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笑顔があふれるまちに~みんなが共に、生き生き暮らせる社会へ~広報なごや2月号

皆さんは普段の生活の中で、障害のある方と接する機会はどのくらいありますか? 
これまでほとんど接する機会がなかったり、職場で障害のある方が働いていたり、家族や親せきに障害のある方がいたりなど、さまざまかと思います。

身近に障害のある方がいない方は、当事者の皆さんがどのようなことに不便を感じ、どのような思いを抱え暮らしているか想像しづらいかもしれません。
 
今回は、障害のある当事者の方、また障害のある方を支えるご家族にお話をお聞きしたので、紹介したいと思います。
障害のある方に優しい対応は、障害のある方だけに優しいのでしょうか?実は、障害のない方にも優しい対応だったりするのではないでしょうか?

当事者の方のお話を聞いて、「障害者のことがわからないから」と遠ざけるのではなく、皆さんも“みんなが共に、生き生き暮らせる社会”とはどんな社会か、少しでも考えていただくきっかけになれば幸いです。

【当事者の方々のインタビュー】

名古屋手をつなぐ育成会「青年の会(本人の会)」の皆さんにお聞きしました。

左から牧野さん、梶さん、今井さん、松岡さん。皆さん知的障害があります。
(名古屋市公会堂にてインタビュー)

―公共の場所などで、困ったことや、いやな思いをしたことはありますか。

 牧野さん:販売の仕事をしているのですが、仕事場でお客さんに質問をされて、わからなくて困ったことがあります。

 梶さん:市バスや地下鉄の中でマスクをしていない人がいて、不安になりました。

 <職員補足>
知的障害の方は、言葉を素直に受け取る方が多く、自分たちはマスクしなさいと言われるのに、なぜマスクをしていない人がいるのかがよくわからないとのことです。 

今井さん:母と名古屋駅に行ったときに、地下道が複雑で迷ってしまい、パニックになりました。もっとわかりやすいように整備してほしいです。

今井さん、松岡さん

松岡さん:地下鉄に乗ったとき、スマートフォンを見ていて乗車口をふさいでいる人がいました。乗り降りするときに困ってしまいましたが、自分ではうまく話すことができないので、さらに困りました。

―障害のない人とのやりとりで、困ったことや、いやな思いをしたことはありますか。

 梶さん:周りの人から障害のない人だと思われることがあって、困っています。ヘルプマークはつけているのですが。 

今井さん:難しい話が理解できないので、何を言っているのか全くわからなくて困ったことがありました。できるだけわかりやすく、ゆっくり説明してほしいと思いました。周りの人から見たら、外見からは障害があることがわかりにくいので、理解してもらうのは難しいのかなとすごく不安に思いました。 

また、区役所に行ったときなどは、周りの声が大きくて集中できず、呼び出し音が聞こえなくて困ったことがあります。そんな時、職員の人が「お呼びですよ」と声を掛けてくれて助かりました。うれしかったです。

 今はヘルプマークを見てもらって、「あ、この人は障害があるんだな」とわかってもらえることもありますが、やっぱり一部の人にはまだ理解されていないのかなと感じています。

  ―コロナが流行するようになって、困ったことはありますか。 

生活パターンが崩れることにより不安を感じる
今井さん:コロナの影響で、職場の売り上げが下がって、半年くらい自宅待機になりました。不安ですし、ストレスが溜まっていくし、このままいったら解雇されるのかなと覚悟していました。今は再開して働けています。

<職員補足>
一部給料保証がある状態で、自宅待機になった方が多くみえます。この方たちは「職場に行かないといけない」と思っているので、生活パターンが崩れて精神的に不安定になったり、眠れなくなったり、体調を崩すこともあります。
今回、「自宅待機をしてください」と言われて、自宅を出ることもできず、お仕事もなく、それが長い期間続いたのでストレスに感じる方が多くいらっしゃったと思います。 


―コロナ禍やその他のときに、周りの人にどのように接してほしいですか。
 

梶さん:コロナ禍でストレスが溜まってイライラしている人が多かったからなのか、外出した際に冷たい目で見られたり、あいさつをしても返してもらえなかったりしました。あいさつを返してもらったり、普通に接してほしいです。

エレベーターに乗っているときに他人がいることで少し不安になり、うつむいてしまった時に「大丈夫ですか?」と声を掛けてもらい安心しました。困っているときにやさしく声を掛けてほしいです。 

バスに乗った時、焦ってしまって福祉特別乗車券を出そうと思っても、なかなか出せなかったことがありました。そんな時、運転士さんが「後でいいからね」と言ってくれました。慌てさせないで待ってくれると、落ち着いて行動ができてうれしいです。

買い物に出かけた時に、人が多くて商品を取れなかったときに、自分に代わって声を掛けてもらえました。困っているときに少し手伝ってもらえると嬉しいです。

牧野さん、梶さん

 ―その他、障害で困っている人が身近にいたら教えてください。 

梶さん:友だちから、会社で困っていると相談を受けました。ワクチンを打つ日だから休みたいのに、「だめだ」と言われたそうです。 

<職員補足>
休暇を申請したときに、冗談で「あなたの代わりに誰か働ける人を連れてきて」と言われたりしたようです。冗談で言ったのだけれども、本人は真に受けて、本気で「誰か代わりの人を連れてこないといけない」と思ってしまいます。素直に言葉通りに受け取ることがあります。


 今井さん:職場の実習に来た人が、手先の不器用な方だったので、私が先輩として面倒をみないといけないなと思い、様子をみています。やさしく教えてあげたら、その人からも職員からも「ありがとうございます」と言われて、コミュニケーションがうまくとれているのかなとうれしく感じました。 

<職員補足>
障害特性で手先がうまく使えない方もいらっしゃいますが、一般の会社でも作業所でも一生懸命頑張っています。  

【障害のある方の家族へのインタビュー】


 
―お名前と、お子様にどのような障害があるか教えてください。

名古屋手をつなぐ育成会副理事長の濱田 智恵実(はまだ ちえみ)です。
子どもは31歳になる知的障害のある自閉症です。0歳からてんかんの発作もあり、右手脚に軽い麻痺があります。

濱田さん(名古屋市公館にてインタビュー)


 
―生活する中で、公共の場所などでもう少し理解がほしいと感じたり、辛かったり悲しかったりした経験はありますか。
 
「障害のない子どもと違う」ことを不安に感じる日々
息子は、なかなか歩けるようにならなかったので、身体が大きいのにベビーカーに乗っていたり、言葉も話せなかったりで、じろじろ見られることがありました。
 
また、障害のない子は保育園に行けるのに、我が家は、子どもを受け入れてくれる保育園を探すのに苦労しました。
就学の時は障害のない子と同じように小学校へ行けないのが悲しかったです。「障害のない子どもと違う」ことを毎日不安に感じていました。
 
私の仕事を探す時も、子どものために言葉や身体の訓練に通うため、時間の調整ができる仕事を探さなければならず、自分の資格を生かせる仕事に就けなかったことがとても辛かったです。
友人は自由に仕事をしていることが羨ましかったです。
 
―障害のない方との普段の何気ないやり取りの中で、心の壁を感じたりすることはあるでしょうか。
 
「うちの子は障害のない子どもと違う」ということで、いつも心の壁があると感じていました。


 
―コロナ禍になり、人と人との距離が遠くなったり、さまざまな制約ができた中で、困難を感じることはあったでしょうか。
 
今までの生活を変えることができない
コロナ禍のためマスクをつけますが、息子はマスクをつけないといけないことが理解できず、苦しいとすぐに外してしまいます。また、仕事の帰りに寄り道をしないでまっすぐ帰らなければいけないことが理解できません(今までの生活を変えることができません)。
 
それから、これまで土曜日に利用していたガイドヘルパーの利用が制限されましたが、息子はなぜヘルパーが来ないのか理解できなかったようです。
 
また、知的障害者理解のために地域の防災訓練やふれあいサロン、区民まつりなどのイベントに参加したり、知的・発達障害擬似体験のキャラバン隊活動をしたりしていますが、コロナ禍でさまざまなものが中止となり、地域とのつながりが薄くなったように感じていました。
 
 
―お話しいただいたような場面で、市民の皆さんに配慮していただきたいことや、どのように接してもらえると嬉しいかなど教えてください。
 
日常のあいさつや何気ない声掛けが大変嬉しい
知的障害は、一見わかりにくい障害で一人ひとり特性が違うので、日ごろから「この人はどういう人なのかな?」と気に掛けていただけると嬉しいです。息子も障害のない中学生のように見られ、誤解されることがあります。
 
困っているようなときには「何か困っていることはありませんか?」と声を掛けていただけるとありがたいです。また、「おはよう」とか「お帰り」とか「いつもがんばってるね」とか、日常のあいさつや何気ない声掛けが大変嬉しいです。

  ―このほか、周りの障害のある方のお話などで、印象的だったことを教えてください。 
「電車の中で落ち着かない我が子に、知らない大人の方から“電車を降りろ”と言われて悲しかったです。」
「スイミングスクールに入れようとした時、“ほかのお母さんに迷惑になるから”と断られました。」
「子どもが小さいときに『この子は選ばれてあなたのところに来たのよ』と、いろいろな人から言われ、とっさに『選ばれたくなかった』と思ってしまいました。もちろん気を遣って言ってくださったことはわかっているのですが、心の隔たりを感じました。」
「トイレで同性介助の場合は良いですが、母親と息子や父親と娘のような異性介助の場合は、周りの人に異様な目で見られます。」
「知的障害のように『見えない障害』のことはわかりにくいですが、自然に避けられたりすると悲しいです」
これらの体験は、実際に周りの親御さんから聞いたお話です。

 一方で、このようなお話もお聞きしました。
「“アー”、”ウー”と言う我が子のことを“お兄ちゃんが一生懸命お話ししているのよ。”と保護者の方が子どもさんに説明してくれたことがあり、嬉しかったです。」

 障害者(児)を不思議な目で見るお子さんに対し、保護者の方が「関わったらダメよ。」ということがありますが、障害のない人と同じように接していただけると、子どもも偏見を持たずに育っていくと思います。

 障害のある人を理解してくださる方が一人でも増えて、普通に、またゆっくりとわかりやすい言葉で話していただけるようになると嬉しいと思います。

【インタビューを終えて】

障害のある人もない人もお互いに人格と個性を尊重し合いながら共に生きる地域社会の実現を目指して
今回は、知的障害のある当事者の方々やご家族の方のお話をお伺いしました。名古屋市では、「障害のある人もない人もお互いに人格と個性を尊重し合いながら共に生きる地域社会」の実現を目指しています。そのためには、まず障害のことについて、少しでも知っていただくことが大切であると考えています。

障害のことを知ると、障害のある方が何に困っているのかなど、具体的に考えることができ、その方に対してどのように接すればいいのか、戸惑うことも少なくなるのではないでしょうか。

笑顔で共に生きる社会のために、ぜひ障害について興味を持っていただけますと幸いです。


【名古屋市では障害のある方への理解を深めるため、次のことをおこなっています】

障害のある方について理解する動画やガイドブック
障害のある方がどんなことに困っているか、どんなサポートをしたらよいかを動画やガイドブックで紹介しています。
動画やガイドブックのページはこちら

障害者理解に関する講師派遣 
市民・事業者が、障害及び障害のある人への理解を深めるとともに、社会にある障壁(バリア)を取り除くための配慮やサポート方法等を学ぶことができるよう、障害のある人を含む講師を派遣し、講演や実体験を通じた学びの機会を提供しています。
障害者理解に関する講師派遣についてはこちら


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