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南区いい湯だな♪銭湯めぐり(第3回~名古屋温泉編~)

どうも~。名古屋市南区役所地域力推進室の「せんとうくん42歳」です。



ごく一部からではございますが、これまでの記事への感想をお聞きしておりまして、読んでいただいた方に対しては感謝の限りでございます。もっと多くの方に届くよう、はりきっていきます!
 
さて、今月も26日(風呂の日)を迎えました。更新日の9月26日といえば、名古屋市として、そして南区としては忘れてはいけない「伊勢湾台風が上陸した日」でございます(昭和34年9月26日)。南区は伊勢湾台風によって甚大な被害を受けた土地です。

そんなことを胸に秘めながら、名古屋市南区の銭湯を紹介するnoteこと「南区いい湯だな♪銭湯めぐり」の3回目でございます。今月もよろしくお願いします。
 
前回取り上げた桜台温泉は、記事にあるように9月30日をもって廃業されます。まだ間に合う方は、ぜひとも桜台温泉に駆けつけていただきたいところですが、終わりゆく銭湯に心を馳せながら、今回の記事もお楽しみいただければ幸いです。
 
また、いい記事だなと思っていただけたなら「♥スキ」を押してください。私も人間ですので、励みになります。


今回ご紹介する銭湯は?


今回の銭湯はこちらです!


南区の中心からやや北寄り、名鉄本笠寺駅から北西に徒歩10分ほどのところにある「名古屋温泉」でございます!
 
名古屋温泉の施設情報はこちらから(【公式】あいち銭湯ホームページ)
 
ね!
 
名古屋温泉といえばなんといってもこのネオンサインです!
 
夜に行ったらこんな見事なネオンサインがみなさまを出迎えてくれます。銭湯の魅力のひとつである「レトロ感」が爆発しております。こりゃ思わず写真撮っちゃいますし、中に吸い込まれちゃいますね。
 

銭湯レポート(外観から脱衣所まで)

※許可を得て撮影しています。


ネオンサインをくぐって進むと、建物の入口では初夢モチーフのおめでたい暖簾(のれん)がお出迎えしてくれます。これもまた見事です!まだ建物の中に入っていないというのに、早くもふたつめのフォトスポットです!
 
そんな興奮が収まる間もなく、中に入ります。


店主さんがお茶目にお出迎えしてくれています。名古屋温泉はフロント形式の受付です。
 
ここで銭湯の受付について解説をします。銭湯は番台形式とフロント形式のふたつに分けられます
 
番台形式は昔ながらの銭湯のイメージで、入口から男女が分かれており、中に入ると男女の脱衣所を向いた高いところにいる銭湯の方が受付をするものです。
 
フロント形式は入口がひとつで、名古屋温泉の写真にもあるように受付をしてから男女に分かれていくものです。今は多くの銭湯がフロント形式となっています。
 

女湯(左手)と男湯(右手)のしっかりとしたつくりの暖簾


暖簾をくぐって脱衣所に入ります。


脱衣所に入るとまず目に飛び込んでくるのが、サウナの脱衣所側の外壁です。この外壁もレトロ感満載ですよね。いつ頃作られたものなのかぁと、思いを馳せてしまいます。皆さんも実際に目の当りにしたら写真を撮りたくなってしまうかと思いますが、こちらは脱衣所なので撮影NGです。ご注意を。


ロッカーとドライヤーと扇風機です。扇風機は上から2台が風を送ってくれるので、湯上りの肌もすぐにさらっさらです。


ちょっとした腰かけスペースも充実しています。丸机と4脚のイスの奥に見えるのはマッサージチェアです。なんとこちらの利用は無料です!

体験日当日は、サマーソニックからめでたく「NewJeansおじさん」として帰還を果たしたせんとうくん42歳の身体を癒してくれました。フェス参加は腰にきますので、よく伸ばしていただきました。


銭湯レポート(浴室)


それでは浴室に入ってみましょう!


奥に見える雑なモザイクは後で触れるとして、浴室は手前側から見るとこのような感じです。桜台温泉のメインの浴槽は丸みを帯びた部分がありましたが、名古屋温泉は四角形の隅が切られた形状となっています。銭湯による浴槽の形の違いに目を向けてみるのも面白いかもしれませんね。


こちらは浴室の奥から撮影したものです。
 
それでは雑なモザイクの正体です。
 


なんと、名古屋温泉の浴室にはテレビがあります!画像を加工しないでそのままテレビの画面を写すと問題になりそうなので、モザイクがかけてあったわけでございます(坊や、目を細めたって見えやしないぜ)。
 
テレビがあるのはスーパー銭湯なんかでは一般的ですが、銭湯にはあまりないかなと思います。
 
で、この浴室内のテレビですが…。
 
女湯にはございません(涙)
 
正しくは、以前は女湯にもテレビがあったそうなのですが、あるタイミングからなくなって今に至っているそうです。だから、夫婦やカップルなどの間で「テレビがあった」、「いやそんなものなかった」といった具合に、湯上りの会話がかみ合わないこともしばしばなんだそうです。
 
ちなみに、女湯の元々テレビがあったところはこのようになっています。
 


こちらはね、どれだけ見つめていても画面がピクリとも動かない、雄大な自然を捉えた風景写真となっております。まあ、これはこれで心が休まっていいのではないでしょうか。
 
流し場はこのような感じです。
 


一般的な銭湯の仕様です。ですが、銭湯では必ずしも置いてあるとは限らないボディソープなどが置いてあります。
 
しかもよく見てみると…。
 

(上)男湯 (下)女湯


ボディソープだけでなくシャンプーも、さらにはコンディショナーまで置いてあります!しかも、女湯の方はパッケージからして質が高そうです!
 
銭湯でこの充実度はあまり見たことがないです。こんなところにも名古屋温泉の心配りが感じられます。第1回の記事でも書いたように、銭湯組合の入浴料金は定額(しかも低価格)なので、アメニティを充実させても料金に転嫁させることはできません。ですから、純粋に銭湯側のサービスなんです。
 
 
それではお風呂を見ていきましょう。

(上)普通のお風呂 (左下)電気風呂 (右下)バイブラバス


メインの浴槽は手前側から普通のお風呂電気風呂バイブラバスの順で並んでいます。全てテレビを見ながら(女湯は風景写真を眺めながら)入ることができます
 


お湯は温度表示もあります。安心して入れますね。反射でせんとうくん42歳がふんわり写っているのはご愛敬ということで。


こちらは浴室奥にあるエステバスです。背面からジェットが噴き出す仕組みのお風呂です。2ヶ所入るところがありますが、実は仕様が異なっております。

左側は浴槽が浅めで、お尻を付けて入ることでジェット噴射が肩を刺激してくれます。

対して右側は浴槽が深めで、中腰で入ることでジェット噴射が腰や背中を刺激してくれます。こういうのええやん、と思いました。


こちらが薬湯です。桜台温泉もバイブラ仕様でしたが、名古屋温泉もバイブラです。しかもボッコボコに泡が出ていましたので、まあ香りが立つこと立つこと
 


撮影日はボジョレー・ヌーボーの湯でした。あ、前回の桜台温泉編でも登場した健美薬湯の名がここにもありますね。「こんな粉を入れるんだよ」と店主さんが教えてくれました。


銭湯レポート(サウナ)

 
次はサウナのご紹介です。まずは男湯から。


これは脱衣所から浴室側を撮影したものですが、サウナは脱衣所と浴室の間にあります(左側の扉の中)。銭湯サウナはこの配置のところもちらほら見受けられる印象です。


サウナ室はこのようになっています。座面は2段で、合計8人ぐらいは座れるでしょうか。銭湯サウナにしては広いつくりです。
 
この写真の右側にある窓からは浴室内を眺めることができます。つまりは浴室奥のテレビも見ることができます。しかも、浴室内では聞こえないテレビの音が、サウナ内ではバッチリ入っています
 


こちらがサウナストーブです。ストーン対流式の電気サウナストーブを使用しています。南区では唯一だったかと思います。
 
サウナの室の温度計は94℃を示していました。1段目に座るとそこまで熱くないので、じっくり蒸されたいときにはよいかと。2段目はそこそこの熱さですので、シャキッといきたいときにはよいかと。いろんなパターンのサウナを楽しんじゃいましょう。
 


サウナストーンがあるからといって水をかけてはなりません。対応していないストーブに水をかけると故障します。ちょうどこの記事を書いているタイミングでも、私も大好きな豊橋にある昭和ストロング系サウナの某名施設がその被害にあったとSNSで報告がありました。修理費用など考えたら、やってはいけないことは明白です。

サウナ内の注意事項には必ず目を通し、水かけをしてはいけないストーブには絶対にかけない!


これが水風呂です。銭湯らしいコンパクトなサイズ感です。体験日に入った時はぬるめでした。お話を伺いますと、名古屋温泉の水風呂は水道水を浴槽に入れて、それをチラー(冷却水循環装置)で巡回させながら冷却する仕組みとのことで、元の水道水の水温が高い夏場は自然とぬるめになるとのことです。
 
冷たい水風呂に入るのはもちろん最高ですが、ぬるめに長く浸かるのもアリです。季節による水温の違いを楽しんでみてはいかがでしょうか。
 
次に女湯のサウナです。
 

 
男湯とは打って変わり、女湯のサウナはボイラーの蒸気を巡回させて熱くする蒸気サウナです。
 

 
フロントで売っている塩を使えば塩サウナとして利用することもできます。
 

銭湯レポート(湯上がり)


 
湯上り後の待合はこんな感じです。写真右上にあるテレビでは、杉下や西沢の頃(1950年代)からの筋金入りのドラゴンズファンである店主さんが、試合がある時はドラゴンズ戦を流しています。「最近は負けてばっかりで…」とドラゴンズの話を始めると、どうしたってトーンダウンしてしまうのは仕方のない話なのでしょうか…。
 

 
湯上り後のお供はこんなラインナップです。瓶ジュースとか飲む機会も少なかったりするので、そそられちゃいます。あ、写真右下に写っているアイスの早食い対決とかしないように。

 
マンガもそれなりにそろっていて、読みだしたら帰れなくなってしまいそうです。
 

店主インタビュー

 
というわけで、店主インタビューです。店主は長田正行(おさだ まさゆき)さんです。

笑顔が素敵な長田さん


――名古屋温泉の歴史を教えてください。
 
長田正行さん(以下、長田) 開業は昭和27年です。おじいさん(長田さんの奥さんのお父さん)が開業しました。おじいさんが田舎の田畑を売り払って始めたようです。
 
――名古屋温泉という「名古屋」を冠したネーミングはどのような経緯でつけられたのかご存じですか。
 
長田 おじいさんから聞いたことはないですが、おじいさんは大きくみせるのが好きだったので、たぶんそういうところじゃないでしょうかね(笑)。
 
――長田さんはどのような流れで店主になられたのですか。
 
長田 私はむこ養子としてこの家に入ったのですが、その時はサラリーマンをしていました。しばらくしておばあさん(長田さんの奥さんのお母さん)が亡くなりまして、おじいさんと女房では銭湯を続けていけないということで、私が33か34歳の時におじいさんから継いでほしいとお願いされました。「まだ死んでないけど、遺言として聞いてくれないか」と頼まれました(笑)。
 
――名古屋温泉は水道水を使用していますか。
 
長田 昔は井戸水を使用していた時代もあったようなのですが、砂を洗うのにお金がかかってしまうので、経済的な理由から水道水を使用しています。井戸水だと夏は冷たく、冬は温かい水なので理想的なんですがね。
 
――燃料は何を使用していますか。
 
長田 重油を使用しています。組合でまとめて購入する仕組みです。
 
――名古屋温泉の象徴ともいえる入口のネオンサインは、いつ、どのような経緯で作られたものなのでしょうか。
 
長田 はっきりとは分かりませんが、昭和40年ぐらいに作られたものだと思います。目立つネオンサインですけど、おじいさんにはああいうものを作るセンスがあったんでしょうね。
 
最近は写真を撮っていかれる方が多くて、その姿を見て「あ、これは残さないといけないものだな」と感じました。

実は光ってなくても見ごたえがある昼間のネオンサイン

 
――そこまで古さを感じない建物の内装であり浴室ですが、直近の改装はいつでしょうか。
 
長田 平成7年に改装しました。ちょうど阪神淡路大震災の後でしたので、補強も併せて行いました。サウナの外壁(脱衣所側)以外は全て張り替えた大規模なものでしたね。番台形式からフロント形式へ変えたのもこのタイミングです。
 
――浴室にテレビがある銭湯も珍しいですが、導入したきっかけは何ですか。
 
長田 浴室にテレビを設置したのも平成7年の改装時ですが、私の子供に「改装するけどどうしたらいいと思う?」と聞いたら、「テレビをつけた方がいい!」と無邪気に言われたので、そのまま採用してみました(笑)。
 
――テレビのチャンネルはどのように決めていますか。
 
長田 私が決めるのですが、お客さんから要望を言われて変えることもありますね。サウナ内は音声が聞こえるのですが、浴室内は音が聞こえづらいので、画面の見た目だけで内容が伝わるものがいいだろうということで、スポ―ツにすることが多いですね。土日は競馬を放送していますが、皆さんお好きですね(笑)。
 

気さくにお話する長田さん


――せっけん類が有料の銭湯も多い中で、ボディソープやシャンプーだけでなく、コンディショナーまで置いてある心遣いはいいですね。
 
長田 過去には組合で統一して置いたらどうかと提案したこともあったのですが、その当時はまだ時期が早いということで却下になりました。今は各銭湯の判断によってサービスで置いています。ウチは特に女性用にいいものを置いているんですよ。
 
――男湯のサウナはストーン対流式の電気サウナストーブを設置していますが、こだわりはありますか。
 
長田 電気の方が高いんですが、質がいいということで設置しています。サウナのクオリティには自信がありますね。ウチのサウナが最高だと言ってくれるお客さんもたくさんいます。
 
――名古屋温泉の一番のこだわりを教えてください。
 
長田 清潔さを保っていることです。きれいにするのが好きなんです。隅から隅まで時間をかけて、たわしで磨いて掃除しています。足腰がキツイですが、それが仕事だと思ってやっています。
 

 
――名古屋温泉に何度も訪れたくなるような工夫はありますか。
 
長田 銭湯をきれいに保っていれば、それに良さを感じて自然とお客さんが来てくれると思っています。あとはもうお客様との縁というだけですね。
 
――銭湯を経営していてよかったことを教えてください。
 
長田 お客さんから「ありがとう」と言われると、やっぱり嬉しいですね。
 
――逆に経営していて大変なことを教えてください。
 
長田 とにかく体がエライということに尽きます。銭湯を経営していると1日中動き回っていますので。食事の時ぐらいしか休めないです。休みの日も休みの日にしかできない手入れもあって、実質休めているのは、月に1度の連休のうちの1日ぐらいです。
 
――名古屋温泉の将来的な見通しを教えてください。
 
長田 私と女房が元気なうちは続けていきたいと思っています。女房の妹も定期的に手伝ってくれていますが、私か女房のどちらかが携われなくなったら、継続していくのは難しいですね。今のところは子供も継ぐ気はなさそうですので。


 
いかがでしたでしょうか。
 
銭湯をきれいに保っていれば、それに良さを感じて自然とお客さんが来てくれる」という部分、私はすごく感動しました。とにかく質の良い仕事をする、すると分かる人にはしっかり届く。これは銭湯のみならず、全ての仕事に通ずる良きマインドではないでしょうか。
 
また、名古屋温泉も後継者という意味では見通しが立っていないという状況もわかりました。とても元気な長田さんと奥さんでしたので、しばらくは素晴らしい名古屋温泉を継続していただけるとは思いますが、いつの日かのなくなってしまう日のことを想像すると、それはやはりさみしいものがあります。
 
後継者不足をはじめとして、様々な問題を抱える銭湯業界ですが、銭湯に魅力を感じる人たちの手によって、少しでも長く銭湯文化が守られていくことを、せんとうくん42歳は強く願っております!

それではまた来月お会いしましょう。