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日々の暮らしを豊かに― #名古屋市美術館「#民藝 MINGEI―美は暮らしのなかにある」

白川公園にある名古屋市美術館では、「民藝MINGEI―美は暮らしのなかにある」を開催中!

 今から約100年前、思想家・柳宗悦(やなぎ・むねよし)は、日々の暮らしで使われた品々にまなざしを向け、美を見出しました。
そして、民衆的工藝、略して民藝の考えを提唱しました。
それでは、“暮らしのなかにある美”「民藝」を一緒に見ていきましょう!
ご案内は、名古屋市美術館学芸課の井口です。



美術館2階の会場入口から入ると、大きな展覧会のタイトルの垂れ幕がお出迎え。

会場入口の風景

右手に曲がると、机やテーブルが見えてきました。美術館の中に部屋がつくられているようです。


机や椅子など、部屋がそのままあるような展示が見られます


棚に、椅子に、テーブル。テーブルの上には紅茶カップやお皿が並んでいます。右手には屏風。鉄瓶が載っているのは火鉢です。これはどこでしょうか?

第I章: 1941生活展─ 柳宗悦によるライフスタイル提案


先程の展示は、1941年に日本民藝館にて、柳宗悦が「生活展」として行った展示の再現を試みたものです。柳は、民藝の品々とともにある暮らしを伝えようと、いまでいう「モデルルーム」を民藝館のなかにつくりました。テーブルには、柳が日々使っていたカップなどが並んでいます。

日本民藝館「生活展」会場風景 1941年


第Ⅱ章: 暮らしのなかの民藝─ 美しいデザイン


展覧会はまず、江戸から明治、大正、昭和と生み出されてきた、便利に、そして使う人の心を豊かに楽しませた、生活に寄り添う民藝の優品を「衣・食・住」を柱に紹介します。

「衣」を装う


会場を進んでいくと、まず目を引かれるのは、鶴が波の上を舞う夜着でしょう。着物の後身頃と両袖という限られたスペースに鶴と波が見事にデザインされています。ほかには丹念に刺子がほどこされた「稽古着」やアイヌの衣装。会場でぜひ、じっくりと手仕事のすばらしさをご覧ください!

鹿の皮や樹皮を使ってつくられた着物もあります


波に鶴文夜着 江戸~明治時代 19世紀 静岡市立芹沢銈介美術館蔵


さて、ケースの中にもいろいろと興味深いものが並びます。青森でつくられた雨除けの蓑「伊達げら」は、夫が作り、妻に贈るもので、材料を選び、襟元の模様も美しく仕上げられた「げら」をきっと妻は誇らしく思ったことでしょう。同じケースには、東北地方の女性たちによってつくられたこぎんをつかったバックも展示されています。見事な手仕事をお見逃しなく。
 ケースの中央は、有松・鳴海絞りの浴衣です。かわいらしいサイズですが、一ツ身、つまり幼児のために作られたものです。

着物のほか、帯や生活小物などもあります


続いては、たくさんのケースが並んだエリアです。

「食」を彩る

このお皿で何を食べたいかな、と想像しながら見ていくのも楽しい!


会場入口の垂れ幕にあった石皿です。江戸の後期につくられた瀬戸焼で、描かれた撫子が愛らしく、素朴でありながら味のある器です。つくりは厚手で丈夫。ちょっと深みがあるので、煮物などお汁があるものにも適しています。日々の暮らしに寄り添った器です。

呉須鉄絵撫子文石皿 瀬戸(愛知)江戸時代 19世紀 日本民藝館蔵


これは何でしょうか・・・鶏卵を入れる籠です!かわいらしいですね。

網袋(鶏卵入れ) 朝鮮半島 20 世紀初頭 日本民藝館蔵


展示室は1階へと続きます。何か聞こえてきました。沖縄の音楽です。こちらは、沖縄の特集コーナーです。日本は北から南へと長く、そしてその気候や風土に合わせた生活を送ってきました。柳は特に沖縄の文化に惹かれました。芭蕉布でつくられた着物も展示されています。風通しのよくて着心地がよさそうです!


ベージュ色の着物が芭蕉布の着物。沖縄特有の食器も展示しています

「住」を飾る

 
日々の生活に欠かせないのが、灯り。行燈や照明具は、中が灯ることを想定してのデザインがされています。邪魔にならず、生活を穏やかに見守る灯りです。
 ほかにも座布団、椅子からハサミや箒まで、日々使うものだから、使いやすさも考えた形が生まれてきました。

灯りや家具、生活道具を飾るのも生活を彩るのに欠かせません

第Ⅲ章: ひろがる民藝─ これまでとこれから

『世界の民芸』―新たな民藝の世界


柳とともに活動した濱田庄司や芹沢銈介らは、世界各地の民藝の品々収集し、紹介しました。
 

着心地はどんなだろう?想像しながら見てみてください


双魚文上着裂(モラ) サンブラス島(パナマ) 20 世紀後半 静岡市立芹沢銈介美術館蔵


「民藝の産地―作り手と今」


民藝の品々の産地の作り手と今を、それぞれの品と映像を用いて紹介しています。小鹿田焼(おんたやき)、丹波布(たんばぬの)、八尾和紙(やつおわし)、鳥越竹細工(とりごえたけざいく)、そして倉敷(くらしき)ガラス。このたびの展覧会に合わせて、それぞれの産地の今を取材しています。展示品ととともに注目していただきたいのが、作り手たちの仕事を伝える映像の美しさです。映像作家の永田拓也さんの手によるもので、品々の生まれる場所を撮らえています。そして、会場内のバナーに使用している写真はフォトグラファーのオガワユウキさんによる撮影。手仕事の美しさを写真で伝えています(図録にも多数収録されています!)

各地の作り手の様子を動画にて紹介しています
丹波布(兵庫、製作風景)Photo: Yuki Ogawa

「Mixed MINGEI Style by MOGI」

 
そして最後は、民藝の品々とともにある現代の暮らしをご紹介。最初にご覧いただいた“モデルルーム”ともいえる1941年の「生活展」を覚えていますか?ここは、現代の“モデルルーム”ともいえるかもしれません。
 2022年夏までセレクトショップBEAMSのディレクターとして長く活躍し、現在の民藝ブームに大きな役割を果たしてきたテリー・エリスさん、北村恵子さん(MOGI Folk Artディレクター)による現代のライフスタイルと民藝を融合したインスタレーションです。

民藝の品々と楽しく暮らすちょっとしたヒントが見つかりそう!


2人のコレクションから、瀬戸の石皿、鉢と芹沢銈介ゆかりの屏風が「名古屋スペシャル」として出品されています。お見逃しなく!

特設ショップでお気に入りを見つけよう!


最後はショップへ。カップやお皿、器、バックやブックカバーなどなど。お気に入りをぜひ見つけてください。(ショップは入場券なしでも入れます。)

ショップでお気に入りの品を探してみませんか?


選りすぐりの品がずらり。見ているだけでも楽しい!


忙しくて、あわただしい日々。そんな日々だからこそ、お気入りのカップでコーヒーを味わったり、手仕事のあたたかさや美しさを見直したりしてみると、ちょっと日々の暮らしが豊かになる・・・そんなきっかけを見つけられそうな展覧会です。

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特別展「民藝 MINGEI-美は暮らしのなかにある」
開催時期:2024年10月5日(土)~12月22日(日)
開館時間:9時30分~17時 金曜日は20時まで開館
※最終入場は閉館時間の30分前

【休館日】毎週月曜日

チケットや料金など、詳しくはこちら

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※画像はすべて名古屋市美術館提供。無断使用はお控えください。