人とペットの共生するまちなごやを目指して 動物愛護センターの取り組み
名古屋市広報課の伊藤です。
「1235」
これが何の数字か分かりますか?
広報なごや9月号でも取り上げていますが、令和2年度に名古屋市動物愛護センターが保護した犬猫が「1235頭」にもなります。
令和2年度の犬の殺処分は「0」でした。
悲しいことですが、病気等やむを得ない理由で「63頭」の猫が殺処分されています。
動物愛護センターでは、1頭でも多くの犬猫の命を救うため、新たな飼主と出会えるまでの間、ミルクが必要な子猫のきめ細やかな世話、犬の噛みつきなどの問題行動を改善するトレーニングや病気の治療に精一杯取り組んでいます。
「犬・猫の譲渡を受けて育ててみたい」という方や、そもそも「どうやって譲渡されるんだろうか?」「費用はどのくらいかかるのだろうか?」など色々と疑問を抱えている方もいると思うので、今回は、動物愛護センターの新美さんに実際に譲渡を希望するにあたっての流れや動物愛護センターの役割・活動などをお伺いしました。
譲渡を希望する場合の流れ
(―は伊藤が発言)
―具体的にどのような流れで譲渡を受けることができるのでしょうか?
新美さん:当センターからの譲渡は、生命尊重の取り組みに賛同し、地域の模範となる飼主を育成することを目的としているため、飼主になるための要件に適合し、遵守事項を守っていただくことが必要です。
犬の場合は収容頭数が少なくなり、希望する犬が収容されるまで何年お待ち頂くか分からない状況となったため、現在は一般の方へ直接譲渡することはほとんど行っていません。限られた収容スペースで殺処分ゼロを維持するため、咬む犬や、治療が必要な犬を動物愛護センターで長期間飼養し、時間をかけて譲渡につなげています。子犬の収容はほぼ無いです。比較的譲渡しやすい犬は、譲渡ボランティアへ託し、新たな家族への譲渡に協力して頂いています。
猫の場合は、子猫と成猫とで流れが異なりますが、どちらも譲渡の際に必要な費用は、マイクロチップ装着手数料の3,400円です。
子猫は予め譲渡申込書を提出して頂き、お待ちいただくことが多いです。譲渡の際には数頭の子猫の中から選んで頂き、その日に正式譲渡となりますので、来所前に猫の飼養に必要なものを全て整えてください。
成猫は当センターに来所いただいた際に譲渡を希望する猫がいたら、譲渡申込書を提出し、トライアル(お試し飼養)1~2週間を経て、正式譲渡となります。トライアル期間中のフードは当センターでご用意し、猫のケージの貸出しを行っています。トライアル開始までに、キャリーケース、食器・トイレをご準備ください。
―犬や猫を飼うと、年間でどのくらいの費用がかかるのでしょうか?
新美さん:犬は年間約30万円、猫は約16万円と言われています。
―飼うにあたって注意する点などはありますでしょうか?
新美さん:いくつかありますが、毎日きちんと世話ができるかどうか、きちんとしつけができるかどうか、もしも飼えなくなったときに代わりに世話をしてくれる人がいるかどうかなど、最期まで責任を持って飼えるか、飼う前によく考えていただければと思います。
動物愛護センターの仕事
―動物愛護センターでは、どんな活動を行っていますか?
新美さん:当センターでは、犬の捕獲や、犬猫の引き取り、返還、譲渡、動物取扱業や特定動物に関する業務、動物愛護と適正飼養を普及啓発するための教室・イベントなどを開催しています。
―具体的な1日の流れを教えてください
新美さん:当センターは管理指導係と愛護企画係に分かれており、私の所属する愛護企画係の主な業務内容は、収容動物の健康管理・譲渡事業・動物愛護と適性飼養の普及啓発などです。
朝夕は、収容動物の健康チェックと治療を行い、日中は譲渡希望の方への対応、しつけ方教室、収容動物の管理などを行っています。保護収容した犬猫は、環境が変化したことで体調を崩しやすいので健康状態を整え、また、人に慣れていない場合は人馴れトレーニングを行い、新たな家族へ譲渡できるようにしています。
―動物愛護センターでは、迷子の犬や何らかの事情で飼えなくなった犬や猫などが多く収容されているかと思いますが、どうしてこれだけ保護する件数が多くなってしまうのでしょうか?
新美さん:犬の収容は、迷子が88頭と多いですが、猫の収容は、自らの力で生活できない子猫が733頭と多く、やむを得ない理由により飼えなくなった引き取りが244頭と続きます。猫の引き取り理由は、避妊去勢手術をせずに飼養し頭数が増えてしまい世話が出来なくなった、飼い主が病気・亡くなってしまったことによるものが多いです。
動物愛護のため、私たちにできること
―事情や環境によっては、保護された動物を飼いたくてもなかなか飼うことができないという方もみえると思いますが、直接、犬や猫を飼うという選択肢以外に、動物愛護のため、身近でできることはありますか?
新美さん:いろいろな事情や環境もあるため、実際に飼うのは中々ハードルが高いと思います。飼うという選択肢以外でも、保護犬猫の存在を知って頂き、広めて頂くことは大きな力となります。
また、名古屋市では、保護している犬猫をサポートするため、令和3年11月1日から90日間限定でふるさと納税窓口サイトの「ふるさとチョイス」にて、ガバメントクラウドファンディング®による寄附金募集を行っておりましたが、多くの方の温かいご支援とご協力もあり、早くも11月22日時点で、目標金額の1000万円の寄附金額を達成することができました。
現時点でガバメントクラウドファンディング®による寄附金の募集は終了していますが、皆さまの心のこもったご寄附は、大変励みになり、感謝の気持ちでいっぱいです。
ガバメントクラウドファンディング®による寄附金募集は終了しましたが、ふるさと納税制度の仕組みを活用した「目指せ殺処分ゼロ!犬猫サポート寄附金」の募集は、一年中実施していますので、もし応援していただける方がみえましたら、ご協力いただけると嬉しく思います。
―この寄附金などは、どのような用途に使われるのでしょうか?
新美さん:この寄附金は、保護収容期間中のフード・薬品などの購入費、譲渡ボランティアへの支援、のら猫の避妊去勢手術や譲渡会の開催など犬猫の命を救う取り組みに活用されています。
最後に
今回取材を通して、改めて「命とは何か」「動物愛護とは何か」を考えさせられました。
最近では、動物をペットとして飼う方が増えていますが、一方で多くの犬猫が動物愛護センターに持ち込まれたり、迷子になって収容されている現実が残念ながらあります。
そんな保護収容される動物たちに対して、動物愛護センターの職員はもちろん、譲渡ボランティアさんなどの多大なるご尽力とご協力があって、動物たちが少しでも幸せに暮らしていけるような環境作りや各種支援が行われていますが、殺処分ゼロに向けた取り組みを進めるためには、行政の力だけではなく、様々な立場の方のご協力とご理解が必要なんだと感じました。
例えば、保護犬猫を家族として迎えいれることは直接的な支援になりますが、環境や事情等によっては、それが叶わない方もみえるかと思います。そんな場合でも保護犬猫の存在を知っていただく方が一人でも増えること、さらに、どうしたら保護犬猫が減るのか少し立ち止まって考えていくことが間接的な支援につながります。
人間が動物といつまでもより良い関係で暮らしていけるように、私たちに何ができるのか?何をすればいいのか?を私自身も考えていきたいと思いました。
そして最終的な理想は、動物愛護センターに保護収容される動物がいなくなり、すべての命が救える社会となることが1番幸せなことです。人と動物が互いに支え合い楽しく共生できる社会の実現のため、引き続き、動物愛護センターの取り組みを応援していきたいと思います。
皆さんも動物愛護センターに立ち寄っていただき、少しでも動物愛護センターの活動を知っていただければ嬉しく思います。動物愛護センターには魅力ある猫たちもたくさんいますので、もし機会があれば、一度気軽に足を運んでみてください。