名古屋市博物館、夏はゲーセンに?博物館ならではのゲーセンの伝え方
名古屋市広報課の丸澤です。
名古屋市博物館、第2弾です。これはシリーズ化する予感が、、、
前回の記事はこちらを。
「博物館の学芸員の話、この間見ましたよ」と職場でも反響がある中で、博物館で何やら一風変わった展覧会が開催されていると聞き、担当学芸員である博物館学芸課の武藤真係長に取材をしてきました。
「ゲーセンミュージアム」
最初、ネーミングを聞いてびっくりしました。
「えっ、博物館がゲーセン?????」
最初のサムネイル、博物館で撮影した写真なんです!
博物館の意義などを前回の記事で学芸課長に伺いましたが、「自分のアイデンティティを知る。」「真面目に学ぶだけでなく、面白くも学んでいただければ。」と言われていました。
今回、取材を通して「ゲーセンミュージアム」という異色の展覧会が実は「名古屋市博物館だからこそ」「真面目に面白く学べる」要素がたくさん詰まっていると感じました。
取材に訪れた日(平日)も、客層は、1人だったり、友人・カップルと2人だったり、家族や3世代だったりと、本当にさまざま。あらゆる世代で楽しめそうな展覧会なので、令和3年の夏はぜひ名古屋市博物館へ。
【なぜ博物館がゲーセンに?】
開館前のスタッフミーティングを主宰する武藤係長・左端
(-は丸澤が発言)
―博物館の展覧会で、ゲームやゲームセンターを取り扱ったことは今までありますか?
武藤:今回のような規模での開催は初めてです。
実は令和元年度(2019年)に、常設展の企画として「ゲームセンターの思い出」というテーマで展示を行いました。今回の「ゲーセンミュージアム」の縮小版・試行版のイメージです。その時にお客様にご協力いただいたアンケートで得られた、ゲームセンターにまつわる思い出や熱中した遊び(ゲーム)などを、今回の展覧会の企画に反映させていたりします。
会場入り口の機関車の乗り物、これは大人の方には懐かしいデパートの屋上遊園地をイメージしています。展示室入っていただいて左側の壁面には、地元で発行されていた「名古屋タイムズ」に掲載された、ゲームや遊技場に関する記事を紹介しています。一昔前の新聞ならではの面白さがありますよ。
―栄などにあったデパートの屋上を思い出します。この展覧会の趣旨は、単にゲームの機能の移り変わりだけでないんですね?
武藤:ゲームのテクノロジーの進化といった科学技術の側面では、どうしても科学館で取り上げる内容というイメージがあります。当館は歴史系博物館ですので、ゲームができる遊び場という空間に注目しました。大人の方には当時の世相、遊び場にまつわる思い出とともにここで再体験していただく、若い人たちには少し前のゲームや遊び場について知っていただく。幅広い世代の方がゲームを楽しむのはもちろん、皆さんの交流の場になると嬉しいです。
―掲示されている新聞記事には「風営法」といった法律の話、パチンコやボウリングから始まりファミコンやミニ四駆など、ゲームや遊び場のブームの盛衰など当時の社会情勢が良く分かり、「これぞ博物館!」という感じがします。
【ゲームがリアルに!?】
―展示物には、夏休みの自由工作のようなものもありますが?
武藤:令和元年度(2019年)の企画展示「ゲームセンターの思い出」で、エレメカゲーム「ミニドライブ」に興味を示した小学生が、自身で工作してゲームを再現したんです。その名も「ミニミニドライブ」!モーター仕掛けで実際に動かすことができます。今回は展示しているので触ることができませんが、動いているところは当館Facebookの動画で紹介していますよ。ぜひ一度ご覧いただきたいです。
https://fb.watch/v/4cj5ww5ih/
―凄いですね、自分の知らないレトロゲームを知って、感動し、リアルな行動に結びつく、博物館の展覧会だからこその意義や良さを感じます。
武藤:リアルといえば、実は今回、展示ゲームのプレイだけではなく、ゲームの世界をリアル体験していただけるコーナーが3つあるんです!
その名も、「リアルインベーダー」と「リアルパックマン」。来館者がインベーダーやキャノンになって右に左に動く、それにボールをいくつ当てられるかというのが、「リアルインベーダー」。来館者交流ゲームです。
そして、パックマンになりきって、ゴーストにあたらないように進みながらクッキー(ボール)を回収する「リアルパックマン」。ゲーム画面が背景なので、小さいお子さんのフォトスポットにもオススメですよ。
もうひとつが、子どもの心をわしづかみにした漫画「ゲームセンターあらし」の世界を再現した「リアルゲームセンターあらし」です。主人公が大スクリーンでスペースインベーダーをプレイする姿は、当時の読者は想像しかできませんでしたが、それをなんとリアルに体験できるんです。
【どんなゲームがある?】
―この「ゲーセンミュージアム」では、ゲームをいくつプレイできますか?
武藤:昔懐かしいピンボール、バーチャファイター2などの格闘ゲーム、太鼓の達人7やビートマニアザファイナルなどの音ゲーと言われるもの、ハングオンやアフターバーナーⅡなどの体感ゲーム、そしてeスポーツを体験できるグランツーリスモSPORTなど、およそ70台がプレイできます。
スペースインベーダーやパックマンなどのテーブル筐体には、鉄板スパゲティやホットコーヒーなどのサンプルを置いて、ゲームとともに当時の喫茶店の雰囲気を楽しんでもらう工夫をしています。
―昔の喫茶店、確かにコーヒーやモーニングそっちのけで席でゲームをしていた人が居たような記憶があります。
【熱中しすぎてゲーム機が故障しそうな、、、】
―子どもの時とは力が違うし、お客様みんながプレイに熱中するしで、展示ゲーム壊れませんか!?
武藤:そうなんです。大人の方も子ども時代に戻ったかのように、ゲームに夢中です(笑)
特に第1室に展示してあるものは、昭和の時代に作られたレトロゲームがほとんどで、もともとメンテナンス前提で運用しているものもあります。
今回の展覧会の企画協力をいただき、数々のゲーム機をここに出していただいている「日本ゲーム博物館」のスタッフさんたちに、その部分をお願いしています。
修理だけではなく加熱したゲーム機の冷却のため、必要に応じゲーム機を休止させていることがあります。皆さまが来館された時にはメンテナンス中のゲームもあるかもしれませんので、予めご了承ください。
写真撮影に快く応じていただいた日本ゲーム博物館の半澤店長
【ゲームの思い出】
―先ほどのデパートの屋上や喫茶店にあるゲーム機など、至る所で懐かしさを味わえますね?
武藤:入口部分のデパートの屋上や喫茶店以外にも、駄菓子屋にあったゲーム機、大型ショッピングセンターのゲームセンターなど、様々な遊び場の雰囲気を味わっていただけるのではないでしょうか。
―自由に書き込めるノートが何冊か置いてありますね。ゲームの思い出やエピソードなど、来館者などの想い・思い出に触れることもできるんですね。
武藤:はい、むかしのゲームセンターにあった「交流ノート」のイメージです。この展覧会を企画した趣旨のひとつに、「遊び場を人々の交流の場としてとらえる」というものがあります。これらのノートは「人の交流」の媒介役をになっています。
色んな書き込みがありますが、人によってはSNSのアカウントを記載するなど、現代ならではの内容もありますね。
また、ゲームやゲームセンターにまつわるエピソードとしては、ゲーム機そのものもそうですし、家族・彼氏や彼女との思い出に関するものが、どの年代でも共通して見られます。70代のお客様の寄せ書きもあります。
当時に想いを馳せ、ゲームを元に色々な物語が見えてきます。眺めているだけで面白いノートですよ。
最初のページには「店長」からのメッセージがありますので、そちらを見てから書き込んでいただくといいのかなと思います。
【新型コロナ感染拡大の防止対策】
―ゲーム機は多くの方が触れられたりすると思いますが、新型コロナ感染防止対策はどのようにされていますか?
武藤:新型コロナ感染拡大の防止対策は、特に気を遣って徹底して行っています。
まず、入場前には検温・手指消毒をお願いしています。マスク着用も義務付けており、皆様に安心してお楽しみいただくようご協力を呼び掛けています。
また過密を避けるため、ゲームセンターや博物館の運営に適用される指針に則って展示室の定員を設けたり、分散してご来館いただくよう観覧時間帯に3つの目安を設けたりしています。
①09:30-12:00、②12:00-14:30、
③14:30-17:00。
夏休み期間となる7月17日(土)以降は、土日祝日とお盆期間の入場を日時予約制とし、「Boo-Wooチケット」(オンライン販売)で日時予約チケットを購入した方を優先とさせていただきます。
また、ゲーム機の近くには消毒用アルコールを設置し、プレイ前の手指消毒をお願いするとともに、展覧会スタッフによる機械の除菌や消毒も念入りに行っています。
【最後に】
私(丸澤)の世代では「ゲームセンター=怖い人が集まる」イメージでしたが、今回はゲームを通して「社会情勢を知る」「人と人との交流」など、博物館ならではの展示になっていると思います。
平日に取材に行きましたが、夫婦・カップル、お子さま連れの家族、学生らしき方など、様々な世代の方達がいました。ゲームセンターだと同じような世代で集まるかと思いますが、「博物館ならでは!」はこういったところも現れているのかなと思います。
今回、ゲームセンターとしての営業許可証も取っていますので、まさに「ゲーセンミュージアム」。館内に流れている音も、昔のゲーセンを思い出します。営業許可に雰囲気も、まさに「ゲーセンミュージアム」でした。
ゲームのやりすぎはいつの時代も怒られると思いますので、皆さま熱中しすぎないように(笑)
1人でも、カップルでも、家族でも、色んな方に楽しんでいただける、そんなゲーセンミュージアム、皆さまのご来館お待ちしております。