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なごやのチカラ/のびのび子育てサポートの活動をクローズアップ~広報なごや9月号~

広報課の小川です。今回広報なごやシリーズ「なごやのチカラ」で取り上げたのは、のびのび子育てサポートの提供会員さん。行政と共に名古屋を支える人、行政で働く人をクローズアップし、名古屋のチカラの源を紹介します。

のびのび子育てサポートとは…
子育てのお手伝いをしたい人(提供会員)が、手助けをしてほしい人(依頼会員)に対して、保育所・学校への送迎や預かりなどの支援を行う事業。
会員登録を行った上で、依頼会員が利用したいときに依頼し、支援できる提供会員が見つかれば預かり・送迎を行う。
提供会員は有償ボランティア。提供会員と依頼会員の間で話し合いができれば、実費で食事の提供もしている。 

のびのび子育てサポートの詳細はこちら

 ご協力いただいたのは、のびのび子育てサポート提供会員の山下冴子(やましたさえこ)さん。
共働き家庭やひとり親家庭などのお子さんたちを、学童や児童館、トワイライトスクールなどでカバーしきれない時間帯に、自宅で預かっています。

  
(-は以下小川が発言、回答は全て山下さん)
 
 
―いつ頃から活動をされているのでしょうか。
平成16年からのびのび子育てサポート提供会員として活動しています。現在82歳。65歳から活動を始めたので、そろそろ18年近く活動をしていることになります。今まで、単発でお預かりする方を除いて、だいたい60人くらいの子どもたちを預かってきました。
 
 
―もともと、のびのび子育てサポート提供会員をやってみようと思ったのは、何がきっかけだったのでしょうか?
 
60歳頃までは全く異なる仕事をしていたのですが、仕事をやめたのを機に、自分が何をしていきたいのか考えた時期がありました。
わたしは、もともと子どもが好きだったので、民間のベビーシッター講座を受け、シッターとして活動できる証明をいただき、ベビーシッターの宣伝活動を児童館などでしていました。
その時の児童館の館長にのびのび子育てサポートの存在を教えてもらい、講習があるからどうかと声をかけていただいたことがきっかけです。
 
 
―具体的にはどういった活動をされているのでしょうか。
現在預かっている家庭は3家庭。
1つ目のご家庭は、7カ月の赤ちゃんだった頃から預かっており、現在小学4年生になりました。その間、妹も生まれ今は姉妹でお預かりしています。
 
2つ目のご家庭は、小学4年生の男の子。親御さんの出勤が早く、土曜日の朝早く7:30頃うちに来て、児童館が開く9:00頃児童館へ送って行って活動終了となります。
 
3つ目のご家庭は、小学3年生の女の子。週2~3回、1カ月前からお預かりしています。トワイライトスクールまでお迎えに行って、お父さんがお迎えに来るまでお預かりしています。

 
預かる際は、のびのび子育てサポートの支部から紹介を受け、一度打合せをしてお預かりすることになります。わたしは、もともと子どもが好きだし、働いていて他に予定が入るということもないので、基本的に断るということはしません。18年近くもやっているから、ボランティアですけれど、これが私の仕事。大きな支えですよね。
 
お預かりする子の中には、成長に偏りがあるという子もいますが、今の時代そういう子は多い。誰しも個性がいろいろあるので、固定観念は持ちたくない。実際にその子と接してみたら、どのような子かわかるので問題ないと思っています。
 
 
―のびのび子育てサポートは、どういった場面で利用されることが多いのでしょうか。リフレッシュ目的でも使っていいという案内も出ていますが?
 
 
私がお預かりしてきた子は、単発は少ないです。何カ月にもわたりリピートして利用されることが多く、働くためにどこか預け先を探しているという方が多かったです。親御さんが共に働いている方が多いという印象です。
 
初めて預かったお子さんは、外国籍のお父さんと日本人のお母さんを持つお子さんです。お母さんが一生懸命働いて苦労されていて、とても長い時間預かることもありました。その時は大変だったけれど、今は高校を卒業し、「大きくなったね」とお母さんと振り返ったりしています。今でもいろいろな親御さんから毎年年賀状をいただいたりするんですよ。
 
 
―お子さんと関わる中で、決まってどう接しようとか、自分のスタイルとか、とっておきの技や小道具はお持ちですか?
 
押し入れの中の半分は、子どもの遊び道具が入っています。子どもたちがその中から好きなものを出して遊ぶ。自分自身の物は断捨離をして何もないんですけれど、赤ちゃんが座るチェアなんかも用意しています。子どもたちに、「これで遊んでいいよ」というと、自分たちでどんどん遊びます。だから自分のスタイルとか、そういったものはないです。特に的を外れた子とか、手がかかる子とかはいないです。みんないい子たちばかりですよ。


 
―子育てを経験している小川からすると手が掛からないなんて…本当か?と思ってしまいます。「ママに会いたい」と泣いたり、わがままを言ったりする子はいないのでしょうか?
 
もちろん、子どもたちの中には気持ちを前面に出す子もいますよ。「ママー」と言って、玄関で40分間大きな声で泣き続けた子もいました。隣の人に迷惑になっているな…と頭を抱えたものですが、そういう時でも、一緒に遊んでいたら慣れてくるというか、諦めるというか、子どもは時間になると眠くなりますから。「寝る時間だよ」といって眠る体勢をとると、時間になるとスーッと寝ていく。
 
―遅い時間まで預かることはよくあるのでしょうか?
印象深かったので話をしましたけど、このケースは特別です。親御さんのお仕事の都合上、勤務時間があってないようなお仕事をされていたので、夜中になったこともありました。通常だと、お勤めが終わったあとだいたい午後7:30頃にお迎えに来ることが多いです。
 
 
―今まで何人ものお子さんを預かってこられたわけですが、この活動でやりがいを感じることやうれしいエピソードはありますか?
 
お子さんを預かっている時間は、ただただその子のペースに合わせながら、親御さんが迎えにくるまでやっている。ただ、今健康を保っていられるのは、ウオーキングもしているけれど、やっぱり子どもたちと接してきたお陰さまだと思います。
だから、私は倒れるまでやりたいと思っている。やっぱり子どもが好き。子どもからパワーをもらえる。それはすごく感じます。
 
 
預けられる子どもたちもいろいろな感情を抱えてやってくる。
 
ある男の子でこんなことがありました。親御さんに送られてうちまで来た際、「〇〇ちゃん、おはよう」とあいさつすると、何も答えない。その割に、親御さんとはハグ。ハイタッチ。なかなか離れたくない。こういったパターンは男の子に多い気がします。親御さんが「(山下さんに)おはようって言いなさい」と言って促すんですが、言わない。
 
ほかにも同じパターンの子が数人いて、わかったんです。
子どもたちは親御さんと別れるのが嫌。私と挨拶をするということは、私を受け入れて、親御さんと離れなくてはいけないわけです。
だから、わたしは「おはようって、言わなくていいよ。だって、〇〇くんの心境がわかったから」と言ってあげました。すると、「ニコッ」として私の方を向いてくれました。子どもってそういうところある。微妙なニュアンスがわかるんです。

ある女の子は、お父さんが迎えに来るのを待っている。何ともやるせない顔をして。「あと何分でお父さん来る?」と聞くので、タイマーを持ってきてあと“〇分”とセットしてあげます。
その子の好きな夕飯をあらかじめ聞いておき、作って一緒に食べるのですが、「一緒に食べる?」と聞くと、「一緒に食べる」と言うので二人分用意する。
それなのに、私が食べ終わるのを待っている。私が食べ終わると、やっと食べ始める。親と区別をしているのね。食べ始めてもタイマーを見ている。


そんな姿を見ていると、お父さんが少しでも早く来てほしいという気持ちが痛いほどわかります。彼女の「お父さんを待っている時間」にとって、「私という存在が邪魔」という感じ。
最初のうちはそんな状況だったのですが、夕飯の後、彼女の好きな遊びに付き合うようになったんです。そうしたら、早く夕飯を終わらせて遊ぶようになった。そのうち、遊びの途中にお父さんが迎えに来ると、「今日はまだ帰らない」とか、「もう少しおばあちゃんの家にいる」とまで言うようになって。
 
そんな成長を間近で見ていると、初めは「どうなってしまうんだろうな」と思っていた子も、希望が湧いてきます。それがやりがいだし、パワーをもらえますよね。
 
だから、感謝されるからとか、褒められるからなんていう気持ちはなく、純粋に子どもたちの成長がうれしくてやっているという感じです。
 


 
―山下さんのような方に、お子さんに丁寧に接していただけると、親御さんたちからは、感謝の言葉をたくさんもらったりするのではないですか?
 
いえいえ。皆さんわりと淡泊ですよ。わたしも淡泊だけど。お迎えの際、もちろん「ありがとうございました」とご挨拶はされますが、それだけです。お勤めがあるので皆さん手いっぱい。手いっぱいだから預けたいわけでしょ。
私としては、それを断らずに受け入れてきたということが、よかったなということ。私もそのお陰で子どもにパワーをもらっているということを実感ができている。それで十分です。
 
ただ、子どもさん本人からはお手紙をもらいましたよ!妹が保育園から1年生になって、児童館でのお迎えメンバーが増えたわけです。そのときにお姉ちゃんが妹もよろしくおねがいします、とお手紙をくれたんです。

 
―最後に、子育て世代の親御さんに伝えたいことやメッセージはありますか?
なんにもないの。みんなしっかりしている親御さんばっかり。とてもクールで。だから、短くても子どもと接する時間帯を一所懸命やればいいという感じ。それだけです。
名古屋市にはたくさんの子育てを支援する制度があるので、うまく使って、うまく子育てしてもらえればいいと思います。
 
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山下さんのお話を伺って…(小川感想)
山下さんのお話を聞いて、なんだかとっても嬉しく思いました。ボランティア精神が希薄な小川の発想では、誰かにやってあげて、”感謝される”からやりがいがあるんだろうなぁ。なんて浅はかな考えを抱いていましたが、そうではない。
 
縁あって自分が関わった子どもが、日々いろいろな思いを抱き葛藤しながら成長していく姿を、間近で見られる。それが純粋にうれしい。もはや親と同じような思いを抱き、また親よりも一歩引いた冷静な目線で、子どもたちを預かっている山下さん。まさに、「なごやのチカラ」だと感じました。これからも、健康に気を付けて、末永くご活躍されることを祈るばかりです。
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