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着陸しないフライトはない。乗り越えた先には充実が待っている~なでしこ ロールモデル対談 Vol.1~

名古屋市公式note

こんにちは。名古屋市役所副市長の杉野みどりです。
第一線で活躍する女性幹部の方から、これまでのご経験や、キャリアについての考え方などをお聞かせいただき、その内容を発信していきたいと思います。
これから管理職以上を目指していく女性社員の方に、「キャリアを考えるきっかけ」や「キャリアアップのモチベーションをあげる機会」となれば幸いです。
 
第1回は、「中部の魅力を語る なでしこの会」(中部経済連合会加盟企業の女性幹部で構成)でご一緒させていただいている、全日本空輸株式会社(ANA)の名古屋支店長、江島まゆみさんにお話を伺いたいと思います。


全日本空輸株式会社 名古屋支店長 江島まゆみさん
1991年入社。CA(キャビンアテンダント、客室乗務員)として多くのフライトを経験し、管理職昇任後は、機内安全・サービス品質企画管理業務、人事部人財教育部門、マーケティング室宣伝部などを経て、2021年4月1日より現職
 
「何かにぶつかったら、その時点で悩めばいい。あなたは求められている。チャレンジしてみたら。」
その言葉がきっかけで、客室乗務一般職から管理職へ

 
(―は杉野が発言)
―まずはこれまでどんなお仕事をされてきたか、教えていただけますか。
 
江島さん:ANAには、「グローバルスタッフ職(事務)」「グローバルスタッフ職(技術)」「客室乗務職」「運航乗務職」「エキスパートスタッフ職」の5職種があり、私は、客室乗務職として入社しました。2007年に管理職チャレンジ制度に手を挙げて管理職試験を受験し、昇格しました。2017年に、「グローバルスタッフ職(事務)」に職掌転換したことで、更に業務の幅が広がりました。当初、管理職は、ハードで孤独な業務イメージがあり、それをこなせる自信もなく、全く魅力を感じませんでした。単に「管理職を目指せ」と上司に言われていると解釈し、違和感を覚えた時期もあります。私のやる気のない態度に一部の上司はその話をしなくなりました。その想いを変えたのは、ある人の温かく背中を押す一言。「何かにぶつかったら、その時点で悩めばいい。あなたは求められていますよ。求められるうちが花。チャレンジをしたら。」
その後、客室での経験を軸に、人事、客室サービス・安全企画、ブランディングやプロモーションなど、いろいろな部署に配属され幅広い経験や貴重な学びを得て、現在の職に至ります。
 
―当時は、管理職を目指す女性はどれくらいいたんですか。
 
江島さん:社員の約50~60%が女性ですが、当時の女性管理職は、10%にも満たずかなり少なかったです。現在は16%程度まで増えています。
 
―管理職を目指す女性が非常に少ない中、目指すべき先輩や目指すべき女性の方はいらっしゃったんですか。
 
江島さん:
同じ職種で一人に絞るというよりは、尊敬できる様々な分野の方々との出会いを通して、良い所や感性が動かされた部分を刺激にしてきました。
 
 
身の丈を踏まえて自分がどうありたいか考え、五感を使って実践することで道が切り拓けました。

 
―管理職になって、ご苦労はありましたか。
 
江島さん:沢山の試練に遭遇しました。最初にぶつかったのは、配属された職場での業務の進め方や慣習の違いです。比較的新しい取り組みを推進する役割でしたので、様々な企画や取り組みを提案しましたが、会議や調整で不文律や慣習に触れてしまい、反感を買いました。人脈もなく、相談相手もいない中、日々、悩み、手探りで学ぶしかない環境で失敗も沢山しました。自分の不甲斐なさと疎外感を感じながら過ごしていました。
 
―管理職になって、いわゆる男性社会に放り込まれたんですね。考え方や価値観が違うといったことを感じられたことはありましたか。
 
江島さん:それはありました。男女差だけの問題ではないのですが、同じ価値観同志であうんの呼吸を求められたり、異論を唱えても却下されたり、女性は下駄をはかされているなどとささやかれたり、固定観念で違いを受け入れてもらえないこともありました。当初は、自分が仕事ができない、業務を分かっていないからいけないんだと悩んでいました。十数年前のことですので、特別な経験ではなく、日本のどこの会社やコミュニティでもよくあることだったと思います。
 
―そうした経験から今の立場へ。道を切り拓くバネになったことはありますか。
 
江島さん:負のスパイラルに陥っていた時に
「試練やストレスはあって当たり前。ない人は、輝くチャンスを逃している」という助言をいただきました。これを機に気持ちが上向きになり、自分本位に動いていたことにも気づき、まずは、相手の想いを理解して、自分がどう役に立てるかを考えて行動するように意識しました。多少の嫌なことは、反面教師としてあしらい受け流す、利他の精神で動くようにしていると、気持ちが楽になりました。振り返ると、ビジネスパーソンとして当たり前のことしかしていませんが、疲弊して視野が狭くなっていた頃の私には、見えなくなっていることが沢山ありました。修羅場に置かれると、浮足立って普段できることさえできなくなることも分かりました。この経験で、どんな時も「落ち着きを忘れないこと」と「損得ではなく、相手の役にたてるかどうかで判断すること」という大事な学びを得て、しなる強さを身に着けるきっかけになったように思います。
 
―なるほど。仕事で成長を得るためには数々の厳しい場面にも出会いますよね。
行政は組織で仕事をしており、課単位で動いているのですが、自分の部署だけでできないことってあるんですね。そういった時、粘り強い調整が非常に重要になってくるんですが、どうしても進まない場合、時にはトップに話を上げて了解を取り付け、トップダウンで仕事を進めるという荒技を使ったこともありました。その際は「市民のために」をモチベーションにして、気持ちを強く持たなければならないこともありました。
 
江島さん:杉野副市長には、それをやり通せるだけの、知識と技能、交渉力と調整力が、おありなんだと思います。勇気ある行動であり、とても尊敬します。
 
人への感謝の気持ち、お互いを理解し合う姿勢が大切です。


  
―江島さんの次に続く方はいますか。
 
江島さん: 客室乗務職は女性が多く、フライトという専門分野でマネジメントをする人財は必要ですので、今後も増えると思います。一方で、グローバルスタッフ職の女性管理職は少ないのですが、2010年くらいの採用から、女性比率が増えていることもあり、女性の幹部候補生が育ってきています。女性グローバルスタッフ職の母数が増えると、それだけ環境が整い、管理職を目指す人が出てきやすいのではないかと想定しています。
 
―客室乗務職から管理職になるのは珍しいことなのでしょうか。
 
江島さん:徐々に増えています。客室部門からグローバルスタッフ職の管理職になって、今は役員として活躍している先輩もいます。
管理職になると職域が広がります。「好きなこと」「できること」「やらなければならないこと」の3つのバランスが良い業務に就くことが理想ですが、業務範囲が広がることで、その枠も大きくなり、選択肢が増えるのではないかと思います。
 
―挑戦し続けてこられた信念は何でしょうか。
 
江島さん:基本は楽しく、好奇心を持つこと。そして、忘れてはならないことは、感謝の気持ち、お互いを理解しようとする想いです。私一人でできたことは何一つなく、皆様のご支援により、気が付いたらここに導かれたという感じです。
 
新入社員から役員まで「ダイバーシティ&インクルージョン(※)」は日々深化しています。


―御社には企業として女性を育てようという文化がありますか。
 
江島さん:以前は、業務の専門性によって男性と女性が分かれる傾向にありました。客室乗務職は女性中心で、技術職や運航乗務職はほぼ男性という具合です。
2015年、経営層のダイバーシティ&インクルージョン宣言以降、アクセルを踏み込み、部署やグループ会社の枠を越えて交流し、イノベーションを起こす意識や仕組みがかなり整いました。この流れに乗って、女性の活躍領域が広がっているのを実感しています。

※性別、年齢、障がい、国籍などの外面の属性や、ライフスタイル、職歴、価値観などの内面の属性にかかわらず、それぞれの多様性(=ダイバーシティ)を尊重し、認め合い、受け入れて活かすこと(=インクルージョン)


―我々は女性の活躍を推進する立場なのですが、実際にはなかなか浸透していると思えない場面や出来事に遭遇することが多々あります。そういうとき、声を上げたり、何か行動されたり、方策はありますか。
 
江島さん:やっぱり人数がある程度いないと声が出にくいと思います。ですので、意識的にある程度の人数の女性を会議に入れるようにしたり、逆に女性ばかりの中に男性の役員に入ってもらい、普段何を感じ、考えているのか、リアルの世界を理解してもらう機会を設けたりしています。
このような活動を受けて、役員を中心に社員一丸で動き、新しい部署も立ち上がりました。女性の活躍推進については、「総論は賛成。ただし自分に不利益が被らなければ・・・」という傾向もあるように感じます。まずは、トップ自らが企業の戦略として強い意志を持って発信することも大切だと思います。
 
管理職はより柔軟に仕事をマネジメントできます。ライフ&ワークの幅が広がり、より豊かな人生につながります。

 
 
―家庭と仕事の両立は、男性も含めて難しい課題だと感じています。例えば、育休から職場復帰をして管理職に育っていくために、どんな方法がありますか。
 
江島さん:以前は、ロールモデルのマッチング、階層別のキャリア教育など、画一的にサポートしていました。価値観が多様化し、人数規模も大きくなった今は、よりカジュアルに、育児・介護経験者や管理職から話を聞けるウェブ上のコミュニティやリモート座談会、都合の良い時間に予約制で先輩社員に相談できるカウンセリングの仕組みを作りました。また、既存の福利厚生や制度の賢い利用方法を説明して、より負担や不安を軽減できるようにサポートしています。
こういった取り組みが安心感やロイヤルティに繋がり、復職後も長く働いてくれる人が増え、ひいては管理職を目指す層に育っています。
 
―育休から復帰して、管理職を目指す女性は増えていますか。
 
江島さん:確実に増えてきています。先人の知恵の共有や周囲の理解、育休後の昇級制度見直しなど、環境が整うことで、管理職も視野に入れて、より長い目でキャリアを考えるようになってきています。
また、管理職は責任が問われる一方で、ライフ&ワークマネジメントの裁量がより自由になるので、目指す人が増えているのだと思います。
 
―市役所には、係長試験がありますが、受験する女性が非常に少ないです。家庭と仕事の両立が難しくなりそうで、管理職になってそれ以上背負い込みたくないと思う人が多いです。係長になって、それ以上を目指す人を増やしていくためには、何をすればいいと思いますか。
 
江島さん:私の経験から感じるのですが、女性は、楽しいことより先に、責任や能力が問われることの忌避意識が働く傾向があります。様々なチャレンジを経て自分が磨かれていくことの価値、管理職としての制限がある一方で自由裁量が増えることなどを伝えること、チャレンジにむけてやる気スイッチを押してくれたり、悩みを打ち明けられるようなサポーターがいることなどが大事だと思います。
また、管理職は孤独に見えるかもしれませんが、頑張っている部下を引き上げたり、広いネットワークを通して組織貢献ができたりと、より幅広く社会の役に立ち、最終的に自身の人生の充実につながります。
何をするにも先は見えないですが、新たな役割は成長を促してくれます。たとえ、不本意な結果になっても、一人で背負い込む必要はまったくないですから、前向きにチャレンジしてほしいですね。
 
着陸しないフライトはない。何があってもチームで最善を尽くせば何とかなる。


 
―管理職のプラスの声があるのは、いいですね。人生のターニングポイントになった出来事を教えてください。
 
江島さん:
印象に残っているのは、初めて本社部門に配属された時の経験でしょうか。何もかもが新たな挑戦でしたが、知識やスキルがなく、相談相手もおらず、会社人生で初めて孤独を感じました。上司には何をやっても否定され、自分の存在意義を感じなくなりましたが、2か月ほど熱心に取り組むと仲間もでき、前向きにとらえることができるようになりました。
数年後、新たなチャレンジを自由にさせてくれる上司に巡り合いました。サポートはあるものの、細かい指示命令はなく、失敗をしても一緒に頭を下げてくれる、管理職として本当の意味での裁量を与えられました。上司とのお詫びの場面は今でも覚えており、厳しく叱られるよりも心に響き、真剣にリカバーしました。上司の動きに呼応して、私もまた、部下の大切にしていることを尊重しながらサポートすることに努めました。その背中に仲間が共感し、チームで取り組むようになり、大きな成果が生まれ始めました。
人は何を言うかではなく、何をするかに動かされることを学び、楽しんで仕事をするとはどういうことかを体感しました。
これらの経験以来、辛いときは自分が磨かれている時。どんなに苦しくても2か月もすれば糸口が見える。仲間と自分を信じて自由な発想で行動すれば大きな波が生れると思えるようになりました。
 
―あと2か月の我慢だから、それは、自分自身を客観視できる、江島さんの強みだと思います。
 
江島さん:もしかしたら、フライトでの経験が活かされているのかもしれません。フライトでは、一度離陸すると、どのようなトラブルが起こっても、乗り合わせたクルーが一致団結して、難局を乗り越えるべく知恵を絞り、安全に着陸できるように最善をつくします。
新たな職場に配置された時、客室での経験は、何の役にも立たないと思ったこともありましたが、「与えられた環境で最善を尽くす覚悟」は、空の上という特殊な職場環境の中で、素晴らしい仲間やお客様から経験を通して得られた貴重な学びです。また、難題が降りかかってきても逃げない強さ、チームや仲間を信じる気持ちは、どこに配属されても、自身の組織運営の土台になっています。
 
―私は、飛行機に乗るとき、離陸すると周り全員が運命共同体だなと思うんです。
 
江島さん:そう言っていただけると、大変うれしいです。運命共同体のお客様に助けていただいたり、楽しいことから苦しかったことまで、客室乗務員は、お客様と共にあると感じています。
 
―江島さんは、客室の経験が自分の糧になっているから、今につながっているのだと感じました。市役所では本庁の職員もいますが、区役所や事業所など現場で働く職員もいます。そういった、市民と直接対話する部署は、色々な苦労もありますが、その経験は必ず役に立つと思っています。
 
気負うばかりじゃなくて、柔らかい生き方で、成長していきたい。
 


―江島さんは、普段から楽しい視点やワクワクする視点をお持ちだと感じます。普段の生活の中で工夫していることはありますか。
 
江島さん:なるべく先入観を持たず、好奇心を持って趣味やセミナーなど、いろいろな集まりに顔を出します。また、忙しくとも仕事1本に絞らずに、趣味やセミナーなども含めて、複数抱えるようにしています。そうすると、ひとつの仕事で大変な局面を迎えても、平行する別の仕事やセミナーなどからのひらめきで、新しいアイデアが生まれ、仕事に活かせたりします。
じっとしないで動き、仕事とプライベート両面を充実させることが、「ワクワク」を育むことに繋がるように思います。
―気持ちが落ち込んだりきついときに、持ち直すためにすることはありますか。
 
江島さん:オンオフの切り替えは、好きなことに没頭する時間ですね。墨絵が趣味なので、墨の香りを感じながら絵を描いたり、映画を見てとことん笑ったり泣いたりすると気持ちがすっきりします。五感を使って好きなことに集中していると、嫌なことも忘れてしまいます。
 
―最後に、この対談を読んでいただいている女性へのメッセージをお願いします。
 
江島さん:私は、「花凛潤」(かりんじゅん)をモットーにしています。これは、私が長きに渡り尊敬している東京・銀座のサロンの経営者であり、唯一無二のスキンケアカウンセラーの先生の言葉です。意味は、「のように優しく、として本音で生きる強さを兼ね備え、全身に水が巡るようないのある人」。たった三文字に、豊かで美しい生き方が凝縮されています。
女性男性問わず、このような人が増えれば、良い社会になると思います。私はまだまだ未熟もので、なかなか思うようにはいかない毎日ですが、皆様とともに、「花凛潤」な人を目指して、ライフ&ワークの両面で、しなやかに成長できればと願います。
 


~インタビューを終えて~
一般職の客室乗務員から、手を挙げてグローバルスタッフ職の管理職になられた江島さん。大変なご苦労があったかと思われますが、お話の中から、大きな環境変化を、柔軟に能動的に受け止めて来られた姿勢を伺うことができました。
管理職になると、自分で決定することができます。自由度が増し、柔軟に仕事ができますよ、とおっしゃられた言葉に、私は思わず、そうですよね!と大きく頷きました。ぜひ、女性の皆さんに、臆することなくチャレンジをしていただきたいと思います。
江島さんは、職業由来なのか、座る姿も立ち姿も常に凛とされていて、こちらの背筋もぴんと伸びました。

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