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南区いい湯だな♪銭湯めぐり(第6回~桜台温泉のその後&湊三次郎登場!編~)

どうも~。名古屋市南区役所地域力推進室の「せんとうくん42歳」ざます。

名古屋市南区の銭湯を紹介するnoteこと「南区いい湯だな♪銭湯めぐり」の6回目でございます。
 
今月も26日(風呂の日)がやってきました。更新日の12月26日は、電気グルーヴのメンバーでありDJである石野卓球の誕生日とのことです。フジロックフェスティバルのグリーンステージでは過去に何度も電気グルーヴのライヴが行われていますが、そのどれもが個人的には忘れられないものとなっています。
 
さて。今回のnoteは特別編をお送りいたします
 
といいますのも、今年の9月末をもって惜しくも廃業した、当連載の2回目でも紹介した「桜台温泉」の店主浅井さんから「ゆとなみ社の湊さんがもう使わなくなる銭湯の物を取りに来るよ」という話を聞きまして、せんとうくん42歳のセンサーが反応したからなんですね。
 
ゆとなみ社とは、実は当連載1回目の冒頭でも少し触れているのですが、「銭湯を日本から消さない」をモットーに、銭湯の継業を専門的に行っている京都の会社です。
 
ゆとなみ社のホームページ
 
そして、若くしてその代表を務めるのが湊三次郎さんです!

銭湯業界の超有名人にして超重要人物である湊さん

この度の湊さんをはじめとするゆとなみ社の方々が南区に来るという願ってもない状況に、せんとうくん42歳はよだれをだらだらとたらしながら行ってまいりました(取材日:11月1日)。今回はその模様をお伝えいたします。


廃業した桜台温泉はどんな状況?

個人的に桜台温泉に伺うのは1か月とちょっとぶりではございましたが、廃業した銭湯はどのような状況にあるのか。興味深いところがありました。

こちらは外観です。遠目から見ると営業していた頃と違いはないなぁと思いますが…、

入り口には「2023.9.30 本日閉店」と書かれた貼り紙がありました。

フロントから外に出る自動ドアの内側には、店主からのメッセージがありました。シンプルなメッセージですが、これまでの積み重ねてきた年月や思い出を想像すると、やっぱりじんわりきますね。これを書いている今も涙が出てきそうで…。

浴室です。お湯が張られていない、時が止まったような浴室には、もの悲しさを感じてしまいます。

そんな浴室の中でも、桜台温泉の象徴ともいえるタイル壁画は存在感を示していました。

水のないプール、ではなく水風呂に服を着たまま入ってみました。
 
「先日、地域の人たちがマッサージ機や招き猫なんかを持っていったんですよ~」なんて話を店主さんがしていましたら、ゆとなみ社の皆さまが到着しました!

ゆとなみ社がやってきた!

湊さん(右)と社員の方

ゆとなみ社の皆さまです。「京都から遠路はるばるやってきました!」
 
そして、到着するや否や、早速銭湯設備を物色し始めました。

店主浅井さんの話を聞きながら状況把握
チラー(冷却水循環装置)の表示を確認しています
ヘアキャッチャー(循環水の髪の毛を除去する装置)の取り外し
とったど~!
なんと、案内プレートまで持っていく!
大物「アイスクリームケース」の積み込み

私が確認しただけでも、以下の物をお持ち帰りしておりました。
・ヘアキャッチャー
・アイスクリームケース
・各種プレート
・サウナ照明
・ドライヤー使用時にお金を入れるタイマー装置
・入浴剤
・ペンキ
 
さらには、大きすぎて持ち帰れなかった脱衣所の敷物は、また来週取りに来るとのこと!いやはや、骨の髄までしゃぶる感が凄かったです(笑)

湊三次郎インタビュー

それでは、この特別編を締めくくる湊さんのインタビューをお届けいたします!

湊さんワンショット

――桜台温泉の廃業をどのように知りましたか。
 
湊 三次郎さん(以下、湊) インターネットの記事で知りました。ボクが七福湯で修業をしていた時に、桜台温泉へお風呂に入りに来たことがあって、ご主人とも面識ができました。
 
「京都で銭湯やるために修行してるんです」と言ったら、「頑張ってね」と声を掛けてくれました。梅湯(ゆとなみ社が最初に継業をした京都にある銭湯)ではお湯を薪で炊こうと思っていたので、釜を見せてもらったりもしましたね。8年前に梅湯を始めた時もご家族で顔を出してくれましたし、ずっと応援してくれていたんです。

京都にある梅湯の外観

この度、桜台温泉が廃業するということで、最後に1回入りに行こうと思って、廃業直前の9月に来ました。その時に、数年前から廃業を計画的に考えて、廃業後は銭湯を取り壊して新しく活用することにしたというお話も聞きました。やめるにやめられなくてズルズルといってしまう銭湯が多くて、正直それはいいものだとは思っていなかった中で、これはひとつの「ゴールを見据えた美しい経営」なんだなと思いました。
 
――今日のような形で、廃業する銭湯から物をもらうことはよくやっていらっしゃるのですか。
 
湊 よくやる手段ですね(笑)。
 
――その姿を拝見させていただいて感じたのが、本当に色んなところを見回って、貪欲に使える物は持っていくというスタイルだなぁというものでした。これはリサイクルにもつながるわけですが、どういった思いを持っていらっしゃいますか。
 
湊 当然、「もったいない」という思いはあります。今日もらった「ヘアキャッチャー」は買うと新品で10万円、中古でも2万円とかしますので、そういったものはお金に見えます。
 
でも、廃業してしまう銭湯で丁寧に使われていたものが、他の銭湯でひとつでも多く生き延びられたらいいなという思いは強いです。「あ、これは桜台温泉で使ってたやつだな」と思うと、ご主人の顔も思い浮かびますしね。思い入れのある銭湯さんには廃業時に物をもらいに行くことが多いです。

サウナ室内の照明の取り外し

――名古屋の銭湯文化についてはどう見てらっしゃいますか。
 
湊 東京、大阪、京都とはまた違いますね。名古屋の銭湯は割と郊外に点在していて、中心地の都会にはあまりない印象です。なので「郊外型」ということでマーケットも違うし、ボクとしても未知な部分はあります。
 
ただ、いずれにせよ名古屋の銭湯もどんどん減っています。そこに対する業界や行政からの明確な手立ては、名古屋以外の地域も含めてないです。ゆとなみ社としてはできる限り引き継ぎたいと考えて動いているんですがね…。このままいくと名古屋も銭湯がなくなるぞって思います。若い経営者の方もいらっしゃいますけどね。若いっていっても50代とかですけどね。
 
――カイヤさん(七福湯の店主で50代)が若手ですからね(笑)。
 
湊 桜台温泉の浅井さん(60代)も若い方ですからね。そこも業界の悪いところといいますか、だって50代、60代で若手ってどんな世界だって話ですよ(笑)。ボクはまだ33歳なので、普通の会社であれば中堅なんでしょうけども、銭湯業界ではまだまだド若手だし、そんな人他に誰もいないんでね…。本当に早急に事業継承を進めていきたいです。
 
南区では昨年廃業した呼続温泉がありましたが、事業継承できないかなと話に行った時には既に売却済で跡地利用が決まっていて、事業継承は叶わなかった、なんてことも実はありました。
 
――もし決まっていなければ事業継承の可能性があったということですか。
 
湊 いや~、やりたかったですね~。
 
――うわ~、それは惜しかった…。
 
湊 実は七福湯での修業時代に南区の銭湯の中で呼続温泉だけ行ったことがなかったんです。Twitter(現:X)を見ていてもまさかやめるとは思ってなくて、廃業が公表されてから初めて行きました。めちゃくちゃいい銭湯でした。ご主人はボクのことを知ってくれていて、継業できないかと聞いたんですが、ダメでしたね…。
 
――(せんとうくん42歳、絶句)
 
湊 事業継承できず、凄いショックで帰ってきました。実は、今ウチに「名古屋で銭湯がやりたい」ということで入ってきたスタッフがいるので、名古屋市内の物件を探している状況です。

2022年8月に廃業した呼続温泉

――それはまさしく次にお伺いしたいと思っていたことです。南区でも銭湯が立て続けに廃業している状況なわけですが、今後名古屋で継業する可能性はあるということですね。
 
湊 あります、あります!凄く今注目しているというか、チャンスがあればという状況です。名古屋で銭湯をやりたいというスタッフは、いつ独立してもいいレベルにありますので、とにかく物件しだいです。銭湯組合の協力も得て、物件のマッチングがうまくいけばいいんですが、設備状況も踏まえて収支が合わなければダメですしね。
 
――とにかく諸条件さえ折り合えば、人はいるという状況ですね。
 
湊 名古屋に関してはその状況です。そのスタッフとは「絶対にこの2年以内に決めよう」と話しています。名古屋では七福湯のカイヤさんや西区の白山温泉の飯田さんをはじめ、色々な方に良くしてもらっていて、銭湯を名古屋でやりたいというのも知ってくれているので、あとはタイミングだけです。
 
まだ名古屋ではゆとなみ社が継業した銭湯がありませんので、継業したあかつきには、若い人が集まるニュー・ウェーブ的な銭湯としてカルチャーを作っていければなと思っています。そういうのが1軒あるだけで面白味は増すと思いますし、他の銭湯の人たちにも刺激を与えられるような気がしています。

ゆとなみ社のスタッフからは熱意を感じます

――廃業が決まっていなくても、先行きを考えると経営が難しそうな銭湯に対して、ゆとなみ社から継業をアプローチすることはあるのでしょうか。
 
湊 廃業情報が出て話をしに行っても、呼続温泉のように次が決まっていることもあるので、廃業を決断する前からゆとなみ社に継業する選択肢もあることを地道に伝えて、より相談しやすい関係性を構築していきたいと思っています。これは名古屋に限った話ではありませんがね。それで1軒でも多く継業できればなぁと思っています。
 
今は継業の話を持ち掛けても、特に高齢の経営者さんなんかは「銭湯は絶対にうまくいかない商売」だと思ってしまっています。ゆとなみ社ではお客さんの数を増やした実績も多々あるのですが、信じてもらえなかったりします。そこを信頼してもらえるようになっていきたいですね。
 
――「銭湯を日本から消さない」というのがゆとなみ社のモットーで、それは長期的で通底したテーマだと思うのですが、それを達成するために直近1、2年で具体的に成し遂げたいと考えていることは何ですか。
 
湊 ウチは直営でいうと8軒、独立したところやコンサル支援したところも合わせると10軒継業した実績があって、ある程度のノウハウもあるので、チャンスがある物件があればあるだけやりたいと思っています。ただ、それに対する自社だけでの資金繰りが間に合わなくなったりもしています。
 
あくまで「銭湯を残す」ことを会社の目標としているので、例えば広く投資家への呼びかけをしてみたり、あるいは大きな資本を持った企業の傘下に入ったり、お手伝いしたりとか、ウチだけの力じゃなくて銭湯を継業していけるような枠組みを作りたいと考えています。
 
京都では年7軒ペースで銭湯が減っている状況です。これは10年後には全部で20、30軒になってしまう計算なんです。その段階で残っている銭湯は「残るべくして残っている」銭湯なので、恐らく継業のチャンスは薄いと思われます。銭湯の経営者は70代、80代が多いので、時間は待ってくれません。この5年間が勝負だと感じています。この5年間でいかに動き回って拡大できるかと考えると、自社の力だけでは追いつかないので、一気に飛躍させる手段を講じていかなくてはなりません。
 
あとは人の問題もあります。これまではスタッフの採用も割とうまくいっていたのですが、コロナが明けて物価なんかも高い状況で、人はみな保守的になっていて、ゆとなみ社がやっているようなベンチャー的なことを敬遠している気がします。人材確保についても、社会状況も見極めつつ、やれることを最大限やっていきたいです。


いかがでしたでしょうか。
 
かなり貴重で面白いインタビューになったのではないかと思います。名古屋も含めた全国的な銭湯業界が抱える大きな問題がありながらも、ゆとなみ社はそれをどうにかクリアしながら「銭湯を日本から消さない」ようにしていきたいという、強い思いを感じました。
 
また、名古屋でゆとなみ社が継業を目指しているという話に、個人的には震えました。ゆとなみ社が継業した折には、名古屋の銭湯が面白くなるんじゃないかと期待しています!
 
そして、桜台温泉で使われていた設備や備品が、どうかどうか他の銭湯でひとつでも多く生き永らえますように…

湊さんとせんとうくん42歳(実体)

この記事を年末年始に読んでいただいている方も多いかと思います。お時間に余裕がありましたら、ぜひお近くの銭湯に足を運んでみてはいかがでしょうか。寒い時期ですが、とっても温まりますよ。各銭湯の年末年始の営業時間は、愛知県公衆浴場組合のホームページに掲載されています。
 
愛知県の公衆浴場組合ホームページ
 
最後になりますが、今回の記事いけてるやん!と思っていただけたなら「♥スキ」を押してください。よろしくお願いします!
 
それではまた来月お会いしましょう。

みんなにも読んでほしいですか?

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