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名古屋市役所で働いてみよう/事例:生活保護の担当から岩手県陸前高田市へ派遣、そしてスタートアップ支援室へ

名古屋市広報課の丸澤です。
以前に杉野副市長の記事を掲載したところ、市役所内外から「見たよ」と声をかけていただきました。「#うちの職員シリーズ」、これから本格化していこうかと思います。

杉野副市長の記事はこちらから↓

名古屋市役所に限らずだと思いますが、市役所職員は、様々な部署を経験します。

私も最初の配属が民間委託などを推進する行政改革の部署、次は議会や局内の人事・給与などを行う部署、その次が地域コミュニティ活性化などの地域振興の部署で、今は広報の部署と全く異なった部署に異動しています。

私は様々な部署を経験することで、広報で取り上げるテーマに困ったことはないですし、同じ部署の職員が経験した仕事の話を聞くことで仕事に役立つこともあったりします。
これだけ多くの仕事に携われるのは、様々なことを知れる良い仕組みと思っています。

今回のインタビュー相手はスタートアップ支援室という経済分野の仕事に就いていて、以前はケースワーカーや東日本大震災で被災にあった岩手県陸前高田市に派遣されていた職員、稲垣主査に市役所に入るきっかけや動機、最初の配属、派遣されていた時の話、そして今にどう活かされているかなどの話をイノベーターズガレージでインタビューしてきました。

001(ガレージ)

※イノベーターズガレージとは、、(令和元年広報なごや8月号より抜粋)
イノベーションのアイデアを生み出す場所として、会議室やオープンな作業スペースのほか、150人規模でセミナーやプレゼンテーションができる空間を備える新しい施設です。エリアごとに多目的な使い方ができるようデザインされています。
セミナーや交流会など、人材育成のためのさまざまなプログラムも用意しています。(利用するには、個人または法人としての会員登録(有料)が必要です。)


【自己紹介】


(―は丸澤が発言)
―自己紹介と簡単に今の仕事を教えてください。

稲垣:経済局スタートアップ支援室の稲垣です。
スタートアップ支援室は、スタートアップ企業の成長をサポートする業務を行なっています。例えば、スタートアップのビジネスモデル策定や販路拡大をサポートするプログラムの実施、大企業・中堅・中小企業との協業の促進、関係機関との繋ぎなど、企画から実施までを行なっています。


―稲垣さんは名古屋市役所で働こうと思った理由は?

稲垣:就職活動をしていく中で、民間企業も受けていたんですが、「まちをつくって売り込む」という意味で「まちづくり」って面白そうだなと思い、行政職に就きました。
「まちづくり」と言ってもインフラ整備・福祉・教育など様々な仕事がありますが、私は都市の活力を産み、成長エンジンとなる「産業振興」に携わりたいなと思っていました。


【最初の配属】


―最初の配属は?配属後、どう思いました?

稲垣:最初は区役所の民生子ども課で生活保護などの担当をしていました。
産業部門の仕事に就くかと思っていたら、異なる福祉部門の業務だったので、最初は予想外でした。
1年目は仕事を覚え、進めることに精一杯でした。2年目で自分なりのペースで仕事ができるようになってから、「もしかして、こういったことができるかも?」と思えるものが出てきました。

―どういったことをされたんですか?

稲垣:私や同期が母子世帯を多く担当していたこともあって、子ども向けの学習塾のようなものができないかと思い、当時の上司にA4の企画書を書いて提案させてもらいました。その後、タイミング良く、本庁で生活保護世帯向けの学習支援事業のモデル実施がスタートするという話になり、同期2人と一緒に区でのモデル実施に向けて色々と企画や準備をし、実施しました。
当時、生活保護世帯向けの学習支援事業は他の自治体でも始められつつあったことから、施策の検討材料にするために、同期と相談して、北海道から沖縄まで、照会できる自治体には全て照会をかけました。
自分たちで考えて、必要と思うことは準備・企画して、実行に移す。そういう経験を同じ志を持ったメンバーと進められたことは自分の中で大きな財産です(それを許してくれた上司にも感謝です)。

002稲垣さん単体

インタビュー対応中の稲垣主査


【東日本大震災の被災地である岩手県陸前高田市への派遣】


―稲垣さんは陸前高田市へ派遣されていたと思いますが、経緯などを教えてください。

稲垣:名古屋市役所には庁内公募という、専門性の高い業務や新規事業を行う所属へ、自分から手を挙げて応募することができる制度があります。
東日本大震災が発生した2011年に私は入庁し、それから3年経過して「少しでも陸前高田市の力になれるのであれば」という思いで、庁内公募に応募しました。

―派遣されてどんなことをされました?

稲垣:陸前高田市主催の産業まつりを担当していたのですが、祭をPRするチラシを大胆に変えてみました。有名な米崎りんごを強調した写真を撮り、地元の印刷会社の方と何度もやり取りしながら作りました。「インパクトがあったね」という声を聞く一方で、市民の方から「今年の産業まつりのチラシ入ってなかったような、、、」という問い合わせもあったとのことで、「デザインが良い」「インパクトがある」だけではなく、より多く地元の人たちに広まるためにはどうすれば良かったのかなど色々学びが多かったです。

003チラシ


―その他にはどういったことをされましたか?

稲垣:大学進学を機に陸前高田市から出た人たちに、少しでも陸前高田市にUターンしてもらえたらという思いがあり、地元企業で楽しく・やりがいを持って働いている若手の人をインタビューして記事にする試みもやってみました。

―派遣された1年間を思い返すといかがでしたか?

稲垣:「まち」の復興を行政職員として携わる、その過程や意義を体感した1年でした。(私が派遣された)被災後4年目の段階で、復興と同時に産業や観光の振興、まちづくりのために行政が何をしていくべきなのか、行政の仕事の原点を自分なりに考えた1年でもあったと思います。
また、同じ想いを持って名古屋から陸前高田に派遣されたメンバーとは正に「同じ釜の飯を食った」間柄であり、良き同志と巡り会えたのはとても良かったです。

004陸前高田

陸前高田市・広田湾を眺める稲垣主査


【交流】


―私が最初に稲垣さんに会ったのは、職員が時間外に自主的に研修を行う場、オープンサロンだったと思いますが、どういった経緯で参加したんですか?

稲垣:たしか、オープンサロンでやったら面白いかもなっていう企画を持ち込んだら、「君がやりなさい」って流れでした(笑)
デザインの企画だったんですが、参加した職員の皆さんから好評で、確か2回開催したと思います。
面白そうだからやってみるというのも、時間外研修だったら挑戦しやすいし、例え失敗と思えるようなものも、良い経験をしたと思えるんで、良い場かなと思います。



―オープンサロン以降、イベントなどに行くと稲垣さんに会ったり、いない場合でも「名古屋市役所の稲垣さん知ってますよ。」という話で初めて会った方と盛り上がったりします。稲垣さんは市役所内外で様々な交流をされていて、仕事に活かされているイメージがありますが、実際いかがですか?

稲垣:そうですね。産業振興の仕事に就きたての頃は、企業の課題をヒアリングするためにいろんな企業に訪問したり、交流会で経営者の方に話を聞いたりしましたね。
ハッカソンイベント※を予算要求する前に、企業の若手や大学生が多く参加するワカサミというハッカソンイベントに自ら参加したら、丸澤さんもいましたね(笑)そこでデザイン思考を学んだり、社会・地域課題に対して企業と行政の連携をどうすれば上手くつなげられるかなど多くを学び、実際に学んだエッセンスが仕事に入っていたりします。
また、ライフワークとして、毎年ゴールデンウィークとお盆には、名古屋城や名古屋港の、陸前高田市のブースで広田湾産のホタテを焼いて、特産物のPRを手伝ったりしています。

【ぼかし有】005ホタテを焼く

陸前高田市の職員らとホタテを焼く稲垣主査 写真左
※ハッカソンとは
数日程度の短期間で創出されるアイデアを元に集中的にプログラムやプロダクト開発などの共同作業をチームで行い、その技能やアイデアを競う


【名古屋市役所の職員を目指す学生へ】


―これから名古屋市役所の職員を目指す学生の方へメッセージを。

稲垣:今は入庁前に希望していた部署で様々な取り組みをさせてもらっていますが、区役所や陸前高田市での挑戦や失敗した経験が全て今に活きていると思っています。どの部署に配属されても、「まちを良くする」という大きな目的の上では同じ仕事なので、ひとまず前向きに仕事に取り組んでみるのが良いと思います。それから、小さなことで構わないので行動してみると良いと思います。私も思い返してみると、思い付いたアイデアをふと口に出してみたとか、ちょっとしたイベントに出かけた先で出会いがあったり、わずかな行動がその後の仕事の世界を広げるきっかけになっていた、なんてことが多くあります。
また、どんな部署の仕事にも、行政として「やるべき」ことと、「やりがい」が必ずあると思います。与えられた仕事をやるというスタンスではなく、自分たちの部署の仕事は何を目標にやっているのか常に意識し、今の時代に求められている施策を考え、現場を動かしていくことが大切だと思います。

【最後に】


稲垣主査はイベントでパネリストとして参加されたり、大学で話をされたり、インタビュー記事が掲載されたりと、名古屋市役所の中でも活躍されている職員の印象があります。
今回、インタビューを通して「どの職場でも挑戦する」という印象が強く残りました。

区役所時代の上司や同期、陸前高田市職員、時間外活動で出会った人たちなど、「挑戦する」には、周囲の理解・協力も必要です。
偶然の出会いではなく、挑戦して来たからこその周囲の理解・協力だと思えました。

名古屋市職員には、面白くて、素敵な職員はまだまだいるので、これからも記事を書いていきます。