一人一人に寄り添う立ち直り支援   ~広報なごや4月号
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一人一人に寄り添う立ち直り支援   ~広報なごや4月号

名古屋市公式note

広報なごや4月号で特集した「一人一人に寄り添う立ち直り支援」。今回ご登場いただいた、協力雇用主の木村さん、保護司の吉田さん(以下敬称略)のインタビューを紹介させていただきます。

インタビューは、市職員(スポーツ市民局地域安全推進課、市長室広報課)が実施。市職員発言は、以下―と記載。

【協力雇用主  豊榮工業株式会社 木村社長インタビュー】

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―いつ頃から犯罪をした方(以下:対象者と記載)を雇用したり、支援などを始められたのでしょうか?

木村:自分が仕事をするようになってから、その時点でいました。最初は怖かった。見た目も怖いし、一緒に仕事することが怖かった。でも、実際に仕事すると全然違います。本当に真面目で、手抜きもせず一生懸命やります。それで、(先代からは)「その人たちに負けるな」と言われて、現場に送り出されていました。

―今まで受け入れられてきた対象者の方について教えてください。

木村:今現在10人くらいいます。社員が15人くらいの会社なので、3分の2は対象者。延べ人数でいうと何千人という人。期間は、短くて3日。長いと10~15年くらいで、さまざまです。(保護観察期間の)満期まで仕事して、自分たちの故郷に帰るとか、元の仕事に戻るとか、家族のもとに帰るとか、そういう人たちもいます。定年になって引退した人も結構います。年齢は、一番若くて20代。20代~60代まで、さまざまな年代の人がいます。

―今までたくさんの方を受け入れてきた中で、対象者の方たちはどんな問題や悩みを抱えているんでしょうか?社長から見ていて記憶に残っていることはありますか?

木村:あります。うちの会社から、現場に人を派遣していたとき、現場の従業員が、「お前、何をやって(刑務所に)入ったんだ?」と聞くときがあった。自分は、最初に対象者と面接をするときに、「過去に何をやっていても、今は何もやってないので、何も言うなよ。うちの会社はゼロからスタートだから、そういうこと聞かれても言うなよ。」と言っているんですが、しつこく聞かれてしゃべってしまった。

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すると、その会社の従業員同士が「あいつはこんな罪を犯した。」と言いふらし、対象者が嫌な思いをすることがあった。自分は頭にきて、その会社に乗り込んでいって、「うちはこういう会社だけど、なんか悪いことしたのか?これから一生懸命頑張る人を手助けしているのに、悪いことしたのか?」という感じで。

その会社の社長もいい人で、「そんなことない。明日の朝、みんなを集めて話をする。」と、そんなふうに言っていただきました。一つ間違えば、乗り込んでいけば、(仕事を)断られるのも仕方がないけれど、まだその会社とは付き合いがあります。むしろ、よく見てもらっています。
本人たちは、すごく苦しいですよね。社会に出てまでそんな風に言われたら。


―対象者の方を受け入れるにあたって、最初はなかなか心を開いてくれないとか、傷つきやすいとか、いろいろ課題を持たれている方もいると思いますが、そういうことはありますか?

木村:面接のときは、こっちも不安があるけど、相手も不安がある。ここの会社へ来るということは、自分以外誰も知らない人ばかり。まずは、「そういうことないよ」という雰囲気をみんなで作ってやろうかなぁと。面接が始まると、対象者の口からは、不安そうなことばかり出てきますよね。やったことがない仕事をやるとか。だけど「うちは大丈夫だよ」とか、「元対象者の人がたくさんいるよ。」とか。「自分だけじゃない」という環境があることを最初の面接のときに伝えます。
そして、「もし働いていて、嫌なことがあったりしたら、いつでも話してくれ。相談に乗るから。」と伝えています。

―それだけ仕事面で面倒を見ていくと、私生活の相談があったりしますか?

木村:ないです。ただ、他の長い間働いている社員の元に相談に来て、そこから自分の耳に入るということはありますが。そういう場合は、「その人と相談してこうしたらよいのでは。」という感じで言います。
社長という立場の人に話しかけにくい雰囲気があるのかも。ささいなことだったらなおさら。一目置かれているのか。軽く見られているのか。(笑)

―ただそうやって、仕事じゃなくても私生活も頼れる人が会社の中にいる環境を作られている感じがしますね。

木村:なっちゃったんでしょうね。自分は頼りないもので(笑)

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―昔一緒に悪さをした人から、声を掛けられそうになったりすることはあるんでしょうか?

木村:それもあります。だけど、そのとき本人が戻りたくないという意思があれば、相談してきます。そうしたら、「(会社を)辞めた」とかウソついて、徹底的に連絡を取らせない。相手はしつこいですけどね。

―社長が自ら(対象者を)守るわけですね。

木村:もうそこでいいところを見せないと、あといいところないですもん(笑)。本人に「もう一回罪を犯して、(刑務所に)入りたい?」と聞いたことがあります。すると本人は、「もう二度と戻りたくない」と。「じゃあ、その気持ち大事にしろよ」と。

―社長みたいに信じてくれる人がいることが大事ですね。

木村:本人たちも厳しい仕事の中で、現場で本当に頑張っていると思う。現場からもお褒めの言葉とか、「またあいつ連れてきてくれ」とかそういう話はあります。認めてくれる人がいないとだめです。

―最初に社長がもう長年何人も雇用されているので全く怖いこともないとおっしゃっていましたが、知らないことが、不安だとか対象者への偏見みたいなところにつながってしまうと思いますが、地域社会や住民の方にどういうことを知ってもらいたいですか?

木村:一番言いたいことは、罪を犯した過去は取り戻せません。捕まって出てきた人は、今から未来をつかもうとしています。だからもうちょっと温かい目で見てほしい。雇用主も怖がって雇うのではなくて、これからの未来を手伝ってやるという考え方でいてくれるといいと思います。怖がって対応すると、向こうにも怖がられる。うまくいかない。

そして、なにかトラブルになったら守ってやるということ。それが大事。そこはもう対象者だろうがなかろうが変わらない。罪を犯した人だからと言って、また変な目で見るのもやめてほしい。普通の人という目で見てほしい。チャンスを与えるという考え方じゃなくて、一般の人が就職してきたようなそんな考え方で接してほしい。もっともっとチャンスを作れる場所が多い社会になっていってほしいです。


【保護司 吉田沢惠さんインタビュー】

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―保護司としての活動期間やどんなことをされるのか教えてください。

吉田:保護司になって15年。今年で16年目になります。多いときは同時に3人くらい。年にだいたい2、3人くらいの方を担当しています。生活環境の調整といって、刑務所や少年院に入っている人の家族などに対して、彼らが戻ってきたときの受け入れ環境や住む場所などについて調査・調整をすることがあります。刑務所や少年院へ面会に行くこともあります。出所後は、月に2回程度面接があり、報告書にまとめて提出をしています。

―刑務所から出てこられた方は、出所後どんな壁に行き当たったり、悩みが出てくるんでしょうか?

吉田:やはり長く社会と断絶したところにいると、出所後に適応できるか心配だと思うんですね。まず仕事があるか。刑務所の中でも就労支援はありますが、なかなか出所後の就労につながらない方もいらっしゃいます。

引受人が家族であっても、いろいろ再犯を繰り返していると、「またやるんじゃないか。」といった葛藤があって、家族関係が難しいというのは、何回も思いましたね。非行少年の中にも、家族関係がうまくいっていない、例えば親が反社会的な人であったり、育児放棄をされていたことがあったり、家庭内暴力があったりといった過去を抱えている人が多いと思います。

―面接のときはどのようなことを心掛けているのでしょうか?

吉田: 私の中ではまず話を聞いてあげることを心掛けています。人は話をすると、問題を整理して考えられることがあります。自分で話したことにより、考えをまとめられることがあると思いますので、特に傾聴に気をつけています。

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吉田さんのお話を聞く市職員

―話を聞くのが大切ということですが、どんな声掛けをしたり、どんな話題を聞くようにしているんでしょうか?

吉田:まず、最近何していたとか、職場の仕事はどんな感じかとか。そして、面接を覚えていてくれたこと、時間を守ってくれたことについて、ありがとうと伝えています。

中には、電話をかけても出ない方、携帯を落としたとか、壊れていたと話す方、面接の約束を守らない方もいます。嘘をついていれば、目を私と合わせません。でも絶対に否定はしない。「壊れていたの、大変だったね。」「寝ちゃっていたの、次のときは、私が前もって連絡してあげるからね」と。明らかに嘘をついていると思っていてもそこで嘘だとは言わない。そうしたい背景があるのではと考えるからです。次のときは、今まで頑張ってきたから頑張ろうねと伝えています。

―信頼関係が築かれ、うまくいったケースなどありますか?

吉田:そうですね。打ち解けてくると、「吉田さんちょっと聞いて」といって、夜中に電話があったりとか、一時間くらいずっと電話がかかってきたりということもありました。

信頼関係ができると、話をしてくれるので、ある人からはパソコンの操作を学んでみたいということを聞き、話を聞きながらアドバイスをしたところ、実際に講習を受けに行きました。そのあと、医療事務を学びたいと言うので、話を聞きながらアドバイスをしたところ、資格を取得することができました。結局、希望していた医療事務の仕事にはなかなか就けなかったんですが、アルバイトから、事務の仕事に就くことができました。話をできる関係になると、話の中で解決方法が見つかっていくんだと思います。

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―一方で、なかなかうまくいかない方もいると思いますが、どう導いていかれるんでしょうか?

吉田:とにかく話を聞く。「これから先どうしていきたいの?」という話もします。そうすると、結構高い望みを答えるんですよね。そうではなくて、まず身近にできること、ちょっと頑張ったらできることの目標を考えて、まずはやってみる。そこまでできたら、次の目標まで行こうという話はしています。ご家族にも、まずこれがやれたら、ここまでできたという風に認めていきましょうよという話はします。なかなか難しいですけどね。

―保護司さんにしか、打ち明けられないこともあるのではないでしょうか?

吉田:家族では話ができないけれど、赤の他人だから話ができることってありますよね。私はそこで、家族に話ができなかったら、おばちゃんでいいよ。吉田さんに話してね。ということは、面接のとき話をするようにしています。

家族との関係に問題を抱えている場合は、本人の了解を得て家族とも話をすることはあります。本人が思っていることを伝えたり、家族が思っていることを本人に伝えたり。全部がうまく解決するわけではないけど、橋渡しをしています。行政のサポートにつなぐこともありますよ。

―対象者の皆さんと真摯に向き合っていくというときに、どこかで信じきれなかったりとか、変な目で見てしまったりという思いが出てくることはないのでしょうか。吉田さんの信じる力は、どこからきているとご自身で思われますか?

吉田:信じられないということはないです。刑務所に入ったとか、保護観察を受けたということを、今は「ばかなことやっちゃった」と思うかもしれません。ただ、あのとき刑務所に入ったけれども、そこで刑に服し、学んできたのだから、次に嫌なことがあったとしても、刑務所に二度と戻らないように、がんばろうと考えられると思うのです。
年を重ねるうちに、あの時刑務所に入っていたから今があるんだと。勉強になったと思おうね。思えるように進んでいこうねと伝えています。未来を描けるから信じていけるのかもしれません。

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―お二人のお話をお聞きして、犯罪や非行から立ち直るためには、本人の努 力も大事ですが、私たちも偏見を持たずに接することも重要だと感じました。

誰もが犯罪の被害者や加害者になることなく安心・安全に暮らすことのできる社会を実現するため、地域で見守り支える環境づくりにご協力いただけると幸いです。

名古屋市では、「再犯防止推進法」を踏まえ、「名古屋市再犯防止推進計画」を策定し、再犯防止対策を総合的に進めていきます。
詳しくは
名古屋市公式ウェブサイトをご覧ください。

法務省再犯防止公式noteでも、再犯防止について紹介しています。


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