークショップを実施していることを多くの人に知ってもらうことも大切なことと考えています。今回のnoteの記事もその1つです。
 そのほかにも人が集まる場所に成果物を展示することも行っており、鶴舞中央図書館で春休み期間中に展示しています。

【まとめ】

 市が施策や制度を考えるときに子どもの意見を聞くことの大切さは、少しずつ理解されてきているのではと感じつつも、「当たり前のこと」となるにはまだまだ道半ばといった状態です。
 冒頭では「大人と同じように子どもの意見を聞く」と述べましたが、子どもは社会の構成員の一員であるとともに、これから先の将来を生きていく人達です。だからこそ、子どもの意見を聞くことが当たり前のこととなっていくよう、市としても様々な取り組みを進めていきたいと考えています。