誰もが住みやすい街なごやへ「障害者の日常を知っていますか?」
健康福祉局障害企画課です。
12月3日(金)から9日(木)は障害者週間です。
本市では、障害福祉サービスの充実や障害者基幹相談支援センターの設置、「名古屋市障害のある人もない人も共に生きるための障害者差別解消推進条例」の制定など、共生社会の実現を目指してさまざまな取り組みを進めています。
広報なごや11月号掲載の「誰もが住みやすい街なごやへ」について、紙面の都合上、当事者の方のお声について一部しか掲載できませんでしたので、今回noteで全文を掲載いたします。ぜひご覧ください。
名古屋市身体障害者福祉連合会会長の
橋井 正喜(はしい まさき)さま
視覚障害1級 50代半ばまでは弱視(ロービジョン)。
現在は、全盲です。
失明するまでは日常生活には困らない程度の視力はありましたが、人の顔の判断まではできなかったので苦労しました。また白杖も使用していなかったため、周りからは不思議に思われていたかもしれません。
障害があることで嫌な思いをしたこと、周りの反応で辛かったことはありますか。
視覚障害者は一人でいるとき、周りの状況や誰がいるのか全く分かりませんので困ることは多々あります。
例えば、「こんにちは」の挨拶のみで名前や所属を言って下さらない方ですと、せっかく声をかけてくださってもこちらでは誰だか認識できません。
また何も言わずに私の前をすっーと通り過ぎて別の方とお話をされると、存在を無視されたような気持ちで悲しくなります。
最も嫌なことは見えない自分に対して、声だけで「私、誰かわかる」と聞いてくる方には、試されているような、馬鹿にされているような気持ちになりうんざりしてしまいます。
昨今、障害者は施設に入所するのではなく地域で生活することが望ましいと言われますが、名古屋のような都会と地方とでは状況が異なってきます。都会では、町内会に入らない方もいたり、集合住宅やマンションは扉を閉めてしまえば周りの状況は一切分かりません。
私も弱視の時は町内のお手伝いを少しはさせていただいていたので、地域の方々と関わる機会がありましたが、今では地域との関係が希薄になり町内にどのような方々がおられるのかもわかりません。これは私が暮らしている地域だけではなく、他の地域でも同じような状況だと思います。
一方、地域の方も障害のある人とかかわる機会も少なく、どのように対応すればよいかわからないのだと思います。そのため障害者もますます地域で孤立してしまうと思います。
配慮で良かった・うれしかったと感じたことはどんなことですか。
コロナ禍の中、誰もが感染しない、感染させないよう十分注意をしており、人混みや外出を避けての日常生活を送っていますが、私たちに代わって買い物をしてくださるホームヘルパーさん、病院、買い物等に一緒に同行していただくガイドヘルパーさんには感謝の言葉しか見つかりません。
いつ、どこで感染するのかが分からない状況の中の活動には感謝いたします。
私は障害者団体の役員をしていますので、行政の方々は顔を見れば挨拶もしていただいていますし、資料では点字やテキストファイルでいただいていますので大変助かっています。
また、地下鉄などを利用して知らない駅に行く際には、駅員の方にご案内をいただき大変感謝しています。さらに最近では、地下鉄にホーム柵を付けていただいたことでホームからの転落を心配せず安心して地下鉄の利用ができるようになりました。
私は、全国の視覚障害者団体の役員もしていることから、月に数回は新幹線を利用して出かけますが、JRの職員さんには駅構内等での移動のお手伝いをいただいており助かっています。そのおかげで長年活動が出来ています。
移動する際に、時々子供さんから声をかけられたこともあります。その際には、温かい気持ちになり素直にうれしいですね。
コロナ禍で特に困っていることはありますか。
ここ数年、声掛け運動などで視覚障害者に声をかけてくださる方が少しずつ増えてきていました。
しかし、昨年来、コロナの感染拡大防止という目的で三密を回避することやソーシャルディスタンスを取ることが推進されてきたため、街中で困って手助けしてほしくても視覚障害者は声を出しづらくなりました。
また周りの方も手助けの声がかけにくくなるなど、必要な声かけも、コロナ禍では難しくなっています。
これまでも、音響式信号機が設置されていない交差点や歩車分離式信号機などいつ交差点を渡っていいのかわからないところでは、何度となく危険な目に遭遇しました。
そんな時、その場に居合わせた人が「青になりました」、「一緒にわたりましょう」と声をかけてくだった時にはどれほど嬉しかったことでしょう。
また、コンビニなどで買い物をする際に、これまでは一緒に店内を回っていただけましたが、コロナ禍の影響でそれも困難になりましたし、マスクの影響もありお店の方に上手く話が伝わらず思うように買い物ができないこともありました。
さらに、コロナ禍以前は付き添いの人と一緒に買い物をしても、一つ一つ商品を触わり、大きさや形などを確認していましたが、商品に触わることに過敏になっていることもあり、そうすることもできなくなりました。
私にとってコロナ禍においては、一歩家を出れば周りは全て危険と思って移動しています。
取材の様子
周りで障害により悩む方がいたときにはどのようなことを心掛けて生活していくとよいでしょうか。
難しい質問ですね。
一昔前までは、医師から治らない病気だと宣告されると「絶望」や「死」をイメージされることが多かったように思いますが、今では病気と向き合う人も増えているように感じます。
一方、障害については、現在でも「何もできない」とか、「本人の問題」と捉える人が多いように感じます。しかし障害といっても状態や程度は様々であり、それぞれ個人の特性も違います。
また、環境やまわりの配慮があることで障害は軽減されることもたくさんあります。私はこれまで、自分の障害を理解し工夫し、できることから始めてきました。
一人で悩まず周囲の人や同じ障害のある方と話し合うことも大切です。今まで培ってきた技術や能力が失われたとは考えず、サポートさえあれば今まで通りの生活ができるようになった人も多くいます。
社会復帰には個人の努力のみではなく、周りの人のサポートや社会の理解が必要です。そして、何よりも医学やIT技術の進歩に期待しています。
現在、ご本人またはご家族で障害について悩んでいらっしゃる方は、様々な相談窓口がありますので、自分だけで抱え込まず一日も早く扉をたたいてください。必ず解決への糸口は見つかります。
名古屋市より
名古屋市では、障害についての相談窓口を次のとおり設置しています。
お気軽にご相談ください。
障害者手帳、障害福祉サービスの申請などに関するご相談がある方は、区役所・支所にご相談ください。
お母さんと子どもの健康、こころの健康、精神障害、難病などに関するご相談がある方は、保健センターにご相談ください。
障害福祉サービスの利用、地域における生活支援など、総合的なご相談がある方は、障害者基幹相談支援センターにご相談ください。