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360°カメラを使って、子どもたちが交通安全について考えてみた~なごっちフレンズワークショップ2023~

こんにちは、子ども青少年局企画経理課の伊藤です。
 
わたしが担当している業務の一つに、「なごっちフレンズ」というものがあります。

「なごっちフレンズ」とは、会員登録すると、子どもたちが地域やまちづくりへの考えを深めたり、自分の意見を生かしたりできるイベントの、お知らせを受け取ることができる制度です。
会員限定のワークショップを毎年開催していて、ワークショップでは子どもたちが名古屋市の施策や課題について考え、名古屋市に意見を伝えることができます。
 
今年度も、なごっちフレンズワークショップを開催しました!
どんなワークショップだったのか、この記事で詳しくお伝えしたいと思います。楽しそうと思ってくれた方は、ぜひなごっちフレンズに登録してくださいね。


なごっちフレンズワークショップを開催する理由

ワークショップの様子をお伝えする前に、子どもの意見を表明するワークショップをなぜ開催しているのか、少しだけ説明します。
 
・子どもが意見を表明すること。
・その意見が尊重されること。
・意見を表明するために必要な情報がもらえること。

これらは全て、守られるべき子どもの権利です。「子どもの意見表明権」とも呼ばれています。
子どもの意見表明権が保障されるためには、子どもが意見を表明する機会がきちんと確保されていなければなりません。子どもが意見を表明する機会を確保することは、大人の責務でもあるのです。
 
つまり、なごっちフレンズワークショップは、子どもの意見表明権を保障し、子どもの社会参画を具現化するために実施しているのです!
 
子どもの権利についてもっと知りたい方は、「なごや子どもの権利条例」のパンフレットを読んでみてください。

難しい話はここまで!
ここからはお待ちかね、なごっちフレンズワークショップの様子を詳しくお伝えしていきますよ。

なごっちフレンズワークショップ2023

今回のワークショップのテーマは、「360°の交通安全動画を企画しよう!」
スポーツ市民局地域安全推進課さんからテーマをいただき、悲しい交通事故から子どもたちを守るため、360°カメラを使って交通安全動画の教材を制作することになりました。
 
子どもたちはどんなヒヤリハットを経験しているのか、どんな動画にしたらいいのか、子どもたちの意見を聞きたいということで、なごっちフレンズのみんなで考えることにしました。
最終日には、これまでに経験したヒヤリハットをもとに考えた、動画に取り入れてほしいシチュエーションやアイデアを、子ども青少年局長とスポーツ市民局長に発表します。
どんな交通安全動画にするかを研究する「子ども向け交通安全コンテンツ制作研究会」に参加している大学の先生も発表を聴きに来てくれることになりました。
さあ、どんなワークショップになるのかな?

1日目 交通安全の教材を体験しよう!

ワークショップには、小学5年生から中学2年生までの12人の子どもたちが集まってくれました。
 
まずはアイスブレイク。360°カメラで撮影しながら、「だるまさんが転んだ」や「ポコペン」で遊びます。
後から撮影された動画を見てみると、自分が見えないところではいろいろなことが起こっていました。(ファシリテーターのお兄さんが踊っていたりね。笑)

360°カメラで撮影しながら、だるまさんが転んだ

360°動画の特徴を理解した次は、360°動画を使った教材の見本を体験してみます。タブレットを動かしたり、画面を指でスワイプしたりすると、360°動画はくるくる動きます。横や後ろはどうなっているのかな?動かしながら、どこに危険があるのかを探しました。

どこに危険があるかな?

休憩時間には、自転車シミュレーターや運転判断診断で遊びました!

自転車シミュレーターでシミュレーション!

《子どもたちの気づき》
・360°カメラで自分の見えないところが見えた。これを思い出して、危険を察知したい。
・スマホを見ていて周りを見ていない人も多いから、気をつけたい。
・周りにはルールを守っていない人もいるので、自分がルールを守るだけでなく、巻き込まれないようにすることが大事。

2日目 動画をつくろう!

宿題になっていた、「ヒヤリ」「ハッ」とした経験、場所、原因と対策をグループで発表し合い、2日目がスタートです。この日はインターンシップ生のお姉さんたちも来て、お手伝いをしてくれました。

みんなの「ヒヤリ」「ハッ」はなにかな?

・坂道の下から上がってくる車に気がつかなくて、ぶつかりそうになった。
・雨が降る夜に、見えづらい格好で歩いていたら、車とぶつかりそうになった。
・信号が赤から青に変わったから横断歩道を渡り始めたら、後ろから左折してきた車とぶつかりそうになった。
 
たくさんのヒヤリハットが集まりました。
みんなのヒヤリハットをもとにストーリーをつくって、実際に360°カメラを使って撮影してみます。
家から持ってきたおもちゃの車やぬいぐるみ、道路の柄のテープなどを使うグループ。車いすや自転車、ボールなどを使うグループ。それぞれのグループが、あるもので工夫しながら、表現していきます。

どんな動画が撮影されたのかな?企画発表会が楽しみです。

《子どもたちの気づき》
・場所によって地形や状況が異なるから、同じルールではなく工夫するべき。
・撮影しながら、自分だったら…と考えられたことがよかった。

3日目 交通安全動画の企画発表会

ついに最終日がやってきました。発表会の日です!
グループごとに発表内容を相談し、模造紙にまとめ、発表の練習をします。どのように発表するか、どのタイミングで動画を動かすのか、全て子どもたちで考えました。
大学の先生もその様子を見守ってくださいました。

子ども青少年局長、スポーツ市民局長、保護者の方が会場に入り、いよいよ本番です。インターンシップ生のお姉さんたちも発表を聞きに来てくれました。
 
<Aグループの発表>
①自転車に乗っていたら、駐車中の車の陰から出てきた車とぶつかりそうになった。大通りを走る車の音で、こちらに走ってくる車の音が聞こえなかった。
②曲がり角で自転車が急に飛び出してきて、避けようとして横にずれたら、後ろから来た車とぶつかりそうになった。
③夜に住宅街で、自転車に乗っていた。右折しようとしたら、後ろから来た車とぶつかりそうになった。

Aグループのポスター

《工夫したところ》
騒音という音の情報を、ペットボトルとごみ袋で表現しました。目で見える情報以外にも音という情報から危険を察知できることを伝えました。
 
《大学の先生のコメント》
音を使ってくれたのが新鮮でした。音を使えるというのも、動画の特徴だなと気づかされたので、使えたらいいな、と考えています。
交差点の絵を描いてくれていていますが、自転車が右側通行しています。この場合、車と自転車がお互いを見えるようになるのは、ギリギリになります。左側通行をしていれば、少し早めにお互いが見えるようになります。実際、交差点で、自転車が右側通行していて、車が左側を走っていて事故になることがとても多いです。
これから動画を作っていくときに、自分の目で見たような動画だけじゃなく、実は上から見たらこうなっていましたよ、だから左側通行が大事ですね、という形にできるな、とすごく感じました。

<Bグループの発表>
①見通しの悪い交差点で、車いすの人と自転車がぶつかりそうになった。
②公園でボール遊びをしていた子どもが、遠くに蹴られたボールを追いかけて公園から出たところ、自転車とぶつかりそうになった。
③本を読みながら歩いている子どもと自転車がぶつかりそうになった。

Bグループのポスター

《工夫したところ》
注目してほしいところでは、「あぶない」と書かれた紙を掲げました。聴く人を飽きさせないメリハリのある発表でした。
 
《大学の先生からのコメント》
ボール遊びをしていて、ボールが道路に出てしまって、それを追いかけていくときに車とぶつかってしまうというのが、リアルでした。これは運転免許の教習でよく出てくるシチュエーションで、ボールが道路に出てきたら、後から誰か出てくるかもしれないから気をつけて運転しましょう、というものです。今日見たのは、子どもの目線で、自分たちが遊んでて、ボールを追いかけたら車が来ちゃった、というのはすごく新鮮でした。

<Cグループの発表>
①自転車に乗って見通しの悪い角にさしかかったとき、右から走ってきた車が止まってくれたことに気をとられ、左から走ってきた車に気づかず、ぶつかりそうになった。
②自転車に乗っているときに後ろからボールが飛んできたことでバランスを崩し、角から出てきた車いすの人にぶつかりそうになった。
③夜、暗い中を歩いていて、角から出てきた車に気づかず、ぶつかりそうになった。

Cグループのポスター

《工夫したところ》
ハインリッヒの法則に触れることで、ヒヤリハットを見逃さず対策することで重大事故を防ぐことができることを伝えました。
発表用の模造紙に図やイラストを描いてわかりやすくまとめました。
 
《大学の先生からのコメント》
右から来た車が止まってくれたから横断歩道を渡ったら、左から車が来ちゃった、というのはよくある事故です。一つのことに気を取られて他のことに気が回らなくなって起きる事故はとても多いです。
 


最後に先生から参加してくれた子たちに向けて、こんな言葉がありました。


私たちが交通安全の動画をつくる一番の目的は、事故に遭ってほしくないということではなく、みんなが元気に外で遊んでほしい、活動してほしい、ということなんです。
どういうことかと言うと、例えば、みんなが家でゲームをしていれば、事故は起きません。これはハッピーですか?全然ハッピーじゃないよね。みんなに外で遊んでほしい。でもそこで事故に遭ったら悲しいから、安全にも気をつけてほしい、そんな思いでプロジェクトを進めています。

これからみなさんは大人になります。
もちろん子どものうちも事故にあわないでほしいし、大人になったとき、ぜひこの経験を生かして、事故を起こさないでほしい。自分がお母さん、お父さんになったときに子どもたちに教えてほしい。
そうすれば、今日ここに来てくれた人だけでなく、これからずっと交通安全の文化が繋がっていきます。
学校で、左側通行とか、ヘルメット着用とか習うと思います。けれど、大人の人たちの中には、右側通行していたり、ヘルメットを被っていなかったりする人もいます。そうすると、学校では教えてもらうけれど実際にはやらなくていいんだと思ってしまいがちです。そこをみなさん変えてください。
みんながやるようになったら、みんなやります。今の状況をどう変えるかというのはみなさんにかかっています。ぜひやってほしいなと思っています。


みんな真剣な表情でお話を聞いていました。大人としても、これは心に留めておかなければならないことだと思います。
大人も子どもも、一人一人が交通ルールを守ること。それを次の世代へ繋いでいくこと。
現状をすぐに変えることは難しいけれど、少しずつでも変わっていけば、それだけ事故は少なくなっていくはずです。
今よりもっと、みんなが元気に安全に外で活動できる、そんな社会に近づいていけたらいいですね。
 

子どもの意見を聴くことの大切さ

子どもも大人と同じ、社会を構成する一員であり、子どもの意見を聴き、尊重し生かしていくことはとても大切です。令和5年4月にこども基本法が施行され、このような話を耳にしたことがある方も増えてきたかもしれません。
 
大人より子どもに近い、若者の立場であるインターンシップ生は、なごっちフレンズワークショップを経験し、どのように感じたのでしょうか。インターンシップ生の感想を紹介します。
 
《インターンシップ生の感想》
・従来の固定観念に捉われない子どもの柔軟な発想はとても大事にしていかなければならないと強く思わされました。そして、私たち大人がそういった柔軟で多種多様な意見が尊重される社会をつくっていく必要があると実感しました。
・このようなワークショップでは、子どもにとって自分の意見を誰かに受け止めてもらえるという経験になり、子どもがより積極的に自分の意見を主張することができるようになると思うので、もっと多くの子どもにこのワークショップに参加してもらいたいです。今後、このようなワークショップが増えていくといいなと思いました。
・みんなの前で意見を言うのが苦手な子も3日間のワークショップを通して、どんどん意見を言えるようになり、最終的には多くの人の前での発表も堂々とできるようになり、成長を感じました。子どもみんなが意見を言いやすいような環境をつくることが重要だと思いました。
・このようなワークショップを多く開催することで、子どもたちの意見を吸収してよりニーズに寄り添った施策等を行うことができるとわかりました。子どもたちはまだ社会参画というイメージがないと思うので、身近なワークショップを通して、少しでも意見を主張する子どもが増えてほしいです。
・子どもたちの経験や意見を聴く中で、大人では気がつかない、子どもならではの視点も多くありました。ハッと気づかされる意見も多く、社会を構成する一員である子どもの意見に耳を傾けることの重要性を再認識しました。
・「子どもたちでもできることがある!」「子どもたちからの意見も大切にしたい!」というメッセージ性のあるワークショップになったと思います。
 
子どもの意見を聴くことの大切さをそれぞれに受け止めてもらいました。
先ほどの先生のお話と通ずるところがありますが、ワークショップを体験し、意見を表明する楽しさを知った子どもたちが成長したらきっと、子どもの意見をきちんと聴く大人になってくれるでしょう。そして、子どもたちに意見を表明する楽しさ、大切さを伝えていってくれることでしょう。インターンシップ生、市職員である私も同様、周りや次の世代に伝えていくことができます。
そうやって、子どもの社会参画がもっと浸透していけばいいなと思います。
 
また、子どもの意見を聴いた後は、その意見をどう取り扱ったのかフィードバックすることも大切です。今回のワークショップで出た意見については、意見を生かしてどのような交通安全動画ができるのか、なごっちフレンズの情報発信を通じて子どもたちに伝えていく予定です。
 


子どもが社会でより良く生活できるように、子どもの意見を聴くこと、これが当たり前になるように、名古屋市はこれからも子どもの社会参画の推進に取り組んでいきます! 

子どもの権利条例について、もっと詳しく知りたい方は下記から