東山動植物園、日本一、いや世界一がここにはある!?
名古屋市広報課の丸澤です。
本日は、飼育種類数「日本一」、名古屋市民の憩いの場所である東山動植物園に来ました。
東山動植物園は1937(昭和12)年に開園し、前身の名古屋市立鶴舞公園付属動物園から数えると100年以上の歴史があります。
そう、現在の場所に移る前は、鶴舞公園にあったんです!
動物の飼育種類数は約450種と日本一を誇ります。
約60haの広さに動物園、植物園、東山スカイタワーがあり、現在再生プランが進行中で動物舎をはじめ様々な施設をリニューアルしています。
小さい頃は親に連れられたり、学校の遠足で来たりしていましたが、高校生の頃からか、自然多い東山動植物園なのに、自然と行かなくなっていました。
市役所職員となり、名古屋市が誇る施設なので、「見に行かないと!」と思っていたら、凄く変わっていてビックリしたのを覚えています。
毎年のように新しい変化がありますので、東山動植物園にお越しいただきたいです。
来年に向けてこういった工事も。
かわいい動物たくさんいますよね。
個人的にはこちらもお勧めしたい、そう、「世界のメダカ館」!
場所をご存知ないという方は園内マップをご覧ください。
ここからはインタビューをした内容などを書いていますが、「世界のメダカ館」、本当に世界一でした、そして職員が新種まで発見しています!
【動植物園がある意義】
インタビューを始める前に、ご存知の方も多いかもしれませんが動植物園は、ただ見るためだけの施設ではありません。まずは「動植物園の意義」なるものを聞いてみました。
(東山動植物園より)
動植物園の役割には、来て見て楽しんでもらうレクリエーションの他に、「種の保存」、「調査研究」、「環境教育」というものがあります。
動植物園は、数が少なくなり絶滅しそうな生き物たちに、生息地の外でも生きていける場、繁殖して子孫を残していく場を与える役割も果たしています。これが「種の保存」です。
さらに、これからも動植物たちに会ってもらうため、そして「種の保存」のために飼育・栽培している生き物を増やそうとています。そのためには、その生き物たちの生態をよく知り、動植物園で快適に暮らせるように「調査研究」をしなくてはなりません。そうした生物の研究もおこなっています。
また、動植物園では職員が生き物の説明をしたり、教育プログラムを実施したりしています。動物・植物に興味を持ち、それぞれの生息地がだんだん少なくなっていることなどを知り、人間がどうすればいいのかを考えるきっかけとなるような情報発信をしています。これが「環境教育」です。
写真は絶滅危惧種のイタセンパラ
東山動植物園には多くの絶滅危惧種がいます。メダカもそのうちの一つです。私(丸澤)、前から色んな方に伝えているんですが、私の説明が下手なせいか上手く伝わらないんです。名古屋・東山動植物園でしか見られないメダカ達がいるんです!
なので、本日は世界のメダカ館の担当者にインタビューしてきました。
【職員紹介】
(-は丸澤の発言など)
―自己紹介をお願いします。
田中:東山動物園飼育第二係の田中です。「世界のメダカ館」を担当して16年になります。
写真は「世界のメダカ館」の入り口付近で、左側が田中さん、右側が丸澤
【メダカ館の成り立ちや飼育している種類】
―「世界のメダカ館」の成り立ちを教えてください。
田中:昭和38年に建てられた旧水族館の老朽化に伴い、新しい水族館構想が検討されました。そして、日本人にとってなじみの深い魚であるのに、生息環境の変化によって激減してしまったニホンメダカを中心として、メダカの仲間や日本産希少淡水魚を展示することが決まり、平成5年10月7日に世界のメダカ館はオープンしました。世界のメダカ館で、生息環境を再現した水槽で元気に生活する生きものたちの魅力を感じていただきながら、身近な自然環境について考えていただけるとうれしいです。
―メダカにこれだけ着目した動植物園って他にないですよね?名古屋港水族館に行ったことがありますが、これだけのメダカの種類は見たことがないです。
田中:はい、他にはないです。当時メダカ館を作ろうと考えた人たちは凄いと思います。名古屋港水族館が出来た後くらいに世界のメダカ館が出来ましたが、大きな水族館とは異なる、小さなものにということでメダカになったようです。
―現在メダカは何種類ほどいますか?
田中:現在37種確認されているメダカ科魚類のうち30種を飼育しており、世界一の保有種数になっています。そのうち常時展示しているものは28種になります。他にもメダカに似た特徴をもつカダヤシ目の魚、日本に生息する淡水魚、昆虫類(タガメなど)を飼育展示しており、その中には絶滅危惧種も多くいます。また、メダカを脅かす外来魚の展示もしています。
【絶滅危惧種のメダカ】
―20年前ほどにメダカが絶滅危惧種というニュースを聞いて驚きました!
田中: 1999年2月、ニホンメダカは「絶滅危惧Ⅱ類」として環境省のレッドリストに記載され、それを機に各地で保護活動も盛んにおこなわれています。しかし、他の国々にすむメダカ科魚類の中には、その価値が注目されずに絶滅寸前に追いやられている種もいます。
―世界のメダカ館の入り口付近にすぐある水槽、メダカがいて昔ながらの日本の風景という感じがしますが、2段目、3段目あたりには何かいるんですか?
田中:2段目の部分などは季節が来ると稲を植えたりしてします。秋には収穫もしていますよ。名古屋メダカ(※)を300匹程度展示していますが、バックスペースでは1000匹程度飼育していますよ。
―メダカは耐塩性があったりと強いイメージもあるんですが、農薬や外来種などによって絶滅危惧種になってしまうんですね。
田中:農薬や外来種以外にも、例えば用水路がセメントで固められたことにより水の流れが速くなり、今までいた場所にいられなくなったということもあります。色んな要素が重なって、二ホンメダカは絶滅危惧種になっています。
※名古屋メダカとは、名古屋が世界に誇るメダカ博士、故・山本時男先生が、約70年前に現在の平和公園付近の池で採集した二ホンメダカの子孫です。
【お家でも飼育できる?】
―令和3年3月13日に世界のメダカ館がリニューアルされていて、飼育方法についても展示があるとか?
田中:簡単な飼育方法の展示については、今までもあったにはあったんですが、用意するものやエサは何をあげるか、卵を産み付けるために毛糸で代用できるとか、こういった展示の方法は初めてです。お子さまにもより身近に感じて貰えるようになったかと思います。
―水槽でなくとも、鉢とかでもいいんですね。
田中:外で育てるのが一番簡単で、体も丈夫に育ちます。
鉢以外にも発泡スチロールとかでもいいんですが、水を張って、水草を入れるなどして、外に出しておく。そうすると雨水が入ってそんなに水も減らないし、太陽光を浴びることでエサとなる生き物も育ちます。水は1ℓと教科書などには書いてありますが、できれば2ℓくらいあった方が過密にならずにいいのかなと思います。
意外と寒さにも強くて、氷が張った下でもじっとして耐えて、春まで生きたりと。
―なるほど、だから北海道以外の日本の各地域でメダカを見ることが出来たんですね。
【メダカ以外の生き物も】
―メダカ以外の絶滅危惧種、他の動物園や水族館でもなかなか見ることができないイタセンパラなどもいますよね!
田中:はい、こちらが庄内川水系をイメージして出来ていて、汽水域から上流に上っていくという作りになっています。
国の天然記念物など絶滅危惧種が右側に並んでいます。イタセンパラもですし、ネコギギなどもいます。バックヤードで繁殖もしていますよ。
―そういえばこの後にカダヤシ目も展示されていますけど、カダヤシ目って以前はメダカに分類されていませんでした?
田中:はい、メダカ館が作られる当時はメダカ目というのがありメダカの仲間でした。
骨をよく見るとメダカはダツ目との共通点が多く、遺伝子解析など研究が進んだ結果、メダカ科がダツ目に移動し、メダカ目の呼称がカダヤシ目に変更されています。
【アジアのメダカの展示室】
ーおー、ここが世界のメダカが展示されて、令和3年3月13日にリニューアルされた場所ですね!
田中:はい、こちら側がリニューアルで作り直した展示室になっています。
日本にいるメダカと同じメダカ科の仲間です。メダカはアジアにしかいないんですが、そのうち、スラウェシ島(インドネシア)に半分いて、他のメダカがその他の地域(中国など)に生息しています。
―日本のメダカとエサは違ってたりするんですか?
田中:メダカのエサはだいたい一緒ですね。ブラインシュリンプという小さい動物性のプランクトン、あとは赤虫、ボウフラ、冷凍で売っているんですが、普通に手に入りますが、そういったものをあげています。
現地で食べているものとは差があるから、どうしてもそこは追及しないといけない課題かなと思います。
―今更なんですが、メダカって普段寝てたりするんですか?
田中:研究している先生に聞くと、夜に生息している湖の岸の方にいくと、メダカがちょっと横になっているのを見たことがあるって。本当かな?って思うんですけど(笑)でも、「もしかしたらあるかも!」と思っています。
―稚魚の間は何を食べているんですか?
田中:稚魚の間は先ほど言ったブラインシュリンプ、あとはふ化したもっと小っちゃい時はブラインシュリンプだと大きすぎるので、ワムシというプランクトンを沸かしてあげています。
―メダカ同士で喧嘩もしたりしますか?
田中:喧嘩しますね。オス同士で縄張り争いを。
自分の縄張りが水槽の中でもあって、入ってくるとぴんぴんと跳ね除けています。「こっちくんな」って感じで。
【インドネシアでメダカの新種発見!?】
―インドネシアのスラウェシ島で新種発見されてますよね!?
田中:はい、こちらにいるティウメダカとドピンドピンメダカの2種です。
実際に現地で初めて取って見つけたのが、こちらのティウメダカです。この時は2008年にスラウェシ島に新潟大学の共同研究で行きましたが、ティウ湖という小さな湖で、そこに小さなメダカっぽいのがいるっていう情報を現地の先生に教えていただいて、現地に行って探したら本当に取れました。
―大学だけでなく、東山動植物園にも声がかかった理由は?
田中:そうですね、以前から新潟大学の先生とは繋がりがあって、メダカ館に話を持ち掛けてくれました。採集したメダカをここで種の保存、系統保存してくれないかということで話をいただきました。
―私たちだとティウメダカとドビンドビンメダカの違いはパッと見て分からず、、、、新種ってすぐに分かるものなんですか?
田中:そうですよね、皆さんそう言いますね、同じに見えるって(笑)
見てすぐに分かりましたね、新しい種類って。
―知り合いの学芸員の方と話をしていて、普通の石と隕石はパッと見て違うって分かると言っていてたので、普段から見られている方達は違いますね。
―スラウェシ島のメダカはどれくらい生きますか?
田中:スラウェシ島のメダカは、成長が少しゆっくりなので寿命も長いです。普通でも2年半くらい。繁殖も2年くらいは普通に。普通のメダカより1.5倍くらい長いのかなって。
なお、こちらの写真に田中さんのお名前が大学の先生たちと共に書かれています。
勉強になるので、皆さまも世界のメダカ館で実際に見てください。
【約束していた時間が終了、、、、】
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいますよね。
事前に予定していない質問でもすぐに返してくれる、田中さん始め東山動植物園の担当者の方達、本当にすごいです。
そして、時折出てくる田中さんの昔ながらの名古屋弁もすごかったですが、これはまた別の話。
そして最後の質問はこちら。
―学生の頃の研究はメダカだったんですか?
田中:いえ、牛です。東山動植物園に来て、魚を担当するようになりました。
メダカもですが、田中さんの適用力の凄さも垣間見た感じがします。
解散して記事用に写真を撮ろうとしてたら、たまたまエサの時間に。バックヤードからエサをあげているものだと思ったら、写真のようにエサをあげていました。貴重な瞬間に立ち得ました。
【最後に】
動植物園には「種の保存」「調査研究」「環境教育」など様々な役割があって、またその役割を遂行するために様々な役割を持った職員たちがいます。
今回は世界のメダカを担当している田中さんにインタビューを行いましたが、偶然、エサをあげていた職員とも話をしました。皆さんメダカの話をされている時、本当に素敵な笑顔、話し方をされていました。
また、飼育をされている方以外にも広報を担当している職員など、様々な役割があって、動物や後世の人たちのために日々頑張っている姿を見て、また東山動植物園に行きたくなりました。世界のメダカ館のアニマルトークが凄く面白いという情報も得ましたので、プライベートの時間で聞きに行こうかと思います。
取材にあたり広報課職員とも話をしましたが、それぞれに「推し」が違うので、また別の動物の取材もしたいと思います。東山動植物園の皆さま、また協力お願いします。