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#なごやを歩こう有松エリア編

広報課の太田です。広報なごや11月号に掲載の「#なごやを歩こう 有松エリア編」で実際に有松の町並みを歩いた様子を紹介します。
今回は、紙面にもご登場いただいた有松あないびとの会・加藤 明美(かとう あけみ)さんが有松エリアを案内してくださり、緑区役所地域力推進室の平出さんと一緒に有松を巡りました。

有松・鳴海絞会館からスタート!

有松・鳴海絞会館

今回は、名鉄「有松」駅から徒歩5分の有松・鳴海絞会館からスタートします。
有松と言えば、絞り!ここは有松・鳴海絞の歴史やさまざまな絞りの手法を知ることができる施設です。
平出さんと合流し、絞会館に入ります。

緑区役所地域力推進室・平出さん

なんと、平出さんは絞りのポシェットとブラウスで来てくださいました。
ポシェットは雪花絞りという染め方で、白色のブラウスは絞りで形状記憶が施されたもの。染めていなくても絞りなんです。
古くから伝わる有松・鳴海絞ですが、現代らしくデザインされた商品もあり、若い方々にも親しまれているとのこと。とても似合っています!

中に入ると、1階では有松・鳴海絞の小物入れやハンカチなど、絞り製品を販売しています。これらの製品は手作業で絞られているのですべて一点もの!特別感がありますね。

絞会館1階の販売コーナー

資料室

続いては、2階にある資料室へ。絞りの歴史や技術について加藤さんの説明を聴きながら学びます。

絞会館2階の資料室。絞りに使われる道具や技法を紹介する資料が展示されている

いろんな種類の絞りが展示されており、どれもとても美しいのですが、平出さんのお気に入りはこちらです。

・合わせ縫絞り(網代文)

平出さん「編んであるようなデザインがとてもかわいいです!」
網代文(あじろもん)とは、竹や木を編んで作られる魚を捕る仕掛けをモチーフに作られた模様です。

合わせ縫絞り(網代文)

・嵐絞り
他にも、絞りの模様はさまざまで、使う道具も異なります。
例えば、嵐絞りは、かつては丸太に布を巻きつけ糸をかけて染め上げられていました。大きな設備と人手が必要な染め方で、大変な重労働だったそうです。

嵐絞り

加藤さん「同じ柄ばかりだと飽きられてしまうので、絞りが長く繁栄するように、さまざまな模様を作ってきたんです。そして、絞り職人たちはそれぞれ得意な柄を持っていて、複数人による分業で、いろんな模様が組み込まれた一枚の着物を仕上げることもあったんですよ。」

有松・鳴海絞は、分業により個々の作業を専門化することで、高度な技術を持つ専門家が多数誕生しました。
しかし、専門家が亡くなってしまうことで途絶えてしまった模様もあるとのこと。近年は、途絶えてしまった技法の復興が進められています。

加藤さん「絞りの模様の一つ一つにはストーリーがあるんですよ!思いをはせながら、さまざまな絞りを見学してみてくださいね。」

絞りの実演を見学

さらに、絞会館では、絞り職人さんたちがそれぞれの専門技術を実演しているところを見ることができます。
今回、見せてくださったのは「竜巻き絞り」の伝統工芸士 松岡 清子(まつおか きよこ)さん。松岡さんは、下書きはせずに手の感覚だけで布を折っていき、糸を巻き付けています。私たちに説明してくださりながらも手が休まることはなく、どんどん絞られていきます。圧巻の職人技です。

松岡 清子さん
竜巻き絞り

松岡さんの美しい絞り実演を見ていると、だんだんと挑戦したくなる方もいらっしゃると思います。
そんな方に朗報、絞会館では実際に絞りを体験することができます!
(絞り体験は有料・予約必要)

平出さん、絞りに挑戦!

今回は実際に、平出さんが絞りのハンカチ作りに挑戦します。先生は先ほど実演を見せてくださった松岡さんです。

一枚の布を絞り用の糸で縫っていき、糸を強く寄せることで絞ります。
まずは点線に沿って縫っていくのですが…

平出さん「めちゃめちゃ難しいです…!」

松岡さんのように素早く縫えず、苦戦する平出さん。
点線に沿って縫った後は、ぐっと寄せます。

まさに「絞って」いますね!
初めは大苦戦する平出さんの様子に不安を覚えた我々でしたが、
縫っているうちにコツを掴んだのか、どんどん作業が早くなっていきました。

体験を始めてから約1時間、絞りが完成!

この後は、絞会館の方にお預けして染色工場で染めていただきます。
絞ったところには染料が染み込まず、白い色のままなので美しい模様ができるんです。
染め色は自分で選ぶことができます。平出さんが選んだのは、緑区の緑色♪

後日、染められたハンカチが届きました。
鮮やかに染めていただきました!

有松・鳴海絞会館
休館日:年末年始、その他臨時休館日
料金:無料(資料室・実演見学は見学料必要)
開館時間:午前9:30~午後5:00(実演見学は午後4:30まで)

絞り体験
料金:1,800~5,500円
7日前までに予約必要

詳しくは有松・鳴海絞会館ホームページをご覧ください。

有松の町並みを歩いて満喫!

有松・鳴海絞会館をあとにした私たちは、有松の町並みを歩きました。有松は江戸時代には非常に多くの人が行き来していたと言われる東海道沿いにあり、当時ここを通る人々に特産品である絞り製品を売っていました。
当時の将軍・徳川綱吉が有松・鳴海絞を気に入り、絞りブームが到来!?有松には絞商の建物が立ち並ぶようになり、栄えていきました。

現在でも、その商店や家屋が残り、指定文化財として保護されているものもあります。

有松の町並みには「ありまつ」の暖簾(のれん)がたくさんある

そんな風情ある町並みを楽しみながら歩いていると…
加藤さん「有松を楽しむ方法は他にもあるんです。屋根瓦に注目してみてください。」

そう言われて家々の屋根を見上げてみると、さまざまな屋根瓦があったんです!絞会館の向かいの家には鬼、その隣の家には亀。

鬼瓦
鬼瓦(有松あないびとの会提供)
亀の瓦
亀の瓦((有松あないびとの会提供)

加藤さん「鬼には厄除けの意味が、亀には商売が万年続きますようにという意味が込められているんです。」

それぞれの商売方針が知れて面白い!と思いながら歩いていると、今度は鳥がついている家を見つけました。鳥ということは、遠方に絞り製品を販売しようとしたのかな?

鳥の瓦

加藤さんに鳥をつける意味を聞いてみると…
加藤さん「これは、ご当主が春を告げるツバメがお好きだったらしいです。」

そんな理由もあるんですね!笑

他にも、有松の建物の屋根の上には、魔除けの神様といわれる鐘馗様(しょうきさま)やうさぎなどもいます。ぜひ、屋根に注目しながら歩いてみてくださいね。

休憩にぴったり!加藤さんおすすめグルメ

絞り体験と町歩きで小腹がすいてきた一行。そんな私たちに、加藤さんがおすすめの有松グルメを紹介してくださいました!

六弦(ろくげん)とコットン

絞商の建物をリフォームした店内で、古いものを生かしたおしゃれな空間に引き込まれてしまいます。ピンク色が可愛い人気商品「ローゼルソーダ」に、アイスクリームをトッピングしていただきました。

ローゼルソーダ 650円 (+ アイスクリーム 150円)

平出さん「可愛い見た目に反して、とても爽やかな味わいです!シナモンのような、スパイシーな香りがします。」

店主の林さんにお聞きしたところ、平出さん大正解!
シナモン、鷹の爪、ジンジャー、八角などのスパイスが入っているとのことです。

他にも、店主の林さんが商品やお店についてお話ししてくださいました。
林さん「ローゼルソーダのシロップは、愛知県津島市のハーブ農家さんから仕入れています。このお店は、たくさんの方々にご協力いただいて運営している“みんなで作る空間”なんです。他にも…

この棚で、いろんな人たちのアート作品などを販売する場所を貸しています。お店の半分をアートギャラリーや講座会場として貸し出したりもしています。
私がこのようなアートに触れるカフェを作りたいと思ったのは、“有松で育ったこと”が関係しています。幼いころから絞りの芸術や絞り職人の技術から刺激を受けたことが、ものづくりへの興味になったんです。」

(左から)加藤さん、平出さん、店主の林さん

六弦とコットン
営業時間:午前11:00~午後5:00
定休日:水曜日

MARUKI(マルキ)

続いて、令和5年11月で開店1周年を迎えたMARUKIさんに訪れました。
気軽にふらっと立ち寄ることができるティースタンドです。

こちらでは、「抹茶」と「最中」をいただきました。

抹茶 450円~、 MARUKIの無添加最中 350円~

舌触りの良い抹茶は、休憩にぴったり!西尾産の無農薬の茶葉を使っているとのことで、体にも安心ですね。最中に入っている白いものはクリームチーズです。あんこのみの最中の注文も可能です。加藤さん、最中の美味しさに笑顔が溢れています。

加藤さんはこのお店が開店する前から出入りしているとのことで
店主の浅井さんはこうおっしゃっていました。

「お店の準備段階から、加藤さんをはじめとする地域の方々に“頑張ってね”、“楽しみにしてるね”と声をかけていただいて、地元の方々とのつながりを感じていました。そんな有松のほっこり感が大好きです。」

(左から)平出さん、店主の浅井さん、加藤さん

みなさんもぜひお立ち寄りいただき、有松のほっこり感を味わってみてくださいね。

MARUKI(マルキ)
営業時間:午前9:30~午後6:00
定休日:水曜日、第2・4火曜日

突然現れた写真スポット!

有松には小路(こうじ)と呼ばれる細い路地がたくさんあります。町並みを歩いていると、良い雰囲気の小路を見つけました。地元の方々でも、知る人ぞ知る写真スポットなんだそうです。

早速、写真を撮ってみると…

良い雰囲気の写真が撮れました!

私たちが写真を撮ったのは、河竹小路です。

有松を訪れた際にはぜひここで写真を撮ってみてはいかがでしょうか。
また、有松には他にも小路があるので写真スポットを探してみるのも楽しいですよ!

岡家住宅に到着!

そうこうしていると次の目的地である岡家住宅に到着!
ここはかつて絞商を営んでいた商家の家屋で、名古屋市指定文化財です。土曜日・日曜日は中を見学することができます。
火災防止のために2階の天井が低くなっていたり、電気がなかったために太陽光を取り込む明かり取りの天窓があったり、現代の建物とは構造が異なる、歴史ある建築物です。

2階の天井が低くなっている
明かり取り

それだけでなくところどころに絞商の名残を感じられます。

・軒が深い
絞りを販売していた建物は軒が深くなっています。それは、絞りを染める「藍」は日光に弱いから。商品に日光が当たらないように軒を深くしていたんです。

通常より、軒が深くなっている

・こしかけることができる
岡家住宅の中に入ってすぐの右側は、お店だった広い空間。畳張りで腰をかけられるようになっています。昔の人たちはここに座ってリラックスしながら、買い物を楽しんだのかもしれません。

昔の人を想像して真似する平出さん

平出さん「迷っちゃいます。どれにしようかなあー(笑)」

岡家住宅には、絞商の特徴がたくさん残っています。ぜひ、歴史に思いをはせながら見学してみてください。

岡家住宅
営業時間:土曜日・日曜日 午前10:30~午後3:30
料金:無料
詳しくはこちら

続いては、有松天満社に向かいます。

有松天満社へ向かう道で、加藤さんからクイズ!

有松巡りもいよいよ終盤にさしかかったところで、突然の加藤さんクイズ!

加藤さん「灯篭のふもとにあるこの岩は何のために置いてあるでしょう?」

縁石?休憩用の椅子?
私たちの回答はどちらも外れ。
皆さんはわかりますか?

正解はこちらです。

灯篭に火を灯すための踏み台なんです。
今は使われていませんが、昔はこうやって乗って火を灯していました。

東海道から、この灯篭がある交差点を北に進むと、
いよいよ有松天満社に到着です。

有松天満社

いよいよ最後の目的地、有松天満社に到着…と思いきや

目の前には長く続く階段が・・・まだまだゴールには程遠い。
頑張って上っていきます。

それにしても、ずらっと並ぶのぼり旗を見ると、あまりの美しさに疲れが吹き飛ぶような気がします。ちなみにこのたくさんののぼり旗、全て絞りなんです!

絞りで染められたのぼり旗

繊細な技術に感動していると、あっという間に到着です。

有松天満社(通常は門は閉まっています)

学問の神様とも呼ばれる菅原道真公が主祭神であり、
道真公ゆかりの鷽(うそ)や牛が祀られています。

鷽(うそ)
頭をなでるとご利益があるといわれている牛

続いて、社殿を見学させていただきました。
豪華な装飾が目を引く、壮麗な社殿です。

社殿(通常は非公開)

屋根の縁に注目してみてください。非常に細かい装飾が施されています。
絞りによって有松の町が繁栄した時代に施されたそうです。

また、有松天満社には、6社の末社が祀られています。
・津島社 建速須佐之男命(たけはやすさのおのみこと)
・神明社 天照大神(あまてらすおおみかみ)
・稲荷社 宇迦之御霊(うかのみたま)
・秋葉社 火之迦具土神(ひのかぐつちかみ)
・琴平社 大物主神(おおものぬしのかみ)
・御鍬社 金山彦之神(かなやまびこのかみ)

いろんな願いが叶いそうですが、
私は欲張ることなく、お願いはひとつだけにしておきました。

最後に

「#なごやを歩こう 有松エリア編」は有松天満社がゴール!ここまでお読みいただきありがとうございます。
歴史溢れる町・有松の魅力を感じていただけましたでしょうか。私は今回の取材を通して初めて有松を訪れたのですが、歴史的でありながらも生活感のある町並みや、伝統を大切にする心など、有松のほっこり感に惹かれました。皆さんにもぜひ足を運んでいただき、有松の温かさを感じていただけると嬉しいです。
有松の魅力的なスポットを見つけたら、SNSに「#なごやを歩こう」のタグ付けで投稿してくださいね!

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