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なごやのチカラ 水害からまちを守る水防のお仕事~広報なごや6月号~

皆さん、こんにちは。広報課の鈴木です。
広報なごやのシリーズ企画「なごやのチカラ」。今年度は24時間名古屋のまちを支える仕事・活動をしている人をクローズアップします!
広報なごや6月号の紙面とあわせて、お読みください。

6月は梅雨の時期ということで、大雨が心配ですよね。
雨に備えた対策を取られている方もいらっしゃると思います。

そこで、広報なごや6月号では、水害からまちを守る水防のお仕事を担っている緑政土木局企画経理課の藤井さんにお話しを伺いました。

緑政土木局企画経理課(防災担当・土木技師)の藤井さん。土木技師として守山区土木事務所、緑政土木局河川工務課での業務を経て、現職。大雨や台風などの風水害や地震が発生したときの職員マニュアルや計画の作成、職員訓練の企画・実施、防災用品(ヘルメット、長靴、安全靴、カッパなど)の整備を行ない、災害時に職員を派遣する準備をしている。

緑政土木局の職員の皆さんが、災害時にどのような対応をしているのか、どのような心構えで臨んでいるのかなど、名古屋のまちを守る使命について教えていただきました。

以下、―の質問は鈴木。回答は藤井さん。

―藤井さんは、緑政土木局の防災担当として、日頃どんなことを心掛けて、仕事をされていますか?

私は、災害時の業務マニュアルの作成や職員間の情報伝達・土のう訓練を企画・実施することで、職員がいつ何時でも災害対応ができるようにしています。

大雨はいつやって来るか分かりません。
たとえ新規採用の職員であっても、先輩職員と同じように役割を果たさなければなりません。

そのために、内容に漏れのない、分かりやすいマニュアル作りを心掛けています。また、作成したマニュアルについて、職員に丁寧に説明することで、防災に関する基礎の部分をしっかり身に付けてもらえるようにしています。

―大雨のときなど、緑政土木局の職員はどんな対応をしているのですか?

私たちは、6~10月の川が増水しやすい時期に、大雨注意報や洪水注意報などの気象予報が出たとき、休日、昼夜問わず職員が集まり、非常配備の体制をとります。
いつもより少し雨が強いかな…という注意報の段階で、職員が集まっているということがポイントです。

もしかしたら雨雲が発達して、もっと大雨が降ってしまうかもしれないため、非常時に備えて、川の水位の監視や雨量の情報収集などを行い、職員が目を光らせています。

また、いつでも河川や道路の状況が分かるように、監視カメラや水位計を設置し、監視用のシステム・WEB上などで確認ができるようにしています。
普段の監視で異常を確認したときや台風・大雨の前には、異常箇所や被害の出やすい箇所(例えば、道路のアンダーパス※内にある排水ますなどに落ち葉やごみがたまっているなど)の清掃などを重点的に行っています。
※アンダーパス:鉄道などの下を通るために、周辺より低くなっている道路

冠水したアンダーパス内の様子
大雨のときなど、冠水したアンダーパス内の通行はやめましょう。

―注意報が出たら、休日、昼夜問わず職員が集まるということですが、どのくらいの時間、対応に当たるのですか?

台風の接近に伴い、名古屋市に被害が発生する恐れがあるとき(暴風警報など)は、交代しながら長時間の非常配備につきます。
台風が名古屋市から遠い位置にいても、大雨が降ったり、風が強まることがあるためです。

例えば、金曜日の夕方から配備が始まった場合、土日にかけて配備が続くこともあります。
このとき、常時約300人の緑政土木局の職員が対応にあたっています。

―これまでの災害対応の中で、印象に残っている出来事があれば教えてください。

平成23年の台風15号が来たときです。
当時、私は新規採用者として守山土木事務所で働いていました。
配属されてすぐに水防についての説明会があり、区内の雨に弱い場所などを先輩職員から説明を受けながら回りました。守山区には河川が多くあり、水防の役割、責任、大変さを感じたことを覚えています。

そして、9月に台風15号がやってきました。
午後0時10分、野添川と庄内川が合流する地点で水があふれ出し、私は河川から道路に水が流れ出ていく光景を目の当たりにしました。水害の恐ろしさを痛感しました。

その後も雨が続く予報だったため、土のうを数百メートルにわたって設置することになりましたが、人員や材料などが不足していたため、市役所勤務の職員や他区の土木事務所の職員、消防隊や民間の協力事業者に応援を依頼しました。
深夜から始めた土のう作成・設置作業は明け方までかかりました。

台風15号のときに行われた土のう作成・設置作業の様子

体力・精神的にも苦しい作業ではありましたが、被害を少しでも抑えたいという思いで必死に手を動かしていました。

この教訓を生かし、緑政土木局では毎年、新規採用者などに向けた土のう訓練を始めました。
今回は今年(令和6年)の4月に行った土のう訓練の様子を紹介したいと思います。


<番外編> 土のう訓練に潜入!

4月下旬の晴天の中、緑政土木局の新規職員などが参加し、土のう訓練が行われました。

土木事務所の職員からレクチャーを受けます。

土のうとは、大雨のときなどに、水の流れをせき止める土木資材です。

訓練では、実際に土のうを作り、積む作業を経験します。
新規職員であろうと、災害が発生したときには、被害にあった現場に向かい、対応に当たることになります。誰もがいち早く対処できるように、知識と技術を得ます。

~訓練での土のうの作り方~
1 土のう袋の半分程度、土を入れる。重量は1袋20~30㎏程度になります。

2 袋の端に出ているひもを引いて、袋の口を絞る。

3 袋の口をくるくる巻く。

4 細くなった口で輪を作り、指で押さえながらひもを2~3回まわして締める。

この工程が一番難しいそうでしたが、徐々に慣れていく新規職員の皆さん
持ち運びのしやすい持ち手のついた土のうの完成!

訓練では200個の土のうがつくられました。

山盛りだった土がすっかりなくなり、土のうになりました。

作ったら終わりではありません。続いて、積んでいきます。
ポイントは土のうを置く向きと隙間なく積んでいくこと。

水が流れてくる方向に土のうの底部分を向け、土のうを平らにしながら隙間を埋め、交互に積んでいきます。(実際に土のうを積むときには、より隙間を埋めるために土を被せて積みます。)

丁寧かつ迅速に積んでいきます。
最後まで隙間なく!
訓練の最後は、全員で土のうをトラックに運びます。訓練で作った土のうは、大雨時など緊急を要するときに活用します。

―最後に、市民の皆さんにメッセージをお願いします。

緑政土木局は、水害に対する事前の防災対策として河川の整備などを進めています。しかし、河川の整備といった、いわゆるハード面の整備は大きな効果を得られる分、時間とお金がかかります。

水害はハード整備が完了するのを待ってくれません。

私たちはハード整備を着実に進めながら、事前に!直前に!最中に!発災後も!やれることのある「水防」を、水害に対する「最後の砦」と捉え、水害に立ち向かっていきたいと思います。

また、私たちは災害に強いまちづくりに力を入れています。
災害に強いとは、もちろん河川や道路のハード整備も含まれますが、大雨のときに職員が配備して万全の体制をとっていることも、災害に強いまちの1つの要素だと考えています。
これからも名古屋の水防を担う職員として、責任感を持って業務に取り組んでいきたいと思います。

私たちは、被害を最小限にとどめるよう、日頃から水害に備えていますが、近年は想定を超える災害が頻発しています。
そこで、市民の皆さんにも、家庭でできる水防に取り組んでいただければと思います。


事前の備えとして、ハザードマップで避難場所の確認、洪水のときにどのくらい浸水する想定なのかを知っていただくと適切な避難行動につながります。

台風や大雨が近づいたら、自宅から近い道路のアンダーパスや河川・水路の水位状況をWEB上のカメラや水位計などで情報収集を行なってください。
※大雨のときに、河川などの様子を見に行くことは危険ですので、WEB上で確認してください。

私たちと一緒に「水防」に取り組んでいきましょう。よろしくお願いします。

インタビューを終えて…
藤井さんは30代の若手職員ではありますが、水防のプロとしての自覚を持ち、名古屋のまちを災害から守っていきたいという強い思いをお話から感じ取ることができました。

土のう訓練の様子も取材させていただきましたが、真剣な眼差しで訓練に取り組む職員の姿が印象的で、こうした職員一人一人の存在がいざというときに名古屋のまちを守るチカラになるのだと実感しました。

河川・道路に精通した職員が、大雨の日に配備して、まちの状況を見張っていることを、私は心強く感じましたし、私自身も、もしものときの備えをしっかりしよう!と改めて思いました。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。